mihokomatsucover3 本人未稼働のままデビュー25周年を迎えた小松未歩。彼女の全アルバムレビューも今回の後編にて完結です。90年代から実績を残してきた所属アーティストがほぼ活動休止・解散・離脱等という状況になり、完全にビーイングのメインレーベルがGIZA studioに移り変わった00年代中盤、ZAIN、Amemura O-town Record、そしてGIZAと渡り歩いてきた彼女は地道にリリース活動を継続していきますが、2006年末のベストアルバムが最後のリリースとなり活動はそのまま凍結。今回は活動終盤にあたる2005〜2006年にリリースされたアルバムを1作ずつレビューいたします。



デビュー25周年記念・小松未歩全アルバムレビュー・後編


小松未歩 7 〜prime number〜
mihokomatsu7th
 2005年1月26日発売、7thアルバム。全13曲収録。
 2003年の「翼はなくても」、2004年の「涙キラリ飛ばせ(Album Ver.)」「砂のしろ」「I 〜誰か...」の4曲のシングルを収録。シングル曲はすべて古井弘人がアレンジを担当。明るいアップテンポから重たいバラードまで、古井の多彩なアレンジの手腕とも相俟ってこれ以前のシングルと比べて久々にシングルタイトルらしいインパクトのある楽曲が揃った。一方でアルバム曲には大賀好修岡本仁志池田大介小林哲が前作に引き続き参加し、数曲ずつを分担してアレンジを担当している。生バンド風のミディアム「恋心」、打ち込みストリングスバラードの「じゃあね それじゃあね」等、今までにあまり無かった作風を出してきたのは新鮮であったが、楽曲自体はシングルの輝度に比べると相対的に地味であり、3rd、4thほどではないが何だか大人しい曲が多いな…という印象に終始。収録シングルを入口にアルバムを聴くと結構違和感を覚えるかもしれない。
 なお、13曲目には「翼はなくても 〜Extravagant MIX〜」が収録。文字通りのリミックスだが、カップリングで実験するようなボーナストラック的な要素の濃いリミックスになっており、アルバムを終えるにあたっての締まりが少々微妙。


小松未歩 8 〜a piece of cake〜
mihokomatsu8th
 2006年4月26日発売、8thアルバム。全12曲収録。
 「I just wanna hold you tight」(小林編曲)、「あなた色」(古井編曲)、「恋になれ…」(大賀編曲)と、一作ごとにアレンジャーを変更してリリースされたシングルを収録。アルバム曲も前作、前々作同様の複数アレンジャー起用体制はそのまま。6枚目の際にリミックスを手掛けた麻井寛史がアレンジャーとして再登板となった。また、前年岩田さゆりに提供した「不機嫌になる私」をセルフカバーしている。
 シングル曲はほのぼの系の小林、ノリの良い古井、デジタルな大賀と、それぞれのアレンジャーの持ち味が出ているが楽曲のインパクトは前作シングル群の方が上。ただし、本作はカップリングで既出だった「蒼い夏」を筆頭に「deep grief」「はるのきおく」等、GIZA的アプローチ(クールで薄味の打ち込み路線)から脱することを目指したようなアレンジの曲が多く、(小松未歩的には)華やかなナンバーが多い。バラードでも陰鬱で暗い…という曲は一曲もないし、アルバム曲の突き上げがインパクトの減ったシングル曲を補っている感があり、アルバム全体のバランスは良好。個人的には「5」に並ぶ好盤だと思う。
 ラスト2曲「アナタノ手」「涙のあとに」と、何だかここで活動が完結してしまいそうな雰囲気の楽曲が並ぶのが不穏だが、本作が結果的に最後のオリジナルアルバムとなった。


小松未歩 ベスト 〜once more〜
mihokomatsubest
 2006年11月22日発売、「初のベストアルバム」と銘打たれた(「Lyrics」は違ったのか…?)シングルコレクション。全27曲収録。
 エッセイ第2弾「ヘンな物さし2。」と同時発売。1997年のデビューシングル「謎」から、最新シングル「恋になれ…」までのシングルA面全26曲をディスク2枚に渡り時系列順に配置。2枚目の最後に新曲「happy ending」を収録している。「anybody's game」「氷の上に立つように」「最短距離で」「Love gone」「涙キラリ飛ばせ」のシングルバージョンがアルバム初収録。また、発売後の公式サイトで「ふたりの願い」は制作者の意図によりモノラルで収録したとの旨の発表があった(商品には未掲載)。デジパックの中に封入された真っ白な歌詞ブックレットには文字しかないという小松史上前代未聞の異様なシンプルさである。
 2002年のリミックスアルバムのタイミングでスルーされたシングルコンプリート盤がようやくここで実現。派手なビートの効いた90年代ビーイングサウンドの体裁の初期、レーベル移籍して作風も完全に薄味GIZAサウンドに染まった中期、初期・中期を折衷してサウンドに勢いが戻ってきた後期と、彼女の作風自体にそんなに変化はないのだがアレンジの変遷の流れが良く分かる内容になっている。新曲は古井弘人がアレンジを担当で、雰囲気的にはこの時点での小松作品に寄せており、穏やかで聴きやすい。2枚組なのでボリュームはあるが、小松未歩を知りたいならばまずは本作を手に取れば間違いはない。


 翌年のデビュー10周年を前にしたベスト盤リリースをもって、特に告知もなくリリース活動は凍結。他アーティストへの楽曲提供もなくなり、公式サイトで続けてきたDiaryの更新も2009年の年明けに前触れもなく終了。後年になって公式プロフィールに齟齬があったことが関係者から明かされる程度で、小松未歩の現在は完全に消息不明状態になっている。