mrchildren20112015 2022年5月11日発売、Mr.Childrenの通算5枚目のベストアルバム。通常盤はスタジオレコーディング盤+ライブレコーディング盤のCD2枚組。加えて初回生産限定盤にはメンバーのコメンタリー動画を収録したDVDが付属。本レビューは通常盤となります。

 2022年5月10日にメジャーデビュー30周年を迎えた彼らの10年振りのベストアルバムは、2001年リリースの「1992-1995」「1996-2000」、2012年リリースの「2001-2005 <micro>」「2005-2010 <macro>」の純然たる続編で、今回も「2011-2015」「2015-2021 & NOW」として2作同時発売。長大なキャリアを持つアーティストがオールタイムな内容のベストを周年ごとにやり直して発売する、というのは近年では珍しいパターンではありませんが、キャリア30年で一度も内容の被らないベストアルバムを6作も発売できる、というのはかなり凄いことなのかも。なお、デジパックジャケットや三方背ケース、厚紙仕様の歌詞ブックレットなど、これまでの彼らのベストを踏襲した部分も多いのですが、今回発売の2作品は歌詞ブックレットには1曲ずつの詳細解説は一切なし。収録該当年代のリリースCD(配信シングルは未掲載)や映像作品のリスト、1年ごとの活動遍歴などは従来通りしっかりと記載されているのに、ライナーノーツが一切なかったのはベスト盤としては物足りない部分でした。

 DISC-1はスタジオレコーディング盤「Mr.Children 2012-2015」。同時期に発売された楽曲から全14曲を収録。ミスチル史上最も共同プロデューサーである小林武史の関与が著しかったと思われる「〔(an imitation) blood orange〕」を経て、小林の力も一部借りながらもバンドのセルフプロデュースメインの超大作「REFLECTION」をリリースした変動期の中から、フィジカル・配信シングル、代表的なアルバム曲を万遍なくセレクト(「REFLECTION」収録曲は次作の「2015-2021 & NOW」にもまたがって収録)。前作までのベストと比べるとこの時期の総楽曲の分母が少ないので、この曲も選ばれるんだ…という曲もあったりするのが正直なところなのですが、「REM」「祈り 〜涙の軌道」「足跡 〜Be Strong」「放たれる」等のシングルも適度に散らして配置、アルバム曲も「Marshmallow day」「常套句」「進化論」等、タイアップ曲を中心に選曲するなど、これまでの4作のような最強ベスト感はありませんが、この時代のダイジェスト盤としては上々な構成だと思います。
 この時期は、デビュー以来二人三脚だったプロデューサーでありアレンジャーとしても手腕を揮う小林武史が退いた、ということが最大のトピックだったわけですが、まだ関与も多かったし(収録14曲中10曲がミスチル&小林プロデュース名義)、劇的にサウンドが変わった、という訳ではありませんが、小林濃度MAXの「hypnosis」から始まり、徐々にストリングス、キーボード色が(序盤に比べれば)薄くなって本来の四人組バンド感が出てきて「未完」で終わるという流れは、ある程度この時代のミスチルのサウンド面でのドキュメント的な感覚を味わえる1枚でした。

 DISC-2はライブレコーディング盤「Mr.Children 30th giving 1」「1992-1995」「1996-2000」に収録された楽曲のライブバージョンを各映像作品から抜粋した全13曲収録。最古のもので1995年、直近のものでは2019年の録音と年代に幅があり、オリジナルの発売時期に近い楽曲ほど原曲に忠実で、発売時期から離れた楽曲になるとボーカルも含めて小慣れた演奏になっている、という印象。曲順は基本的には時系列順ですが、「innocent world」で始まり「終わりなき旅」で締めるのは意図的なものでしょう。映像がない状態で集中して聴くと、結構大味で如何にもライブ的な演奏箇所もあるな…という曲もあったりしますが、ベーシックな部分はオリジナルに忠実でまあ満足。ただ「CROSS ROAD」の牧歌的なリアレンジだけはちょっと…。既発作品からのセレクトのようなので、映像作品を全て持っているようなコアなファンには物足りないかもしれませんが、CDが出れば聴くけどライブ映像までは…という筆者には、有名曲のライブ音源を一気に聴けて嬉しいディスクではありました。

 …以上が「2011-2015」単品の感想でした。同時発売の「2015-2021 & NOW」も含めた総評につきましては次回のレビューにて。