
「KOBUKURO songs,acoustic guitar instrumentals」と冠された本作は、前作より約9年振りとなるシリーズ2作目。インタビューによると昨年のシングル制作時にカップリング用として録音した2曲のアコギセルフカバーが続編制作のきっかけになったということ。そのうちの1曲「STAY」は本作にも収録され、新規制作音源は残りの10曲。第1弾同様、メロディー部分、ハモり部分、バッキング、その他と、全ての楽曲を小渕自身の演奏によるアコギの多重録音で表現。ブックレットには各曲ごとにどのメーカーのギターをどのパートで使用したかも詳細に書かれており、ギターに造詣のあるリスナーなら興味深いところではないでしょうか。
選曲は前作がまさに誰もが知っているベスト・オブ・コブクロ的なラインナップだったのに対し、本作は活動初期の「光」「手紙」以外は2009年以降のシングル曲が中心。これ以降のシングル曲はコブクロの人気が落ち着いてきたこともあってファン以外での知名度、という点では代表曲という括りにはならないと思われますが、それでも最新アルバムからの「Star Song」以外は結成20周年時のオールタイムベストに全曲収録されているので、「流星」「Blue Bird」、アルバム曲では「To calling of love」等、2009年から現在に至るまでのベスト選曲、という体裁にはなっているかなと思います。
演奏は前述の通り全てアコギ。カチっとしたバッキングやリフの上を奏でるメロディー、ハーモニーは要所でタメを作って、本シリーズのテーマである「まるで歌を歌っているかのように、指先で奏でる」という表現を徹底。小渕のアレンジャーとしての盛り癖(?)か、アコギ重ねまくりやエフェクトをかけてシンセっぽい音を出している曲が数曲あるのはご愛嬌という感じなのですが(笑)、基本的にはシンプルで柔らかい聴き心地で、インタビューでも本人が語っていたように「日常の邪魔にならない、環境音楽的な仕上がり」。突出して凄い印象が変わった!という曲はありませんでしたが、生活に馴染むアコースティックサウンドには癒しの要素があり、楽曲に浸るも良し、聴き流すも良し、といったところ。
この「ツマビクウタゴエ」シリーズはライフワーク的なものにしたい、とも語っていた小渕。それも良い考えだと思いますが、ストリートから始まったミュージシャンとして、このアコギ以外の音を鳴らさないスタイルで、小渕・黒田の歌入りのセルフカバーアルバム辺りも作ってみれば面白いのに…とも思ってしまう筆者でした…って、前作でも同じようなことを書いていますね(苦笑)。
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