1997年5月28日にZAIN RECORDSよりシングル「謎」でデビューを果たした小松未歩。メディア露出を極端に控えながら、90年代以降のビーイング系ミュージシャンでは珍しく作詞・作曲をこなす女性シンガーソングライターとしての活動のみならず、同所属アーティストへの楽曲提供も盛んに行うなど、90年代後半から00年代中盤までのビーインググループを支えた貢献者である彼女。ZAIN→Amemura O-town Record→GIZA studioとレーベル変遷を経ながら2006年11月のベストアルバムリリースを最後に音楽活動はアナウンスなく停止し、公式サイトで更新されていたDiaryも2009年1月をもって予告なく更新されなくなるなど、長らく消息不明状態のまま迎えた2022年5月28日、デビュー25周年を記念して全アルバム・シングルの一斉ダウンロード&サブスク配信が解禁。今回の「Artist Archive」では、彼女が残したアルバム全作をレビュー。まずは「前編」として1997〜2001年までにリリースされた4作を1枚ずつご紹介いたします。
デビュー25周年記念・小松未歩全アルバムレビュー・前編
謎
1997年12月3日発売、デビューアルバム。全11曲収録。
アニメ「名探偵コナン」の三代目オープニングテーマとしてロングヒットしたデビューシングル「謎」、続くシングル「輝ける星」に加え、デビュー前後に提供した「この街で君と暮らしたい」(FIELD OF VIEW)、「青い空に出逢えた」(辻尾有紗)、「君がいない夏」(DEEN)、「錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう」(WANDS)の4曲を早速セルフカバーして収録。アレンジは当時若手アレンジャーとして実績を積んできていた古井弘人(後にGARNET CROW結成)がシングル曲中心に、アルバム曲はビーイング最末期の仕事となったベテラン・明石昌夫がそれぞれ約半分ずつを担当している。スタッフクレジットに「Directed by MIHO KOMATSU」の表記があるが、プロデューサーは別にROCKAKU(=長戸大幸の変名)が次作以降も毎回クレジットされている。
冒頭を飾る「Dream'in Love」から90年代のビーイングの特徴でもある打ち込み疑似バンドサウンドが展開。小松も後年に比べるとハキハキと声を張って彼女なりの力強さを表現しており、派手なサウンドと儚げながら芯のあるボーカルが見事にマッチして聴きやすい。セルフカバー曲まで含めるとシングルタイトルを6曲も収録しており、デビューアルバムにしていきなりZARDのアルバム「TODAY IS ANOTHER DAY」状態になってしまっているのでオリジナルアルバムとしては…というのが当時の正直な感想だが、このセルフカバー群も提供先のアレンジとは方向性が異なり地味ながら味わい深い曲が多い。中でも個人的に「青い空に出逢えた」は本家を超えている完成度だと思う。
なお、本作はZAIN RECORDSから独立したAmemura O-town Recordよりリリースされた初のアルバム作品。本レーベルは実質小松専用のレーベルとして以降1999年まで存続する。
小松未歩 2nd 〜未来〜
1998年12月19日発売、2ndアルバム。全11曲収録。
「願い事ひとつだけ」「anybody's game」「チャンス」「氷の上に立つように」とシングルヒットを連発したセールス最盛期にリリースされ、彼女のキャリア上最大の売上枚数を記録。今回の小松のクレジットは「SELF DIRECTED」表記(次作も同様)。全曲アレンジは古井弘人が手掛けており、1人のアレンジャーが1枚のアルバムを全曲担当したのは小松作品の中で本作が唯一。
直近にDEENに提供した「手ごたえのない愛」のセルフカバーも収録されているが、本作のメインはあくまで彼女のオリジナル曲。タイトル曲「未来」が1曲目にしていきなりの名バラード。その後ヒットシングル(「anybody's〜」「氷の上〜」は表記はないがアルバムバージョン)の連発が前半、セルフカバーを挟んで本作初出のオリジナル曲が中心になる後半という構成になっている。新曲は「静けさの後」「Deep Emotion」等々振り幅が広めだが、古井のアレンジに統一性があり、既存曲とうまく同居している。カップリングで既出だが「1万メートルの景色」は準シングル級の佳曲。
年末にリリースされたこともあり、1998年の小松の活動総決算的なアルバム。ヒット曲が多いので彼女のオリジナルアルバムの中では最も入門編に相応しいか。
小松未歩 3rd 〜everywhere〜
2000年2月16日発売、3rdアルバム。全11曲収録。
シングル「さよならのかけら」を最後にAmemura O-town RecordからGIZA studioに移籍。実質はビーインググループ内部での移動であり大幅な体制変更という訳ではなかったと思うが、販売元がZAINからB-Gramに変更になったり複数のレコーディングスタジオが使用されるようになるなど制作に変化が現れた。
「さよならのかけら」「最短距離で」(表記はないがアルバムバージョン)「風がそよぐ場所」の3曲のシングルを収録。提供曲のセルフカバーはない純然たるオリジナルアルバムの構成としては初。アレンジ陣に動きがあり、古井弘人はシングルを含めて約半分の6曲と減少、代わって葉山たけしが3曲、尾城九龍が1曲、尾城+北野正人が1曲を担当。ベテランの葉山、以降もGIZAのアレンジャーとして名を残した尾城、後にavexでday after tomorrowとしてデビューする北野となかなかの面子であるが、この三者が小松の作品に関わったのは本作のみ。
アルバムの流れは序盤から中盤にかけてはシングル曲、「BEAUTIFUL LIFE」「As」(葉山アレンジ)が続き前作の延長線上の打ち込みバンド路線であるが、後半以降は最終盤の「夢と現実の狭間」「雨が降る度に」(尾城・北野アレンジ)に向かっていわゆるGIZA風味の非バンド感のある打ち込みナンバーに変貌していくので、最初は勢いがあるけれど聴き終えてみたら最終的には地味、という印象を残すアルバム。この後半の路線が今後の小松のメインになるのでまさに過渡期といった感じのアルバムである。
余談であるが、GIZAに移籍したのが影響したのかは不明だが、半透明の緑色のシートの裏ジャケ、広げると裏面がアルバムジャケット画像になる歌詞カードなど、凝った装丁仕様になるのは本作から。
小松未歩 4 〜A thousand feelings〜
2001年3月7日発売、4thアルバム。全11曲収録。
produced by miho komatsuの名前が冠された初のアルバム(ROCKAKU=長戸はexective producer表記に移行)。シングル「あなたがいるから」「君の瞳には映らない」「Love gone<Album Mix>」の3曲を収録。歌詞ブックレットは通常の約半分の大きさの茶紙が採用されている。
本作中一番古い「あなたがいるから」のみ池田大介、他の10曲はこれまでギタリストとしてレコーディングに参加していた大賀好修がアレンジを担当し、これまでメインを務めた古井弘人が一切関与していない唯一のアルバムである。大賀の本業はギタリストなのだが、アレンジにおいては前作の尾城・北野路線を引き継いだバンド感を感じさせない、如何にもGIZA、という薄味の打ち込みが主軸。また本作はミディアムが中心で勢いのある曲があまりないことも手伝って(「at him!」「ともだち以上」ぐらい)、前作後半の作風を全編に渡って展開しており、初期の打ち込みバンド路線を求めて聴くと結構辛いものがあると思う。
この辺りでライト層は完全に離れたと思われ、筆者も本作は歴代の小松作品と比べるとあまり好んでは聴かなかったのだが、改めて聴くとミックスの影響か前作よりも小松のボーカルには張りがあり、それがアルバムに清涼感をもたらしている。また、これまでのアルバムとは異なりラストの「Hold me tight」で明るく締めるところは好印象。ともあれ地味な全体像は変わらず、小松ファン上級者向けのアルバムでもあるか。
謎
1997年12月3日発売、デビューアルバム。全11曲収録。
アニメ「名探偵コナン」の三代目オープニングテーマとしてロングヒットしたデビューシングル「謎」、続くシングル「輝ける星」に加え、デビュー前後に提供した「この街で君と暮らしたい」(FIELD OF VIEW)、「青い空に出逢えた」(辻尾有紗)、「君がいない夏」(DEEN)、「錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう」(WANDS)の4曲を早速セルフカバーして収録。アレンジは当時若手アレンジャーとして実績を積んできていた古井弘人(後にGARNET CROW結成)がシングル曲中心に、アルバム曲はビーイング最末期の仕事となったベテラン・明石昌夫がそれぞれ約半分ずつを担当している。スタッフクレジットに「Directed by MIHO KOMATSU」の表記があるが、プロデューサーは別にROCKAKU(=長戸大幸の変名)が次作以降も毎回クレジットされている。
冒頭を飾る「Dream'in Love」から90年代のビーイングの特徴でもある打ち込み疑似バンドサウンドが展開。小松も後年に比べるとハキハキと声を張って彼女なりの力強さを表現しており、派手なサウンドと儚げながら芯のあるボーカルが見事にマッチして聴きやすい。セルフカバー曲まで含めるとシングルタイトルを6曲も収録しており、デビューアルバムにしていきなりZARDのアルバム「TODAY IS ANOTHER DAY」状態になってしまっているのでオリジナルアルバムとしては…というのが当時の正直な感想だが、このセルフカバー群も提供先のアレンジとは方向性が異なり地味ながら味わい深い曲が多い。中でも個人的に「青い空に出逢えた」は本家を超えている完成度だと思う。
なお、本作はZAIN RECORDSから独立したAmemura O-town Recordよりリリースされた初のアルバム作品。本レーベルは実質小松専用のレーベルとして以降1999年まで存続する。
小松未歩 2nd 〜未来〜
1998年12月19日発売、2ndアルバム。全11曲収録。
「願い事ひとつだけ」「anybody's game」「チャンス」「氷の上に立つように」とシングルヒットを連発したセールス最盛期にリリースされ、彼女のキャリア上最大の売上枚数を記録。今回の小松のクレジットは「SELF DIRECTED」表記(次作も同様)。全曲アレンジは古井弘人が手掛けており、1人のアレンジャーが1枚のアルバムを全曲担当したのは小松作品の中で本作が唯一。
直近にDEENに提供した「手ごたえのない愛」のセルフカバーも収録されているが、本作のメインはあくまで彼女のオリジナル曲。タイトル曲「未来」が1曲目にしていきなりの名バラード。その後ヒットシングル(「anybody's〜」「氷の上〜」は表記はないがアルバムバージョン)の連発が前半、セルフカバーを挟んで本作初出のオリジナル曲が中心になる後半という構成になっている。新曲は「静けさの後」「Deep Emotion」等々振り幅が広めだが、古井のアレンジに統一性があり、既存曲とうまく同居している。カップリングで既出だが「1万メートルの景色」は準シングル級の佳曲。
年末にリリースされたこともあり、1998年の小松の活動総決算的なアルバム。ヒット曲が多いので彼女のオリジナルアルバムの中では最も入門編に相応しいか。
小松未歩 3rd 〜everywhere〜
2000年2月16日発売、3rdアルバム。全11曲収録。
シングル「さよならのかけら」を最後にAmemura O-town RecordからGIZA studioに移籍。実質はビーインググループ内部での移動であり大幅な体制変更という訳ではなかったと思うが、販売元がZAINからB-Gramに変更になったり複数のレコーディングスタジオが使用されるようになるなど制作に変化が現れた。
「さよならのかけら」「最短距離で」(表記はないがアルバムバージョン)「風がそよぐ場所」の3曲のシングルを収録。提供曲のセルフカバーはない純然たるオリジナルアルバムの構成としては初。アレンジ陣に動きがあり、古井弘人はシングルを含めて約半分の6曲と減少、代わって葉山たけしが3曲、尾城九龍が1曲、尾城+北野正人が1曲を担当。ベテランの葉山、以降もGIZAのアレンジャーとして名を残した尾城、後にavexでday after tomorrowとしてデビューする北野となかなかの面子であるが、この三者が小松の作品に関わったのは本作のみ。
アルバムの流れは序盤から中盤にかけてはシングル曲、「BEAUTIFUL LIFE」「As」(葉山アレンジ)が続き前作の延長線上の打ち込みバンド路線であるが、後半以降は最終盤の「夢と現実の狭間」「雨が降る度に」(尾城・北野アレンジ)に向かっていわゆるGIZA風味の非バンド感のある打ち込みナンバーに変貌していくので、最初は勢いがあるけれど聴き終えてみたら最終的には地味、という印象を残すアルバム。この後半の路線が今後の小松のメインになるのでまさに過渡期といった感じのアルバムである。
余談であるが、GIZAに移籍したのが影響したのかは不明だが、半透明の緑色のシートの裏ジャケ、広げると裏面がアルバムジャケット画像になる歌詞カードなど、凝った装丁仕様になるのは本作から。
小松未歩 4 〜A thousand feelings〜
2001年3月7日発売、4thアルバム。全11曲収録。
produced by miho komatsuの名前が冠された初のアルバム(ROCKAKU=長戸はexective producer表記に移行)。シングル「あなたがいるから」「君の瞳には映らない」「Love gone<Album Mix>」の3曲を収録。歌詞ブックレットは通常の約半分の大きさの茶紙が採用されている。
本作中一番古い「あなたがいるから」のみ池田大介、他の10曲はこれまでギタリストとしてレコーディングに参加していた大賀好修がアレンジを担当し、これまでメインを務めた古井弘人が一切関与していない唯一のアルバムである。大賀の本業はギタリストなのだが、アレンジにおいては前作の尾城・北野路線を引き継いだバンド感を感じさせない、如何にもGIZA、という薄味の打ち込みが主軸。また本作はミディアムが中心で勢いのある曲があまりないことも手伝って(「at him!」「ともだち以上」ぐらい)、前作後半の作風を全編に渡って展開しており、初期の打ち込みバンド路線を求めて聴くと結構辛いものがあると思う。
この辺りでライト層は完全に離れたと思われ、筆者も本作は歴代の小松作品と比べるとあまり好んでは聴かなかったのだが、改めて聴くとミックスの影響か前作よりも小松のボーカルには張りがあり、それがアルバムに清涼感をもたらしている。また、これまでのアルバムとは異なりラストの「Hold me tight」で明るく締めるところは好印象。ともあれ地味な全体像は変わらず、小松ファン上級者向けのアルバムでもあるか。
コメント