
「ゴリパラ見聞録」は福岡県にあるテレビ局・TNC(テレビ西日本)で2009年秋より放送されている金曜深夜帯のバラエティ。福岡のローカルタレント・ゴリけん、大阪出身ながら福岡で活動するお笑いコンビ・パラシュート部隊(斉藤優・矢野ぺぺ)の三人がレギュラーを務めており、番組の流れとしては一般視聴者から「日本全国を対象にした行きたい場所」を複数箇所募り、その中からあみだクジで行く場所を一箇所決定、目的地に向かってレギュラー三人+ディレクターやアシスタントと共に旅に向かう様子をオンエアするというもので、最終目標は「目的地で記念写真を撮る」なのことですが、道中の車内でのやり取り、宿場の飲みの席での愚痴り合い(通称・一献)などが番組の大半を占めるというフォーマットは、北海道で90年代後半からスタートし今や全国区のバラエティ「水曜どうでしょう」に相通じるものがあり、既に番組開始から10年以上が経過した今では福岡のみならず、全国のローカル局のいくつかやCSのフジテレビONEでもオンエア中。筆者も元々「水曜どうでしょう」好きということもありこのノリが気に入り、CSやTVerなどで楽しみに観ている一人です。
さてそんな中で、2018年の元旦スペシャルにて同番組のテーマソング制作企画として視聴者から歌詞のフレーズを募集し、音楽プロデューサー・今井了介によってまとめられて表題曲が誕生。既に2018年春から番組のオープニング&エンディングテーマとしてオンエアされていたようなのですが、翌年2019年の3月27日にカップリング曲(後述)にそれぞれのインストバージョンを収録した全4曲のシングル盤として、満を持して(?)リリース。ローカル番組ながら、何と当時のオリコンチャートのウィークリーTOP10にランクインと、セールス的にはある程度成功した作品となった模様。
表題曲「オン・ザ・ロード」は、番組では大体サビしか流れないので全体像が掴めなかったのですが、楽曲構成はAメロ、Bメロが各8小節程度というコンパクトなこともあり、フルサイズでも3分弱。打ち込みによる疑似バンドサウンド(ギターは生)のアップテンポな直球ナンバーといったところ。てっきりフルで聴く前は「バラエティ番組発のテーマソングにありがちな(←偏見ですが)ネタ満載の内輪ソングかな…」と思っていたのですが、これが意外や意外、「格好悪くても何度でも立ち上がって歩いて行こう!」という熱いメッセージを込めた歌詞が結構胸に刺さりました。ゴリパラのお三方も失礼ながら歌唱力的には抜きん出ているわけではないのですが、頑張って声を張り上げて歌っている姿が目に浮かぶようで、その懸命具合も含めて感動を貰える1曲だと思います。特にCメロの後半で登場する「変わらぬ人変わらぬ時よ 目指す先は同じ場所/情けなくても みっともなくても どこまでも歩いてく」というフレーズは、メロディーラインも相俟ってかなりグッと来てしまいました。個人的にはサビよりこのCメロ部分が好きかもしれません(笑)。
一方でカップリングはヒャダインこと前山田健一がプロデュースした「きったねぇ中年の見聞録」。こちらはタイトルからお察しの通り(?)、番組中での移動中のしょうもない会話や一献での愚痴り、当時の彼らの家族環境などをブチ込んだ内輪ノリソング。ラップ調で始まったり、一旦曲が止まってセリフ(?)があったりと、こっちは全く感動的ではないのですが(笑)バラエティ番組としての楽曲としてはギミック満載で納得の内容。良くも悪くも彼ららしいっちゃらしいのでカップリングにしておくには惜しい…と思っていたら、発売から約3年後の2022年からインストとはいえ番組のオープニングテーマに起用されており(「オン・ザ・ロード」は引き続きエンディングで使用)、ようやく日の目を見られて良かったな、と思います。
なお、販売形態はCD+MV入りのDVD+特製Tシャツ入りのTYPE-A、CD+DVDのTYPE-B、ゴリけん、斉藤、矢野それぞれがジャケットプロデュースを行ったCDのみのTYPE-C、D、Eの全5形態。なかなかの…と思いきや、CD、DVDの内容は同一なので欲しいアイテムを選んで一種類買えば良い、というシステムは良心的。なお筆者がどのTYPEを買ったかは、ご想像にお任せいたします。
さて、旅番組としての性格上仕方のないことではあるのですが、2020年からのコロナ禍で一時期は福岡県内しか回れなかったり、番組名物の「一献」も自粛されたり…と、ここ数年は思わぬアクシデントに見舞われた「ゴリパラ見聞録」。昨年末からは通常仕様に戻ってオンエアされているようですが、まだまだ続きそうな昨今の情勢に負けず、これからも無事にこの番組が続くことを祈るばかりです。
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