granzort 「お母さん、お元気ですか?僕たちは今、月の内側にある世界、ラビルーナにいます」…こんな語りで毎回物語が始まるアニメ番組…と聞いてピンと来る方は筆者と同じく80年代末に子供時代を過ごした方でしょうか。今回の「今週の1枚」はそのアニメ、「魔動王グランゾート」のサウンドトラック盤を、00年代にリマスター再発された復刻CDと合わせてご紹介いたします。

 「魔動王(マドーキング)グランゾート」は、平成も始まったばかりの1989年4月から、翌1990年3月までの約1年間、全41話が放映されたサンライズ制作のオリジナルロボットアニメ。サンライズのロボットアニメと言えば「ガンダム」シリーズが有名ですが、本作ではロボットの等身は低く設定され、物語も西暦2100年、かつての地殻変動により月面に空気が発生し、人間が住めるようになって都市ができた月を舞台に、地球から月旅行でやって来た主人公の少年・遥大地が、ひょんなことから耳長族(=ウサギの耳を持ち魔法が使える人間の種族)と知り合い、光の魔動王・グランゾートを召喚して月の内側の世界を侵攻・支配する邪動族との戦いを繰り広げる…といったファンタジーテイストが濃い目であり、基本的には仲間達と月面内の旅を繰り広げながらロールプレイング風に話を進めていく、低年齢層をターゲットにしたライトな作風。
 本作は総監督や原作者がほぼ同じの前番組「魔神英雄伝ワタル」で打ち立てたフォーマットでの第2作目という趣があり、「ワタル」ほどの人気は獲得できなかったものの、テレビシリーズ終了後は後日談的なOVAシリーズも1990年、1992年にそれぞれ制作されており、比較的息の長かった作品と呼べるでしょう。筆者も毎週金曜日の夕方、楽しみにテレビの前で座っていたクチです。
 …いつになく前置きが長くなりましたが(笑)番組の関連商品として定番のサウンドトラックも「音楽集」と題されて発売。後年のOVAシリーズも含めると全4作がリリースされています。今回ご紹介するのはその第1弾でオリジナル盤の発売日は1989年7月21日。後にコロムビアレコードのアニメカタログ復刻シリーズ・ANIMEX1200の通算100作目として、2005年3月23日に5,000枚限定で復刻発売されています。

 収録トラックは全部で14トラック。うち2トラックはオープニング、エンディングのTVサイズ版を収録。残りの12トラックが劇伴となるのですが、各トラックに3曲程度の短めのインストを集めて組曲的に纏めているので、実質は30曲以上のインスト楽曲が収録されているということになります。そんな本作の音楽を担当したのは田中公平。90年代に同じくサンライズのアニメ「勇者エクスカイザー」や「機動武闘伝Gガンダム」、そしてゲームの原作から様々な媒体に派生した「サクラ大戦」シリーズの音楽を務めるなど、現在においては大御所アニメ作曲家のひとりと呼んでも過言でないほどの実績を積んできた氏の、この時点ではまだキャリア初期にあたる作品なのですが、もう既に田中公平と聞いて思い浮かぶダイナミックな劇伴は確立の域。コロムビア・オーケストラ(実態が分からないんですが、コロムビアが擁する生楽器演奏集団といったところでしょうか)による迫力のあるオケがぎゅっと凝縮された1枚になっています。

 具体的に紹介していくと、三体の魔動王の召喚用テーマとしてほぼ毎回使用された躍動感のある「光、出でよ、汝グランゾート」「大復活!光の三魔動王」、ロボットアニメということで戦闘用BGMとして頻出だった楽曲を集めた「魔動力ウォーズ」といった勇壮な楽曲、敵側のシリアスな場面で流れた「邪動神の挑戦」「崩壊の日」といった不穏な雰囲気の楽曲はまさに田中公平のイメージ通り、といった感じ。ただ本作はそれだけではなく、最初に書いた母親へのくだりで毎回流れた穏やかな「冒険旅行」、コメディックな日常パートを楽しく彩った「ニンジン♡ニンジン♡」「海賊が出たぞオ〜!」などのタイトルからしてちょっと笑ってしまうようなコミカルな楽曲も多数収録されていて、シリアスパートとコミカルパートのバランスが非常に良く厳選されて収録されているなぁ、という印象。発売は放映開始から約4ヶ月後ながら、劇中に流れたほとんどの主要楽曲はこの1枚に収められていて(さすがに終盤で主役側の各ロボットがパワーアップした時に流れる楽曲は未収録ですが逆に言うと聴けないのはそれぐらい?)、これ1枚で「グランゾートの音楽」をほぼ取りこぼしなく堪能できてしまうという、出し惜しみのない、非常に優秀な構成のサントラと言えるでしょう。
 惜しむらくはオープニング「光の戦士たち」(鈴木けんじ)、エンディング「ホロレチュチュパレロ」(徳垣とも子)の各主題歌がフルサイズではない、という点。これはまあ発売当時はCDシングルも出ていたし、翌月に発売されたキャラクターソング集的な「ヒット曲集」にはフルで収録されているから…という棲み分けということで仕方のないところでしょうか。

 さて、本レビューはリマスター復刻盤も含むということで、オリジナル盤との違いもご紹介。オリジナル盤のブックレットの代わりにCDジャケットと一体の二ツ折ペラのシンプルな解説書が封入。またCD盤面やプラケースの裏面はANIMEX1200シリーズのデザインに変更と、定価1,200円+税という廉価商品ということもありシンプルな仕様になっていますが、デジタルリマスタリングの表記があり、2005年当時のレベルでの音質向上が見られます。残念だったのが他の音楽集3作(+ヒット曲集も)はこのANIMEX1200シリーズにはラインナップされなかったこと。まあ同シリーズの聖闘士星矢のサントラもラスト2作は未復刻化のままという中途半端な形になってしまっているので1作選ばれただけでも…という感じでしょうか。
 なお、「グランゾート」放映開始25周年を迎えた2014年12月にはアニメのBlu-rayボックスが登場。それに続いて、全音楽集、ヒット曲集に加えてカセットブックやコロちゃんパック(懐かしい!)のレア音源まで集めた5枚組CDボックスも2015年2月に発売されているのですが、なかなかのお値段でありよほどのコレクターでないと手が出せない…という現状を考えると、廉価で「グランゾート」の音楽を楽しみたい、というニーズには十分応えられる作品だと思います。5,000枚限定ですがまだ在庫もあるショップもありますし、作品に夢中になった当時の少年少女世代、また何かの機会で「グランゾート」を視聴し、関心を持った若い世代には本作を手に取ってほしいと思います。

 最後に関連情報を。今回ご紹介の「グランゾート」、そして「ワタル」の制作資料が展示される「ワタル&グランゾート展2」が各地で開催中。東京、名古屋は既に開催終了しましたが、6月下旬より札幌、7月中旬より大阪でそれぞれ開催される模様です。筆者も東京会場には勿論足を運びました(笑)。お目当てのジェットボードキーホルダーは発売延期でまだ売ってなかったけどな!お近くにお住まいで興味のある方は是非に。