
プロデューサー、アレンジャーとしての活動に加えギタリストとしてのライブ、レコーディング参加と多忙を極める斎藤誠。並行してシンガーソングライターとしての活動も地道に続けているわけですが、本作はオリジナルとしては前作より実に8年3ヶ月ぶりという過去最長のインターバルを経てのリリースに。合間に洋楽カバーアルバムやバンド録音メイン、弾き語りという2作のセルフカバーアルバムを挟んではいますが、それを含めてもフィジカルメディアでのリリースとしては約5年ぶりという久々の新作。元々は2021年12月15日の発売予定になっていましたが、約1ヶ月半延期となり年を跨いでしまい、元の発売日であればピッタリの時期だった収録曲「聖夜(イヴ)に微笑みを」の舞台が大分先になってしまったのはご愛嬌(?)。
さて、彼が発表する楽曲は基本的には同世代のベテランミュージシャンをふんだんに使った生音主体…だったのですが、本作は毛色が異なり、斎藤自身がギターのみならずベース、キーボード、さらにはドラムも約半数の曲で自らプログラミングするなど、これまでの彼の作品を知っていればいるほど「えっ?」と思えるようなレコーディング形態に。前作のようなフィーチャリングゲスト参加もないわけですが、これは急にセルフレコーディングに路線変更したというわけではなく、恐らくコロナ禍でレコーディングメンバーをいつも通り呼ぶのが難しかったというのが実態なのではないかと思われますが、あくまで生音を意識したサウンドの中、普段より固めのサウンド(特に打ち込みドラム)の音で歌う斎藤が意外にも新鮮でした。
インタビューによると、前作から約8年の間に制作した楽曲から、さらに半分を選んでレコーディングしていったとのこと。「やさしいルールで恋して」「なみだのうた」、そしてアルバムタイトルを冠した「BIG LOVE(純愛模様)」等々、相変わらずピュアなラブソングも出てきますが、アメリカンポップロックを嗜好する彼が垣根を作らずにやろうとしたという(大意)、「さよならフェロー」「Oh! ロックンロール」等、従来よりも音抜けが良くロック調な楽曲もバランス良く並んでいます。
そして本作の目玉は桑田佳祐が作詞提供のみならず編曲も共同名義で手掛け、コーラスにも参加している「涙のMignight Soul」。言葉選びは桑田節なのですが、斎藤を当て書きにしたと思われる主人公の描写は、さすが大学の先輩後輩の間柄、ちゃんと見てるんだな〜、と言ったところ(笑)。この曲も良かったですが、個人的にはドラマー・成田昭彦の半生を本人の演奏に乗せてコミカル(?)に描いた「Ice Cream Blues」がベストトラック。ライナーノーツにも書かれていましたが、大好きなアイスはほどほどに健康には気をつけて今後も長らく活躍してください、成田さん(笑)。
…そんな斎藤誠も今年の1月で何と64歳。加えて昨今の配信主流の音楽シーンを鑑みてか、「今の時代にアルバムをリリースすることの難しさは身にしみて承知しています。もしかしたら最後のトライになるかもしれません。」という、ベテランアーティストでありプロデューサーでもある彼が言うと結構重いひと言も発売に際しコメントされており、長年斎藤誠ファンを続けている筆者も少し寂しい気分になってしまいましたが、とにかく今、2022年という時代に最新(で最後になるかもしれないけど)の陽気で元気な彼の楽曲の詰まったアルバムを手にすることができたのはとても嬉しいこと。今後も気張らずにちょいちょいと「いい年して甘い」(←褒めてます。笑)ラブソングを歌い続けてほしいものです。
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