

前作以降、セレクションアルバム2枚、ライブアルバム4枚を挟み、実に3年8ヶ月ぶりとなるオリジナルアルバムは2枚同時発売。今回は「コンセプトオリジナルアルバム」と称され、2枚それぞれに対極のコンセプトを設けて制作されたとのこと。なお、販売形態はCDのみの通常盤、CD+レコーディングドキュメンタリー映像(「Hot Milk」)、CD+スタジオライブ映像(「Bitter Coffee」)が各々収録されたBlu-ray付属の初回限定生産盤、スペシャルBOX仕様としてCD2枚セット+ライブBlu-ray+コースター付きの期間限定注文のファンクラブ会員限定盤の3形態(各CDの内容は同一)。本レビューは通常盤となります。
まず「Hot Milk」は、“今、求められているもの”をテーマに制作された、フィジカルシングル「青春」、配信限定シングル「吠えろ!」を含む全7曲収録。「求められている〜」というのは、おそらくクライアントからの要望に応えた(7曲中5曲がタイアップ有)という点であり、いわゆる「スキマスイッチらしさ」を存分に発揮した楽曲が揃っています。リード曲である「OverDriver」や、「スイッチ!」に代表されるキャッチーなメロディー、潤沢な生演奏主体のポップなアレンジと、アップテンポの曲でもバラードの曲でも、世間一般的な彼らのイメージを忠実に展開させたといいますか。さすがにデビュー〜ブレイク期にかけての時のような楽曲自体のインパクトは減退したかな、と思いましたが、世間のニーズには十分応えられている、良い意味で一般ウケの良さそうな曲が並んでいました。個人的には既発曲ですがメロディーのみならず歌い方までフォークの様式をぶち込んだ「青春」が耳を惹きました。これもオファーを受けて作ったタイアップ曲だそうですが、この曲に関してはかなり新鮮に聴けました。
一方の「Bitter Coffee」は、“今、メンバーが作りたいもの”をテーマに制作。セレクションアルバムの新曲として既出だった「あけたら」以外は新曲の全7曲収録。「Hot Milk」が彼らのオモテ面だとすれば、こちらは現在のメンバーの音楽的なプライベート面が覗けるアルバムといったところでしょうか。と言っても、いわゆるウラ面ではなく、過去にアルバム曲として世に出ていたような変化球気味の楽曲の方向性で1枚作ってみた、という趣で、ファンクな「I-TA-ZU-RA」、ポップスの中にカントリー的要素を持ち込んだ「風がめくるページ」、シティポップ風の「フォークで恋して」等、突飛な実験的楽曲とは異なる彼らのアナザーサイドが見られる佳曲揃い。もっと凄いブッ飛んだ曲が出てくるかも?と想像していたのですが、むしろラストに配置された既発の「あけたら」が一番異色だったという感じがしました(笑)。
それぞれ全7曲、収録時間も30分前半台とコンパクトにまとめられ、もうちょっと聴いていたい…というところで終わってしまうのですが、無理に1枚にまとめず、対になるように作られた、というのは、コンセプトアルバムとしても機能しているし、聴き手にとっても集中力を切らさずにその日の気分でディスクを選べる、という点では好印象。なお筆者の好みでは「Bitter Coffee」に軍配を上げたいところ。というわけで、兄弟盤ということもあり、今回のレビューは2枚同時でお送りいたしました(笑)。
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