groovegearsoundselection 来たる2022年2月23日、SONYとavexの共同企画によるTM NETWORKのライブ音源ベストアルバム「LIVE HISTORIA 〜TM NETWORK Live Sound Collection 1984-2015〜」が、SONYは「T」盤avexは「M」盤という、35周年リクエストベストと同じスタイルで同時発売されます。昨年秋からのTM再起動記念という意味合いもある同作の販売促進も兼ねまして(?)、今年初の「今週の1枚」では、完全限定生産ボックス「TMN GROOVE GEAR」からセレクションされた2枚組CD「GROOVE GEAR 1984-1994 SOUND SELECTION」をご紹介いたします。

 本作は元々、1994年5月18、19日の東京ドームでの「TMN終了ライブ」をもってTMが10年間の活動に幕を下ろした直後の5月26日にリリースされた、ライブビデオ、フォトブック、Tシャツ、メタルキーホルダー、そしてCD3枚組を収めた完全生産限定ボックス「TMN GROOVE GEAR」のCDがオリジナル。限定生産だったので店頭からは発売後即姿を消したプレミアムアイテムでしたが、2004年のTM20周年の際のSONY全アルバム収録リマスターボックスに紙ジャケで収録。そして30周年を迎えた2014年、SONYのアルバムの単品リマスター再発の流れの中で同年9月24日にBlu-spec CD2仕様でCD2枚組としてリリースされた作品で、単なる再発作品ではなく再編集盤となっています。

 そんなわけで3枚組のオリジナルを「旧盤」、そして2枚組の再編集盤を「編集盤」として、各作品の比較を。旧盤は既発のスタジオ音源が14曲、未公開のデモテイク+αが5曲、未発表リミックスが1曲、そして未商品化のライブ音源が17曲、これらを基本的に時系列に並べて3枚にまとめた全37曲収録。これを編集盤では「GET WILD」「ELECTRIC PROPHET」以外のスタジオ音源をカットした全25曲収録。これにより実質2枚組のライブヒストリー音源集という体裁になり、この辺りが旧盤との印象の違いだと思います。個人的には1万円の限定ボックスを購入するような層に既発音源は必要か…?と思っていたので、この形に再編集されてリマスター販売されたのはコアなファンでも購買意欲をそそるというか(消しゴムだなぁ)上手い作戦を仕掛けてきたなSONY、と思いました(笑)。

 さて、編集盤のライブ音源ですが、旧盤同様に時系列順を基本に並べられており、DISC 1は80年代のTM NETWORK時代、DISC 2は90年代のTMN時代と、上手い具合に分かれているのが区切りとして良い感じ。DISC 1では松本孝弘(G)や日詰昭一郎(Ba)の生演奏を核にした荒っぽいロックサウンド、DISC 2では葛城哲哉(G)のギターのみならず野性的なコーラス、浅倉大介(Key)の参加でバンド演奏+シンセ周りも充実したサウンドと、それぞれに聴きどころがあります。選曲は代表曲中心ですが、未だにTM名義での映像作品化のない「BURNIN' STREET」「大地の物語」のライブテイクが収録されているのも嬉しいところ。旧盤では各曲のライブ録音日時、会場、ライブタイトルやサポートメンバーまで詳細な表記があったのですが、再編集盤では簡略化されて日時と会場のみの表記になってしまったのが唯一残念な点でしょうか。
 ちなみにライブアルバムとしては1992年に「TMN COLOSSEUM」というアルバムはリリースされていたものの、そちらはあくまで「架空のライブ盤」というコンセプトで、生のライブ演奏をそのまま収録しているわけではない(映像作品と同じテイクのはずなのに音が加わっていたり、演奏の尺が異なっていたりする等)のに対し、本作は恐らくライブの生演奏をそのまま収録していると思われ、宇都宮隆の歌詞間違い(苦笑)や、演奏でもミストーンを出している曲もありますが、「TMの本当の意味での生のライブ」をCDで聴けるライブアルバムは現時点では後にも先にも本作のみ。本作最大の存在意義はこの点かと。

 また、ライブ音源に混じって時折挿入されている未発表テイクはまああってもなくても…という感じではあるのですが(笑)、小室哲哉が自らピアノで弾き語り、3コーラス目の歌詞が商品版と異なる「THIS NIGHT(VER.0)」、ミックスまで完成していたもののお蔵入りだったリミックス「一途な恋(3RD MIX)」、TMNラストシングルの完成手前のラフミックスとして資料性の高い「NIGHTS OF THE KNIFE(VER.0)」の3曲は価値のあるものだと思うので、ライブ音源に比べるとおまけ的なスタジオ音源ではありますが、カットされず収録されたのは喜ばしいことだと思いました。

 …というわけで、編集盤の帯にも書いてあるように「ボックスのエッセンスを凝縮した」という言葉が相応しく、既発音源を可能な限り削ぎ落し、ほぼ完全な貴重音源集としてまとめ直し、リマスターしてコアなファン以外にも求めやすい価格で市場に流通させた、というのはセールスポイント。特にライブアルバムの類はほとんどリリースして来なかったTMなので、SONYでの活動全盛期のライブテイクが一気に聴けるのは有難いところです。近日、2015年までのライブテイク(実質は1984〜1994年、2012〜2015年ですが)を2枚組×2作品としてリリースされる「LIVE HISTORIA」が本作の後継作品というポジションになりそうですが、本作と「LIVE HISTORIA」には同一テイクが1曲もない、ということが既に判明していますので、本作はお役御免にならず、ライブトラック集としての価値が保たれるのはとても嬉しいです。
 そんなこんなで「LIVE HISTORIA」の発売が迫ってきたわけですが、さすがに今回は全曲レビューはやりません(笑)。多分通常レビューの形で改めてご紹介させていただきます、と宣言したところで、今回の「今週の1枚」はこれにて。