tobe 2021年10月27日発売、同年に活動を再開したTo Be Continuedの通算8枚目のオリジナルアルバム。先行配信シングル「君だけを見ていた 2021version.」「「手紙」」を含む全10曲収録。

 To Be Continuedは1991年にソニーからデビューした男性三人組ユニット。1994年にボーカルの岡田浩暉が役者として初出演したドラマ「もしも願いが叶うなら」の挿入歌として起用された「君だけを見ていた」がヒットして名刺代わりの代表曲に。その後、1998年に東芝EMIへ移籍後、2000年に無期限の活動休止。その後岡田はドラマ、ミュージカル、舞台俳優としてキャリアを積んでおり、To Be の活動をリアルタイムで知らない層からは役者として認識されている方も多いのではないのでしょうか。そんな彼らの活動休止から約20年経った2021年、正式に再始動宣言が行われ公式サイトも開設。なお、今回の再始動は表向きには岡田と後藤友輔(Key&G)の二人での活動。佐藤鷹(Key)は現在参加中のプロジェクトの細かな契約によって不参加と発表されているものの、アルバムブックレットのメンバー表記では三人が名を連ねています。また、本作はソニーでもEMIでもなく、初めてとなる日本コロムビアからのリリースとなっています。

 全10曲の内容は、6月に先行配信された「君だけを見ていた 2021version.」を含む過去の楽曲のセルフカバーが6曲、10月に先行配信された「「手紙」」を含むオリジナルの新曲が4曲という構成で、オリジナルアルバムながらシングルタイトルのセルフカバー曲が4曲ということもあって、ハーフベスト的な雰囲気も。そのセルフカバー(2021version.)に関しては、オリジナルのアレンジを忠実に再録音という感じ。元々彼らはシンセポップ的な音作りをしていたユニットなので、当時の90年代っぽい打ち込み音色を現代寄りにしたな、という感想でオリジナルと受ける印象はほぼ変わらず。一方で変わったなと思ったのは岡田のボーカル。オリジナルでも感情を込めた歌声を聴かせていましたが、月日を重ね、また俳優活動の賜物か、歌い上げるところは熱く、そうでないところは抑えめに、という表現力が格段にアップ。90年代中盤辺りの瑞々しい雰囲気や爽やかさはさすがに後退したな、とは思うものの、年を重ねて得た深みや包容力が大幅に増していた歌声には良い意味で驚かされました。

 新曲4曲に関しては、如何にもTo Beらしいキャッチーでポップな「ぎこちないね」「願い」、アコギを活かした軽やかな「Little Prayer for Love」、そして曲自体は1999年に完成していたもののお蔵入りになった(なので作曲・編曲には連名ながら佐藤のクレジット有)という「「手紙」」では切なくもしっとりとしたバラード…と、曲ごとに様々な顔を見せています。シングルタイトルの多いセルフカバーに比べるとインパクトの面では押されているかな、という感じではありますが、AORやシティポップに通じるところのあるサウンドや、前述の岡田の深みのあるボーカルを含めた、現在の彼らの姿を見せてくれる王道の佳曲揃いでした。

 …余談ですが筆者が本作を手に取ったのは、年末年始に実家のCDの整理をしていた際にベストアルバムを棚から見つけて「そういえば復活宣言してたけどその後どうなったかな…」と思って検索したのがきっかけ。過去にこんなレビューもしているのにチェックを怠っていたことには反省です(苦笑)。それはさておき、総括すると半ベスト的な構成ではありましたがセルフカバーも新曲も出来が良く、またオリジナル+セルフカバーといった形でいいからこれだけに終わらず、引き続き活動を行ってくれることを期待しています。いずれは佐藤も加えた三人の形で是非に。