billy 「Piano Man」「Just The Way You Are(素顔のままで)」「Honesty」「Uptown Girl」等、数々のヒット曲を持つアメリカのシンガーソングライター、ビリー・ジョエルは2021年でソロデビュー50周年。来たる12月22日には、ソニーの洋楽企画シリーズ「ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-」の第10弾として、新たなベストアルバムも発売されるとのこと。今回の「CD Review Extra」は海外アーティスト特別編・デビュー50周年&新ベストの発売を記念して、これまでに日本でリリースされた、彼の全ベストアルバム(ボックスセット除く)を1枚ずつレビューいたします。


ソロデビュー50周年記念・BILLY JOEL 全ベストアルバムレビュー

GREATEST HITS VOLUME I & VOLUME II(ビリー・ザ・ベスト)
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 1985年7月27日(LP・カセット)、1985年9月21日(CD)発売、2枚組として発売された初のベストアルバム。LP・カセットは全21曲、CDは全25曲収録。CD版は1989年11月に値下げ再発されている。
 1973年のCBSソニーからのデビュー盤「Piano Man」から、当時最新オリジナルの「An Innocent Man」までのアルバムからの時系列順ベストセレクション。彼の代名詞的な「Piano Man」、日本で人気に火が付いた「The Stranger」「New York State Of Mind(ニューヨークの想い)」「Just The Way You Are(素顔のままで)」「My Life」「Pressure」「Tell Her About It(あの娘にアタック)」「Uptown Girl」等々、怒涛のヒット曲ラッシュのまさに「ベストアルバムらしいベストアルバム」。なお「Honesty」はアメリカ本国盤では第二版から「Don't Ask Me Why」に差し替えられている。ラストの「You 're Only Human」「The Night Is Still Young」は本作用の新曲。
 歌詞ブックレット内にも注釈があるが、多くの曲を収録するために曲によってはシングルエディットバージョンや、フェードアウトが手を加えられて早くなっているなど、オリジナルバージョンと異なる曲が含まれているので、オリジナルとの聴き比べが結構楽しい。80年代中盤までのヒット曲をほぼ網羅しているので、全盛期の彼の代表曲「のみ」を聴きたいのならば本作が一番お薦め。
 なお、2003年にはCD版の曲目でリマスター盤が日本で発売されているが、前述のエディットバージョンやライブバージョンはオリジナルアルバム収録の音源に差し替えられて収録されているため、厳密には原盤のリマスターではないので要注意。原盤のリマスターは翌2004年、紙ジャケ仕様で実現しているが、完全生産限定盤だったので現在の入手はやや困難。


STAR BOX
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 1988年8月26日発売、CBSソニーの企画ベスト「STAR BOX」シリーズの一作。全18曲収録。
 同年7月の東京ドームでの海外アーティストのジョイントライブ「KIRIN DRY GIGS'88」と連動したCBSソニーの創立20周年企画ベストで、ビリー・ジョエルは全6タイトル同時発売のうちの1枚にラインナップ。プラスチック製の三方背ケースの中に、CDケースとは別に上製本の歌詞ブックレットを封入した特別仕様。
 3年前の「ビリー・ザ・ベスト」からの代表曲をメインに、「James」「She's Right On Time」など収録されなかった楽曲、さらに「ビリー・ザ・ベスト」以降のオリジナルアルバム「The Bridge」、ライブアルバム「Концерт」の収録曲までフォローした、この時点でのベスト選曲を時系列順に収録。
 生産限定盤ということだが現在は特にプレミア値は付いておらず、たまに中古ショップでも廉価で売られているのを見かける。この後はオリジナルアルバム2枚で実質リリース活動終了という観点から振り返ると中途半端な時期でのベストではあったし特に未発表曲も入っていないので、全アイテムをコンプリートする目的以外で入手する必要性は薄い。なお「STAR BOX」シリーズはこの後も続き、1999年、2001年にはソニー系の邦楽アーティストの企画ベストのタイトルとして久々に復活していた。


GREATEST HITS VOLUME III(ビリー・ザ・ベスト 3)
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 1997年8月22日発売、「ビリー・ザ・ベスト」直系の続編ベストアルバム。全17曲収録。
 1983〜1993年にリリースされた全4枚のオリジナルアルバム「An Innocent Man」「The Bridge」「Storm Front」「River Of Dreams」から選曲され時系列順に収録。「An Innocent Man」は「ビリー・ザ・ベスト」でも収録対象範囲であったが、選曲の被りは1曲もない。ラストに当時の最新シングル「To Make You Feel My Love(心のままに)」他、コンピ盤既出を含むカバー曲を2曲収録している。「All About Soul(君が教えてくれるすべてのこと)」はリミックスバージョンで収録。
 この時代は「We Didn't Start The Fire(ハートにファイア)」の全米No.1ヒットもあったが、活動全盛期に比べるとヒットも落ち着き、大御所感が漂い始めた頃で、シングル曲中心の各アルバムからの選曲自体に文句はないが全体的に華やかさには欠ける。3年後に後述のオールタイム的な2枚組ベストがリリースされており、ほとんどの曲がそちらにも収録されているので、率先して手に取る意義の無くなってしまったベストではある。が、「To Make〜」のシングルバージョンは本作にしか収録されておらず、時代に左右されない円熟したサウンドはこの時期ならではのもので、個人的には現在でも良く聴く1枚。


THE ULTIMATE COLLECTION(ビリー・ザ・ヒッツ)
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 2000年12月20日発売、20世紀最終盤にリリースされたCD2枚組ベスト。全36曲収録。
 「代表曲を30年にわたる活動から網羅した、コンプリート・ベスト!」というCD帯煽り文の名の通り、「Piano Man」以降のオリジナルアルバム、ベストアルバム、ライブアルバムの中から選曲されたオールタイムベスト。曲順は時系列ではないが、1枚目がだいたい80年代前半まで、2枚目が80年代中盤以降と、曲順を前後しながら基本的には歴史を辿って収録されている。
 「ビリー・ザ・ベスト」シリーズからの代表曲多数+もう少し踏み込んだアルバム曲までを一気に手に入れられる美味しいアイテムなのだが、「Big Shot」「Pressure」などの一部のヒット曲が抜けているので、実は完全に網羅しているとは言い難い。両ディスク共にCDの収録時間ギリギリまで使っているフルボリューム仕様なので、気軽にヒット曲を聴きたいというならば次作のベストの方が良いかも。
 なお、ジャケット写真は「ビリー・ザ・ベスト 3」の裏ジャケの再利用である。2006年には同年秋の来日公演のタイミングに合わせてか、廉価再発が行われた。


PIANO MAN : THE VERY BEST OF BILLY JOEL
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 2005年1月1日発売、CD1枚のベストとしては唯一の「全キャリアの中から厳選された最新ベスト・アルバム」(CD帯より)。全19曲収録。
 ベスト初収録のアルバム曲「Scandinavian Skies」以外は「ビリー・ザ・ヒッツ」と被っているが、1分以上短いバージョンで収録された「Piano Man」のradio editは恐らく初CD化。また、他の曲も何曲かオリジナルバージョンの尺より短いバージョンで収録されており、CD2枚組だった「〜ヒッツ」を1枚に凝縮したような構成になっている。なお、「The Stranger」は日本盤のみの収録(他国盤には「All About Soul」が収録)。
 前述の通り楽曲は完全版ではない曲がチラホラあり、ヒット曲にも抜けはあるが、代表曲を1枚でほぼ入手できるオールタイムベストとしては決定盤的な内容。メーカー側もそれを理解しているのか、対訳ブックレット無しの廉価販売や、新規スリーブを付けてBlu-spec CD2の新装仕様で大々的に再発するなど、複数回リイシューが行われている。ビリー・ジョエル入門アイテムとしては全ベスト中、本作が一番最適だと思う。


SHE'S ALWAYS A WOMAN LOVE SONGS(ビリー・ザ・バラード)
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 2011年2月9日発売、初のバラードベスト。全18曲収録。ちなみにジャケット写真は80年代中盤のもの。
 デビュー40周年を記念し、洋題の通りにミディアム〜バラードのラブソングを本人選曲で集めた、今までありそうで無かったコンセプトベスト。収録曲の半数以上がベストアルバム初収録であり、高らかに愛を歌った「Temptation」や落ち着くべき場所を歌った「You're My Home(僕の故郷)」など、隠れ佳曲が選曲されている。
 ヒット曲は「Honesty」「Just The Way You Are(素顔のままで)」ぐらいなので全体的に地味な点は否めず、メジャー曲ばかりのベストでは物足りなくなったらこちらを、といったところ。余談だが、どうせならば2007年発売の最新オリジナルシングル「All My Life」もコンセプトが一致するし、収録すればセールスポイントになったと思うのだが収録見送りになったのが残念。なお、同曲は現時点でも最新シングルのままであり、近日発売のシングルコレクションベストにも未収録となっている。