wands01 1991年12月4日、シングル「寂しさは秋の色」でデビューした、ビーイング系三人組バンド・WANDS。1992年の「もっと強く抱きしめたなら」、中山美穂とのコラボ「世界中の誰よりきっと」でブレイクを果たし、「時の扉」「愛を語るより口づけをかわそう」「世界が終るまでは…」等、ミリオンヒットを連発し、90年代中盤のビーイングブームを最前線で牽引。メンバー脱退、それに伴う新メンバー加入で二度のメンバーチェンジを経ながら90年代を走り続け、2000年に「解体」と称して解散。現在は2019年に活動再開という形で復活を果たした第5期WANDSとして活動中。今回の「Artist Archive」は、来たる2021年12月にデビュー30周年を迎える彼らの、デビューから2000年の解散までにリリースした第1〜3期までのオリジナルアルバム全5枚を1枚ずつレビューいたします。


デビュー30周年記念・WANDS 全オリジナルアルバムレビュー(第1〜3期)


WANDS
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 1992年6月17日発売、東芝EMI内レーベル・TM FACTORYよりリリースされたデビューアルバム。全6曲収録。
 先行発売の2枚のシングル曲「寂しさは秋の色」「ふりむいて抱きしめて」を収めた、上杉昇(Vo)、柴崎浩(G)、大島康祐(Key)の三人(第1期WANDS)での唯一のアルバム作品。
 提供曲は栗林誠一郎作曲「寂しさは秋の色」のみ、他の5曲は全てメンバーによる作曲、特に編曲は大島が単独で手掛けるなど、ブレイク以降の「ビーイング関係者からの提供が多いバンド」というイメージとは異なり自作曲率はオリジナルアルバムの中でも圧倒的。ラブソング中心ではあるが上杉の歌詞には既に陰りという個性が見え始めているのが聴きどころ。一方で発売当時のCD帯に掲載された「"90's Rock" 未来形」というキャッチコピーは、確かにこの当時からすれば近未来的な打ち込みギターロック、というアプローチだったのかもしれないが、90年代中盤以降にはもう既に「時代を感じさせる音」になってしまってミックスも含めて正直かなり古臭いサウンドに感じてしまう。結果的に大島在籍時のWANDSサウンド集大成的な作品、ではあるのかも。


時の扉
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 1993年4月17日発売、2ndアルバム。全10曲収録。初回限定盤は三方背ボックス仕様。
 1992年7月のシングル「もっと強く抱きしめたら」発売後に大島が脱退し、木村真也(Key)が加入。当時はメンバーチェンジの発表は特になかったがこれにより実質上の第2期WANDSがスタート。同年10月に中山美穂&WANDS名義の「世界中の誰よりきっと」がミリオンヒットしWANDSの知名度が大幅にアップ、翌年2月のシングル「時の扉」も「もっと強く〜」共々ミリオンを達成し、満を持して発売された初のフルアルバムということもあり、160万枚を突破するWANDS最大のヒットアルバムとなった。なお、「もっと強く〜」はギターリフやソロパートの異なるアルバムバージョンで、「世界中の〜」は新録のWANDS単独バージョンで収録されている。
 上杉がDEENに作詞提供した「このまま君だけを奪い去りたい」のセルフカバーも含めるとミリオンヒットが4曲も収録。アルバムの新曲は大半が新旧メンバーによるもので、編曲まで完全自作の佳曲「星のない空の下で」も収録されているが、メロディーよりも明石昌夫・葉山たけしの手によるこの時期のビーイング特有の打ち込みロックやインパクト大のオーケストラヒットを多用したサウンドの方にどうしても耳がいってしまう。全体的には良くも悪くも「時代のトレンドになっていたビーイング系サウンドに真正面から取り組んだ」作風で、大ヒットも納得の内容。1993年のビーイングブームの象徴と呼べる1枚だと思う。


Little Bit...
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 1993年10月6日発売、3rdアルバム。全7曲収録。
 前作と同時発売の「愛を語るより口づけをかわそう」、同年7月の「恋せよ乙女」の2枚のヒットシングルに加え、上杉がMANISHに作詞提供した「声にならないほどに愛しい」(初出はシングルのc/w)のセルフカバーもアルバムバージョンとして収められた。
 本作より「Sound Produced by WANDS」の表記が登場。といっても全体の構成はキャッチーなヒットシングル+提供曲セルフカバーが半分、新曲が半分と前作を踏襲しており、サウンド的にも打ち込みロック色は基本的には変わらず。ただ「天使になんてなれなかった」「DON'T CRY」等、上杉の心象吐露がよりリアルに伝わってくる新曲からは、次作への橋渡し的な要素も感じられる。
 なお、翌月発売のシングル「Jumpin' Jack Boy」からビーイング直営レーベルのB-Gram RECORDSに移籍しており、本作が東芝EMIでの最終作となった(後に過去の作品共々B-Gramから再発されている)。


PIECE OF MY SOUL
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 1995年4月24日発売、B-Gram RECORDSに移籍して初のオリジナルとなる4thアルバム。全10曲収録。
 多作だった1993年から一転、1994年はシングル「世界が終るまでは…」のみのリリース、年が明けて1995年2月のシングル「Secret Night 〜It's My Treat〜」に続く約1年半ぶりのオリジナルアルバム。色の異なる帯が存在するとのこと(筆者所有のものは赤色の帯)。
 アルバムの新曲7曲はすべてメンバーが作曲、演奏はドラム・ベースの生音での録音となりシンセの割合が大幅に減退し、一気にロックバンド的な要素が増した。1993年末のシングル「Jumpin' Jack Boy」はオケをロック色濃い目に完全にリアレンジされた新録バージョン。さらに上杉の詞も「FLOWER」「Love & Hate」のようなシリアスなテーマから「Foolish OK」のようなメッセージソングまで、一気に内省的な方向に舵を切ったシリアスな楽曲が並ぶ。特に上杉自身のこの時点での苦悩を歌った(と思われる)「MILLION MILES AWAY」は白眉。
 歌詞やサウンドは重いが、メロディーはキャッチーなものが多く、結果マニアックな領域には足をギリギリ踏み込まないという絶妙のバランスを保った1枚。この後リリースされたシングルはその領域に踏み込んでおり、それはそれで良いのだが、「ポピュラーなロックバンドとしてのWANDS」としての作品の到達点はここだったのではないか、と思う。WANDS通史で大きな存在感を示す名盤。


AWAKE
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 1999年10月27日発売、「WANDS4年ぶり衝撃のオリジナル・アルバム!」と冠された5thアルバム。全13曲収録。
 前作リリース後、2枚のシングルと1枚のベストをリリースした後に上杉・柴崎が脱退。残った木村が中心となり、和久二郎(Vo)、杉元一生(G)が加入して1997年より第3期WANDSが始動。「錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう」「Brand New Love」「明日もし君が壊れても」「「今日、ナニカノハズミデ 生きている」」の4枚のシングルを収録。
 詞曲もサウンドもヘビーで退廃的な世界に突入していた第2期末期から一転してキャッチー路線に回帰。と言ってもセールス全盛期の打ち込みロック的なサウンドとは異なり、デジタルと生音の割合のバランスが見直され、当時(90年代末)の現代的なサウンドとして新たにアプローチしているのが特徴。タイトル曲「AWAKE」を筆頭に、「雲が流れる方へ」「Please tell me Jesus」等、佳曲が自作・提供作問わずに並ぶ充実の内容。
 本作をもってリリースは停止し翌年にWANDSは解体してしまうので、第3期のオリジナルアルバムは本作のみ、濫発ベストにも収録されないシングル2曲はここでしか聴けないなど、結果的に第3期を総括する内容となった。この期はメンバーチェンジ時の情報公開の不手際、特に上杉の詞とボーカルに思い入れのある従来のファンからの猛反発(当然だと思う)など、ネガティブな面で語られることが多く、筆者も当時は新メンバーにというよりも、こういう活動を平然とさせてしまうビーイングという組織にマイナスイメージを抱いていたが、作品については「これまでのWANDSとは別物」と割り切って聴いていたし文句はなかった。売り出し方で躓いた期という思いと、再評価を望む思いを、近年の第5期の活動を見ていると改めて強く感じる。


・WANDSの全ベストアルバムレビューはこちら
上原大史(Vo)を迎え、柴崎、大島の三人での第4期WANDSを経て、大島に代わり木村が加入して2019年に表舞台での活動を再開した第5期WANDSの通算6枚目のオリジナルアルバムレビューはこちら