hirosesinging 2021年1月27日発売、広瀬香美通算14枚目のオリジナルアルバム。全17曲収録。

 近年開設した自身のオフィシャルYouTubeチャンネルにて、ピアノ弾き語りで有名曲をカバーする「歌ってみた」シリーズが話題となり知名度を再び広げた広瀬香美。このシリーズの評判が恐らくきっかけとなって制作されたのが本作。カウント的にはオリジナルアルバム扱いのようですが、内容はカバー5曲、セルフカバー5曲、新曲7曲という構成になっており、新曲が多いとはいえ実質は企画アルバムといったところ。過去にリリースした新曲3曲入りのセルフカバーベストもオリジナル扱いのようだし、このあたりの線引きは公式的にはあまり気にしていないのかもしれません。

 序盤は前述の「歌ってみた」のコンセプトを踏襲したカバー曲が5曲。H Jungle with tの「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」、King Gnuの「白日」などの有名曲を彼女なりの解釈でガンガン歌うという予想通り(?)の展開で、曲によってはギャグ(笑わせにかかってる?)スレスレみたいな飛び道具的アプローチが出てきて聴いていて吹き出してしまうような曲もありつつ、基本的には直球勝負でこれぞ世間一般的なイメージの広瀬香美!という意味では最も色濃いエッセンスを出した部分かも。
 続いてはセルフカバーの「歌われてみた」の5曲。こちらは彼女の往年のヒット曲をゲストボーカリストと一緒にコラボレーション。どの曲も複数回ベストに収録されたり既にセルフカバーされたりしているのですが、このコラボ形態が斬新。男性ボーカルとコラボの「ゲレンデがとけるほど恋したい」「promise」ギミックを仕込んだ攻めた感じに、女性ボーカルとコラボの「愛があれば大丈夫」「ロマンスの神様」「DEAR...again」は、広瀬本人は一歩引き、ゲストボーカルを主役に立てて、「広瀬香美の勝気な歌詞を他の女性ボーカリストが歌う」ということで各ボーカルの表現方法の違いから新鮮な印象をもたらしていて、なかなかの好セルフカバー。

 そして中盤からラストにかけてはオリジナルの新曲が7曲なのですが、まずタイトルが「HENTAI」とか「新しいピアノきた」とか、何コレ?というのが初見の印象(笑)。これらは例の公式チャンネルでも披露していたらしい即興的な新曲らしく、他の曲も30年の音楽活動の感謝だったり(「30年」)自分の活動に悩んだんだけど結果こうなりたいという宣言(「エンターテナーになりたい」)など、気持ちをそのままピアノにぶつけて歌いました的な楽曲が次々出てきて結構唖然。ただ、ラスト付近の小学生の書いた歌詞にメロディーをつけて歌った「心の音」など、従来を彷彿とさせるメロディーを練った曲も僅かですがあり、まとまりはありませんが彼女の遊び心と真剣な部分の両面を見せたブロック、と言っていいかも。

 以上全17曲、全楽曲の演奏はピアノ一本。かなりライブ感を重視した演奏で正直粗っぽい部分も見受けられますが、特に即興的要素の多いオリジナル曲を勢い良く演奏する分には最適なスタイルだったのかも。色々詰め込まれているのでオリジナルアルバムとしての統一性は皆無。ですが有名曲カバー、コラボによるセルフカバー、小品を含みながらも数多いオリジナル曲…と、彼女の個性が満載でもあり、さしずめ広瀬香美万博といったアルバム。どんな入口であれ彼女に興味を持ったリスナーが聴けば引っ掛かる曲は数曲あるんじゃないかな?といった感じの面白い企画作でした。個人的には女性ボーカルとコラボしたセルフカバー部分が特に良かったです。