deentwilightincity 2021年7月7日発売、DEEN通算19枚目となるオリジナルアルバム。CDのみの通常盤、ライブ映像とMVを収録のBlu-ray付属の紙ジャケ仕様の初回生産限定盤、メンバーのトーク映像収録のDVDが付属のファンクラブ限定盤の3種での発売。CD本編(全10曲)の内容は同一ですが、ボーナストラックとして1曲収録されているライブ音源は各形態ごとに異なります。本レビューは初回生産限定盤となります。

 半年前にリリースされたカバーアルバムに続き、「DEEN流のシティポップ」をコンセプトに全曲オリジナルの新曲で構成された本作。元々は昨年既にこちらを先に制作していたという経緯があり、オリジナルアルバムとしては前作以来2年4ヶ月振りという長いスパンになりました。なお、制作スタッフや参加ミュージシャン、永井博のジャケットイラスト、歌詞カードやCD盤面も含めて「POP IN CITY」「TWILIGHT IN CITY」の2枚で兄弟盤といった趣を感じます。

 収録楽曲は先行配信された「about long night」「off limit」を筆頭に、如何にもシティポップらしいお洒落で洗練された印象の楽曲を幅広く収録。かつて彼らが取り組んできたDEEN's AOR(2002〜2004年)にも通じる都会的な要素を取り入れつつも、ほぼ全曲生演奏主体だったAOR期の楽曲とは異なり、楽曲によっては打ち込みメインで制作された曲あり、生演奏を中心に据えつつプログラミングのドラムリフが効果的に使われている曲もあるなど似て非なる点も感じました。また、歌詞も地名を具体的に記すことで風景が浮かびやすく、数年前までのこれでもかという若々しいノリも無くなって楽曲に寄り添っている点は好印象。ビルボード系のライブでも盛り上がりそうな「cosmic rendez-vous」「urban honey night」「twilight chinatown」辺りはメロディにインパクトがあって特に耳に残りました。

 その一方、二人体制になってから作詞:池森秀一/作曲:山根公路/編曲:外部委託が完全に固定化していて、それまではアルバムの半分ぐらいの作曲ペースだった山根にかかる負担が結構来ているのか、あまり強い印象を残さないメロディの曲もチラホラ。これまでメンバー名義だった編曲を外部に依頼しているのも作曲制作に時間がかかるせい?と心配してしまう点も。元々DEENはメンバー全員が作曲できるというのが隠れた強みだったと思いますし、池森もシングルタイトル曲を書くなどかつてはライターとしての一翼を担っていたわけで、作品全体としては良質なポップアルバムで、久々の大人の雰囲気を持ったアルバムのリリースは嬉しかったのですが、二人になってからの作業バランスが今後大丈夫かな?ということは少し気になりました。杞憂であれば良いのですが…。

 Blu-rayのメインは2019年末に行われた東北を巡るライブツアー「DEEN NEWJOURNEY TOUR "duo+" 〜Ballads in Love〜」の東京での追加公演、12月1日・室町三井ホールでの公演から抜粋して7曲を収録。この日は1st、2ndステージという一日2公演での開催であり、筆者は2ndステージに参加。2ndステージで話していた記憶のある長めのMCも中盤に収録されていますが、「君がいない夏」は2ndでは演奏されていなかったはずなので、両ステージからのベスト映像なのかも。
 このツアーはメンバー二人+バイオリニストでの三人編成に加え、当時発売直後だった「Ballads in Love」仕様のアレンジでの披露ということで、ストリングスカルテットの不在箇所はオケを流すという形式でのライブでした。筆者は以前にも書いた記憶がありますが、アコースティック編成でオケを流すのは見映え的にも何かなぁ…という気持ちがあり、正直この日もそう思っていたのですが、映像として観るとカメラワークもあって意外と気にならず案外いいじゃん、と(笑)。また、表情に気合を入れ力を込めて歌っている池森の姿がなかなか壮絶(?)でしたが、「オリジナルキーで過去の曲を歌い上げる池森」はこの時初めて観たので感動的であり、その記憶が甦ってきました。強いて不満を挙げるならば、どうせなら勿体ぶらずに本編の全演奏曲を収録すれば良かったのに、と思ったぐらいでしょうか(苦笑)。