ishihara 2020年12月28日発売、2021年1月をもってマネージメント業務を終了した石原プロモーション関連の楽曲をレーベルの枠を越えて集めたコンピレーションアルバム。CD2枚組全38曲をリマスター収録。加えて特別限定盤にはボーナストラック1曲、石原裕次郎・渡哲也の2ショット特製布製ポスターが封入。本レビューは特別限定盤となります。

 石原プロモーションは、日活のスター俳優だった石原裕次郎が1963年1月16日に設立した映像制作を中心とした芸能事務所。浅丘ルリ子、黛ジュン、渡哲也、寺尾聰、舘ひろし、神田正輝等々の人気俳優を擁し、「大都会」「西部警察」等のヒットドラマを手掛けたことでも有名。初代社長であった石原裕次郎の没後は渡哲也が社長を引き継ぐなど、紆余曲折を経ながらも21世紀に入っても運営を継続してきましたが、2020年7月17日(石原裕次郎の命日)に業務終了を発表。設立から58年後の2021年1月16日をもって解散となりました。なお、石原プロを長期に渡って支えた渡哲也は解散発表後の約一ヶ月後に逝去。ちなみに解散の約半月前にリリースされた本作の発売日は石原・渡の共通の誕生日にあたるそうです。

 Disc1は、石原プロ所属俳優の歌唱曲を20曲収録。メインはやはりというか石原裕次郎の楽曲で「ブランデーグラス」「みんな誰かを愛してる」「時間(とき)よお前は…」等、8曲を収録し、全ての曲が同社の看板作品である「西部警察」主題歌・挿入歌で占められています。筆者は90年代末の石原裕次郎の13回忌の際に、平日の午前中に連日再放送されていた時に観ていた後追い世代ということで、石原裕次郎と言えば同作の木暮課長役、そしてエンディングテーマを歌う人、というイメージが付いているのですが、大人の男の色気を醸し出す彼の歌声はいつ聴いても絶品であることを再確認。
 また、彼以外の俳優の歌唱曲では渡哲也は硬派なイメージとは反して結構軽やかな歌声、舘ひろしはちょっとキザっぽい歌声でこちらはイメージ通り。なお、石原プロ在籍中に「ルビーの指環」が大ヒットした寺尾聰ですが、本作にはオリジナルではなく2006年録音のセルフカバー版(Re-Coolバージョン)が収録。こちらも洗練されたアレンジでなかなか良いです。ラストの「夜霧よ今夜も有難う」は石原ではなく、「21世紀の石原裕次郎輩出オーディション」で選ばれた金児憲史が2018年にリリースしたカバー版を収録しており、堂に入ったベテラン風の歌声(当時40歳前後だったようですが)を聴かせており、この人歌上手いな、と感じさせる良カバーとなっていました。

 Disc2前半は関連テレビドラマ「西部警察」「大都会」「太陽にほえろ!」からのサウンドトラックを10曲収録。こちらも西部警察関連が6曲と多めですが、番組のテーマ曲はテレビサイズでの短縮バージョンが収録されているのがちょっと残念。また、「太陽にほえろ!」のメインテーマはフルサイズですが、オリジナルの面影がほとんどなく、時代性を感じさせまくるシンセバリバリの1986年バージョンなのが微妙。後半は「西部警察」「大都会」の挿入歌を8曲収録。全曲女性歌手によるフォーク歌謡的な楽曲で懐メロ臭が漂う中、井上美恵子の歌うボサノヴァ調の「風の招待状」が群を抜いて良い感じでした。

 なお、特別限定盤にはボーナストラックとして石原・渡名義で「松竹梅CM「よろこびをお伝えして50年〜幻の共演〜」篇」が収録。これは2020年の夏に宝酒造・松竹梅CM出演50周年を記念して制作されたCMスポットからの音声引用。二人で「喜びの酒〜松竹梅♪」と一節デュエット(?)する30秒の音源で、レアと言えばレアですが…というマニアックなオマケとしか言いようがない代物でした(笑)。この音源と布製ポスターで通常盤より約2倍の値段…というのはよほどコアな石原軍団ファンでなければ厳しい価格。とは言え、石原プロの新旧所属俳優によるコンピCDはなかなか珍しいし意義があると思いますので、興味のある方は通常盤をお勧めいたします。