h1 「機動戦士ガンダム」放送開始より40年目にあたる2019年より始まった「機動戦士ガンダム40周年プロジェクト」。その一環として、総監督を務めた富野由悠季の原作小説を劇場版三部作としてアニメ化する「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の制作が発表され、当初は2020年に公開される予定でしたが、コロナ禍の影響で延期に延期を重ね、ようやく2021年6月に第一作目が公開の運びとなりました。今回の「CD Review Extra」は公開に便乗(?)して、歴代ガンダム作品の各主題歌を中心に構成されたコンピレーションアルバム「GUNDAM SINGLES HISTORY」全3作+αをレビューいたします。




「GUNDAM SINGLES HISTORY」シリーズ全3作レビュー+α


GUNDAM SINGLES HISTORY
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 1987年2月5日発売、「機動戦士ガンダム」シリーズ初のシングルコンピレーション集。全19曲収録。アナログレコード2枚組、カセットテープ、CD(同年2月21日発売)の三形態での発売。
 「機動戦士ガンダム」(1979年)、同劇場版三部作(1981〜1982年)、「機動戦士Zガンダム」(1985年)、「機動戦士ガンダムZZ」(1986年)の放映または公開時にリリースされていた主題歌・挿入歌シングルのA面・B面楽曲を時系列順にほぼ網羅。「Z」の前期主題歌「Z・刻をこえて」(鮎川麻弥)のみイントロや間奏を長尺にしたロングバージョンで収録されている。
 いかにもロボットアニメの主題歌然とした「翔べ!ガンダム」(池田鴻)が耳を惹く初代、やしきたかじん井上大輔を登板させて歌謡曲路線にシフトした劇場版、時代が下り、80年代中盤らしいシンセ使用のポップな楽曲が揃う「Z」(森口博子も参加)、秋元康が作詞に参入するなどもはや何でもありの「ZZ」と、各作品の主題歌は個性豊か。ガンダムシリーズの主題歌に関しては各作品ごとに当時のヒットシーンが反映された楽曲がその後も制作され続けていくので、その原点を一気に集めたアルバムとも呼べるかも。
 なお、歌詞ブックレットには各作品についてのかなり詳細な解説が掲載されており、主題歌集のみならずガンダム読本としても価値があると思う。ガンダムシリーズといえば初代〜「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(本作品発売の約一年後に公開の劇場版)まで、と線を引くガンダムファンは結構いると思われ、そんな層が一気に各主題歌を集められるコストパフォーマンスに優れたアルバムなのだが、1987年の音源ということでCDとしてはかなり音質が貧弱。一度1998年に再発されているのだが特にリマスターはされておらず明らかに前時代の音質であった。これに代わるアイテムも発売されておらず、是非何かの機会にリマスター盤なりリニューアル盤なりを制作して欲しいところ。


GUNDAM SINGLES HISTORY II
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 1999年7月2日発売、ガンダム20周年を記念し、過去のシリーズのCD再発や記念プロジェクトが相次いだ1999年に発売された、12年振りのシリーズ第2弾。全13曲収録。
 前作以降のOVA「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」(1989年)、劇場版「機動戦士ガンダムF91」(1991年)、テレビシリーズ「機動戦士Vガンダム」(1993年)、「機動武闘伝Gガンダム」(1994年)からの主題歌・シングル化された関連楽曲を収録。なお、劇場版「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(1988年)、OVA「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」(1991年)の主題歌はレコード会社が本作発売元のキングレコードとは異なるので未収録。さらに、「V」「G」のエンディングテーマも同様の理由で未収録。この辺りの事情は歌詞ブックレットにも記載されている。
 ガンダムのイメージとは異なる牧歌的な椎名恵による楽曲の「0080」、LINDBERGのベーシスト・川添智久を起用するなど90年代中盤当時の音楽シーンの流行をダイレクトに反映した「V」、歌詞に必殺技の名前が出てくるなどロボットアニメの原点に立ち返った(?)熱い楽曲の多い「G」と多種多様。なお収録順は「0080」「V」「G」「F91」の順で時系列とは異なる。歌詞ブックレットの各作品の解説も前作ほどではないが充実している(これは次作も同様)。
 最後に「機動戦士ガンダム」に出演した戸田恵子が歌う2曲の楽曲(前作収録のバージョン違い)がボーナストラックとして収録されている。


GUNDAM SINGLES HISTORY III
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 1999年7月2日発売、「II」と同時発売のシリーズ第3弾。全13曲収録。
 90年代後半制作のガンダム作品であるテレビシリーズ「新機動戦記ガンダムW」(1995年)、「機動新世紀ガンダムX」(1996年)、OVA「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」(1996年)の各シリーズ主題歌+「Z」関連楽曲のバージョン違いをラストにボーナストラックで、というフォーマットは「II」同様。例によってテレビシリーズのエンディングテーマは他社が担当しているために未収録になっている。
 派生作品の多い「W」は続編の同ラジオドラマ「BLIND TARGET」(1996年)、同OVA「Endless Waltz」(1997年)、同OVAの再編集劇場版「Endless Waltz 特別篇」(1998年)までをエンディング以外網羅。TWO-MIXの印象が強い作品であるが、ラジオドラマの主題歌を担当したMisty Eyesの音源はなかなかレアでは。「X」のROMANTIC MODE、「08」の米倉千尋と合わせて、音楽ジャンルはそれぞれ異なるがパンチの効いた女性ボーカルが堪能できる1枚である。
 同シリーズは本作で打ち止め。以降のガンダムシリーズは各作品ごとにレコード会社が異なるケースが多く、作品の垣根を越えたコンピレーション盤は30周年時の2010年に発売された10枚組CD-BOXぐらい(現在は生産終了)。


GUNDAM ENDING SELECTION
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 1996年12月16日発売、エアーズ(旧アポロン)よりリリースされた90年代のテレビシリーズのエンディングテーマを集めたコンピレーション集。全8曲収録。2000年に同内容のものが再発されている。
 「機動戦士Vガンダム」(1993年)、「機動武闘伝Gガンダム」(1994年)、「新機動戦記ガンダムW」(1995年)、「機動新世紀ガンダムX」(1996年)の四作品からの選曲。エンディングテーマ集なのであまり熱いノリの曲はなく、爽やかに本編を締めるミディアム〜バラード曲が多め。
 リリース時放映終了直前だった「X」からは4曲収録と好待遇。一方で「V」は何故か後期エンディングの「もう一度TENDERNESS」(KIX・S)が未収録。この曲が入っていればこの1枚でこの時点までの90年代のエンディングをコンプリートできたのに惜しい内容である。とはいえ「GUNDAM SINGLES HISTORY」のII、IIIをある程度は補完することができるので意義のあるアイテム。
 なお、本作より遡ること1年前に、「V」「G」「W」の全エンディングを網羅した企画盤がアポロンからリリースされていた。ジャケットはやけにやっつけっぽいが、CDケース裏面には各作品からの本編画像を引用。現在においてはレアな一品かも。