nakayamabest 2020年12月23日発売、中山美穂の歌手デビュー35周年を記念したオールタイム・ベストアルバム。CD3枚組全40曲収録。初回限定盤には既発コンサート映像作品のリマスター版を収録したBlu-rayが付属。本エントリーは通常盤となります。

 1985年にアイドル歌手デビューし、間断なく音楽活動をこなしながら女優としてのキャリアを積み重ねていった中山美穂。CDリリース活動は1999年までで一旦休止しており、本作はその時点までにリリースされた全39枚のシングルのA面曲を完全収録。加えてDisc 3の最後には2019年に20年ぶりにリリースした新作アルバムの中から1曲ピックアップしての40曲を時系列順に網羅。なお、シングルコレクションアルバムとしては過去に「COLLECTION」シリーズが全4作リリースされており、収録曲は「II」に収録のボーナストラック1曲以外は完全に丸被り(どちらも収録順は時系列)なので、さしずめ「COLLECTION」シリーズを3枚組CDに再構成した、という仕様のベストといったところ。なお、歌詞ブックレットには「2015年リマスター音源を使用」と表記されており、恐らく同年発売の全シングルBOXからの音源流用だと思われます。

 Disc 1はデビューシングル「C」から、1988年の「Witches」までの全14曲。筆者はこの頃は小学生低学年〜中学年の時期ということもあり、後から小室哲哉繋がりで「JINGI・愛してもらいます」「50/50」は知りましたが、基本的にはこの時代のリアルタイムな思い出は皆無。最初の数枚は妙に舌ったらずっぽい歌唱法に驚いたり、完全にアイドルとして売っていた頃の彼女の記憶がないので筒美京平や角松敏生の手掛けた80年代アイドルポップな楽曲を歌っているのがやけに新鮮だったりという発見が。ダンサブルなオケが結構カッコ良い「WAKU WAKUさせて」「CATCH ME」、この時点での稀少なバラードにして代表曲的な「You're My Only Shinin' Star」など、音楽的に徐々に垢抜けていく変遷を楽しめるディスクだと思いました。

 Disc 2は1989年の「ROSECOLOR」から、1993年の「あなたになら…」までの全13曲。杏里作曲の「Virgin Eyes」、ASKA提供の「Midnight Taxi」などを経て、自身主演ドラマの主題歌を毎回ヒットさせるというセールス的な最盛期。なお筆者は「愛してるっていわない!」辺りからリアルタイムで、中山美穂=女優と歌手をイーブンに兼業している人、というイメージなのでアイドルというイメージは当時から無かったりします。順に聴いていくと派手なポップスは「Rosa」あたりで落ち着いて、ミディアム〜バラード曲が増えていく印象で、ビーイングとコラボした「世界中の誰よりきっと」、日向敏文参加の「幸せになるために」、久石譲参加の「あなたになら…」など、ヒット路線をひた走るこの時期、個人的には当時の思い出補正も手伝って、3枚のディスクの中で一番思い入れのある1枚でした。

 Disc 3は1994年の「ただ泣きたくなるの」から、1999年の「Adore」までの12曲に、2019年のアルバムより「君のこと」をプラスした全13曲。ミリオンヒットになった「ただ〜」を筆頭に「HERO」「未来へのプレゼント」と、主演ドラマの主題歌でヒットを出し続けるものの次第にセールス的には失速、楽曲も彼女の年齢に伴ってか、90年代後半に向かってしっとりとしたものが増えてきて正直地味になってきたなぁ…と当時思っていましたが、今聴いてみると「Hurt to Heart〜痛みの行方〜」「Thinking about you〜あなたの夜を包みたい〜」等、後半に多く出てくるアンニュイ路線のバラードも良いな、と再発見。10代だった頃には気づけなかった魅力に気づいたという感じでしょうか。ラストに収録された「君のこと」も20年前の路線を継承したような楽曲で、歌声にはちょっと変化はありますが比較的スムーズな流れで聴けるのでは。

 前述の通り「COLLECTION」シリーズの再構成版であり、新曲もなし、初回限定盤も含めて新規素材の使用もなしと、コアなファンには物足りない内容かも。CDの内容に関しては、筆者ぐらいのライトな、「当時よく中山美穂の曲が流れていたな〜」という思い出のあるリスナー層がドンピシャでしょうか。アルバム1枚単位でも1時間前後の収録時間で聴き疲れしないし、曲数はありますがじっくりと楽しませてもらえたアルバムでした。