mrchildrencover 1992年5月10日、桜井和寿(Vo&G)、田原健一(G)、中川敬輔(Ba)、鈴木英哉(Dr)の四人でTOY'S FACTORYからデビューを果たしたMr.Children。数多くのヒット曲を世に放ち、デビュー29周年を迎えた現在も日本のミュージックシーンの最前線を走り続ける彼ら。今回の「Artist Archive」では、そんなミスチルの活動最初期、デビューから1994年に大ブレイクを果たすまでの彼らのアルバムを1枚ずつレビューいたします。



Mr.Children 1992-1994 全アルバムレビュー


EVERYTHING
mrchildren1
 1992年5月10日発売、デビューアルバム。全7曲収録。
 ミニアルバムという形でCDデビューを飾るのは当時でも珍しいケース。約3ヶ月後にリカットされた「君がいた夏」が1stシングルとなる。収録曲はアマチュア時代のレパートリーとのこと。
 彼らの原点たる第1作だが、アルバム全体から感じるのはアートワークを含めて良い意味での「少年のような幼さと屈託のなさ」。音楽好きな四人の青年が純粋に楽器を演奏している、という清々しさが眩しい。反面、これと言って強い印象に残る曲も特にないのが弱点だが、この時期にしか鳴らせない言葉や音が詰まった作品ではある。個人的には「風 〜The wind knows how I feel〜」がイチ押し。
 なお、後で知った情報なのだが、CD盤面を光沢のあるオレンジ色でコーティングした初回プレスが存在する模様。最初から限定盤のつもりで生産したのか、セカンドプレス(光沢なし)以降は単に変更したのか不明だが、初回プレスはかなりの稀少盤であり、現在でも高値が付いているらしい。


Kind of Love
mrchildren2
 1992年12月1日発売、2ndアルバム。全11曲収録。
 初のフルアルバム。同時発売のシングル「抱きしめたい」の世界観を1枚のアルバムに拡げたようなポップで優しい作風。夢を追う主人公の姿を描いた「虹の彼方に」「星になれたら」、甘いラブバラード「車の中でかくれてキスをしよう」「いつの日にか二人で」、若者らしい葛藤を描いた「All by myself」「Distance」など、少年から青年に成長する過程での恋愛経験を綴ったような歌詞が目立つ。この先(桜井の)歌詞が内面世界にどんどん踏み込んでいくことになるので、結果的には前作までのポップで明るい最初期の集大成的なアルバムといったところ。また、ドラムの鈴木がボーカルを務める「思春期の夏 〜君との恋が今も牧場に〜」、前半と後半で曲調が全く異なる「ティーンエイジ・ドリーム(I〜II)」はポップな中で良いアクセントに。その一方で、著名なゲストミュージシャンが名を連ねていることも影響してか、四人組バンドとしての印象は希薄な感がある。
 数年後のブレイク期に、初期の名バラードという評判の「抱きしめたい」が収録されたアルバムということもあってかロングセールスを続け、発売から約3年半経った後でミリオンセールスを達成。現在では通常盤は中古ショップで廉価で容易に手に入るが、特殊ジャケット仕様の初回限定盤は未だに高値で取引されている模様。


Versus
mrchildren3
 1993年9月1日発売、3rdアルバム。全10曲収録。
 ネクストブレイク候補として音楽ファンの間で徐々に知名度を上げてきた時期にリリースされたアルバム。初回限定盤としてスケルトンタイプのCDケース入りのものが発売され、前作ほどではないが現在でもレアアイテム扱いされている。この頃になるとCDショップでも発売直後の新譜コーナーにディスプレイされるようになり、筆者もショップで新品の初回盤が並んでいるのを見た記憶がある。
 ポッキーのCMソングになった先行シングル「Replay」を筆頭に、「メインストリートに行こう」「LOVE」「my life」といった前作路線の延長線上の楽曲と、「Another Mind」「マーマレード・キッス」「さよならは夢の中へ」といった今後に繋がるダウナー路線の楽曲が交互に収録されているのが特徴なのだが、この時点では手慣れた前者の楽曲が圧倒的にインパクトを放っており、後者路線はかなり押され気味。徐々に作風が移り変わっていく過渡期ならではの作品集と呼べるかも。


Atomic Heart
mrchildren4
 1994年9月1日発売、4thアルバム。全12曲収録。
 前作発売後のシングル「CROSS ROAD」がドラマの主題歌に起用され年を跨いでのロングヒットでミリオンセラーを達成。続く「innocent world」がアクエリアスのCMソングとなりオリコン初登場1位、こちらもミリオンセラーになるなど、ブレイク真っ只中でのリリースとなり、初動週で約85万枚を売り上げる大ヒットに。この後数年続いたミスチルブームの中で売り上げをさらに伸ばし、ミスチル史上最大のセールスを上げたトリプルミリオンアルバムとなった。濃いブルーのプラケース入りの初回限定盤が販売されたが、かなりの枚数が生産されたようで現在では保存状態を気にしなければ比較的安価で手に入る。
 実質1曲目の「Dance Dance Dance」、続く「ラヴ コネクション」とエレキギターが鳴り響き、以前よりもバンド感を増した楽曲が立て続けに登場するなど耳を惹く。2曲のヒットシングルや「クラスメイト」「雨のち晴れ」「Over」等の従来の路線、「ジェラシー」「Asia(エイジア)」のような実験的サウンド、後の路線を予感させる「Round About 〜孤独の肖像〜」など、様々なタイプの曲が取り揃えられている。前作ではポップ路線に食われ気味だったその他の楽曲の完成度もここで同じ地平に辿り着いたような印象で、バンドとしての成長を感じさせるアルバム。四人組バンドという意味でのMr.Childrenの出発点は本作と言っていいかも。個人的には高校生だった発売当時リアルタイムで聴きまくったアルバムということもあり、ミスチルのアルバムの中で最も思い入れのある1枚。