utadaonelastkiss 2021年3月10日発売、宇多田ヒカルの企画盤EP。全8トラック収録。初回限定盤は紙ジャケット仕様、通常盤はアルバムサイズのプラケース仕様(収録曲は共通)。また、同日に全6トラック、ジャケットイラスト違いのLP盤が完全生産限定でリリース。本レビューはCD盤となります。

 TVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のリメイク劇場版として、2007年からスタートした「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ。当初の予定から紆余曲折を経て、2021年3月にようやく全四部作(「序」「破」「Q」「シン」)として無事(?)完結。このシリーズの主題歌は全作宇多田ヒカルが担当しており、それぞれ配信リリースや彼女名義のアルバムに分散して収録されてきましたが、「シン」の主題歌として書き下ろされた「One Last Kiss」が公開前の2020年12月に起用されるニュースと同時に、宇多田が提供してきたこれまでの全主題歌・関連楽曲すべてを1枚に収録したEPの発売もアナウンス。元々は公開予定日(2021年1月23日)の翌週、1月27日にリリースされる予定だったのですが、年明けの緊急事態宣言で公開が延期になり本作の発売も一旦未定に。結局公開は同年3月8日になり、配信リリースが3月9日、EPでのフィジカルリリースが3月10日と、こちらも紆余曲折を経た末の発売となりました。なお、発売日変更が間に合わなかったのか、CDジャケットの発売日表記は1月27日のままになっています。

 表題曲で1トラック目の「One Last Kiss」は簡単に表現するならば四つ打ちエレクトロのミディアムチューン。楽曲全体に憂いの要素を込めながらもクールなプログラミングで未来へ向かっていく背中を後押しするようなナンバー…といったところでしょうか。宇多田自身が台本を読んだ後で制作を始めたそうで、そう言われれば本編とリンクする歌詞有りという感じですが、盛大なネタバレ的な踏み込んだ歌詞ではないので、映画を観る前に聴いてもまあバレ無しかな、とは思います。
 2トラック目の「Beautiful World(Da Capo Version)」は、映画のエンドロールで「One Last〜」の最後からシームレスで繋がる楽曲(CDも同様の仕様)。こちらは「序」の主題歌のセルフカバーで、キーを変え、生音を散りばめたサウンドにアンビエント的な要素も絡めたカーテンコール的なアレンジになっており、新劇場版シリーズを最後の最後で締めくくるには相応しいバージョンといったところ。

 3トラック目以降は過去の主題歌・関連楽曲をまとめて収録。どの曲にも「-2021 Remastered-」の表記がされている通り、本作収録にあたってリマスターが施された模様。収録順は基本的に時系列なので、2〜4トラックが「Beautiful World」の三連発になってしまっていますが、各曲ともアレンジがかなり異なるので聴き比べには最適(?)。個人的には生のドラムとギターを導入してバンド感が色濃い「(PLANITb Acoustica Mix)」が一番好きかも。6トラック目の「Fly Me To The Moon(In Other Words)[2007 MIX]」はちゃんと聴いたのは初めてでしたが、他のアーティストによるエヴァ関連の「FLY ME〜」カバーとは構成が全然違っていて驚きでした。

 7、8トラックは1、2トラックのボーカル抜きのインストで締め(この2トラックはLP盤未収録)。ということもあり、宇多田のEPというよりは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズのスペシャルシングルという印象。彼女の曲を普段は特に熱心に聴くわけではない(筆者のような)エヴァファンリスナー向けに関連楽曲をまとめて1枚に収録してくれたのは有難い限り。「Beautiful〜」のような次を期待させるワクワク感や、「桜流し」の無常観などを、スクリーンで映画を鑑賞した当時の記憶を久々に呼び覚まして懐かしく聴かせてもらいました。昨年発売のTVシリーズ中心の「EVANGELION FINALLY」と合わせて、エヴァファンの方はどうぞ。