deenpopincity 2021年1月20日発売、DEEN通算3作目となるカバーアルバム。先行配信された「悲しみがとまらない」「埠頭を渡る風」を含む全10曲収録のCD+イラストレーター永井博の手掛けたジャケットをプリントしたTシャツをBOXに収めた完全生産限定盤、同内容のCD+ライブBlu-ray付きの紙ジャケ仕様の初回生産限定盤、ボーナストラックを1曲追加したCDのみの通常盤の三形態での販売。本エントリーは初回生産限定盤となります。

 2002年の邦楽カバーアルバム「和音」、2014年の洋楽カバーアルバム「君がいる夏」に続くDEENのカバーアルバム第3弾のテーマは、1970〜80年代に日本で流行した「ジャパニーズ・シティポップ」。シティポップの説明としては、音楽ジャンルというよりも概念みたいな感じで「都会的に洗練されたお洒落なサウンドで聴かせるポップス」といったところでしょうか。このシティポップの代表格とされる大瀧詠一、山下達郎、竹内まりや等、著名アーティストによる楽曲を10曲選んでDEEN流にカバーしています。なお、発売直後のYouTubeでのトークライブでも語られていましたが、全曲がDEENメンバーご両人の思い入れのある曲というわけではないらしく、選曲判断はメンバーの意見も入れつつどうやらスタッフ主導のものだった模様。

 アレンジはDEEN's AOR時代の主要アレンジャー・大平勉が3曲、二人体制後にサポートギタリストのみならず、大半の楽曲のアレンジを任されるようになった侑音が6曲、そして山根がソロでボーカルを取る「RIDE ON TIME」のみcan/gooの元ベーシストの小川清邦が担当で、DEENあるいはメンバー名義の編曲クレジットは1曲も無し、というDEEN史上ではかなりレアなケースのアルバム。
 選ばれた楽曲の発表時期は70年代中盤から80年代中盤までの約10年間。筆者の生まれる前〜小学校低学年の間の曲ということで、リアルタイムでの楽曲体験はなく、フルコーラス知ってる曲も半分ぐらいで、しかも後年になって他のアーティストがカバーをしたのを機にオリジナルを知った…という曲が大半で、正直オリジナル曲への思い入れは皆無に等しいので、原曲との聴き比べでどうこう、という聴き方ではなく、今回のアレンジが楽曲に合っているかという聴き方になってしまうのですが、そういった意味では実験に走ったり奇抜さをアピールしたりということもなく、バンド生演奏主体、管楽器のアンサンブルも含めた良質なファンク・ソウル・ラテンサウンドが全面に渡って展開して良い聴き心地。また、さすがに著名なヒット曲が集められたということもあり、歌詞・メロディーの良さを改めて感じる仕上がりになっていました。
 DEENバージョンとしての聴きどころは池森のボーカルと、山根の多重コーラス(山根はコーラスアレンジも担当)といったところ。山根はキーボードも弾いていますが、鍵盤奏者としてそんなには目立っていないのが少し残念なのですが、池森が歌えば自然とDEENの曲になるよね、という安心感(?)は感じました。

 Blu-rayは2020年9月に開催された通算7回目のリゾートライブツアー「DEEN Summer Resort Live 〜7th wave〜」の一本、神奈川・大さん橋ホールでの9月16日の模様を全曲収録。LIVE-JOYや武道館公演とは異なり、CD音源としての発売はある程度あったものの、映像の商品化には恵まれないリゾートライブでしたが、本商品では第2回目以来の映像化となります。
 編成はDEEN+現在のサポートメンバー+ストリングスカルテットの総勢9名。選曲はバラードがメインで、シングル曲に加え「いつか僕の腕の中で」「月光の渚」「Blue eyes」といった夏を感じさせるアルバム曲を配置する形で結構王道。レア曲は「自転車レース」ぐらいですが、「翼を広げて」「夢であるように」はキセキバージョンを基に、「このまま君だけを奪い去りたい」「君の心に帰りたい」「君がいない夏」「Celebrate」は前年発売のセルフカバーベストのストリングスアレンジにバンド演奏を加えた新アレンジで披露され、定番曲満載ながら結構新鮮に聴けました。
 13曲も演奏している割に総収録時間は1時間超程度なのですが、これはMCシーンを全面カットで、終盤に今回は世情を反映した(アクリル板で各演奏者が仕切られたステージセットや客席の数を再調整した等のことかと)的な話をするのが採用された程度なため。矢継ぎ早に楽曲が披露されるのでライブの「間」のようなものはあまり感じられない編集でしたが、楽曲的には濃縮されたライブでなかなか充実の内容でした。

 なお、特典映像として、配信シングルとしてリリースされ現時点でも未CD化の「そばにいるだけで」のLYRIC VIDEOが収録。こちらは固定カメラで全編モノクロの画面の前方中央にマイクスタンドを置き、そこで池森が歌い、歌詞が表示される…というまさにそれだけのビデオでした(笑)。