
ZARD 全オリジナルアルバムレビュー・前編
Good-bye My Loneliness
1991年3月27日発売、ミニアルバム形態で発売されたデビューアルバム。全6曲収録。
デビューシングル「Good-bye My Loneliness」がドラマ「結婚の理想と現実」の主題歌に起用されスマッシュヒットを記録していた中での発売。シングルと異なり、当時のセールス的には芳しくなく、現在の売上枚数はほぼ後年のブレイク期にロングヒットを飛ばした際に記録したもの。なお、ブックレット内にメンバー表記は特になく、この時点で既に匿名性を含んだ売り出し方だった模様。
一般的なZARDのイメージとはかなり異なる、暗め、ギター激しめの打ち込みロックという初期のコンセプトを感じさせる。雰囲気は統一されているが、マイナー歌謡っぽさが強調されている上に80年代末を引きずった90年代初頭ならではのサウンドが全開なので、今聴くとかなり違和感を感じる。なお、「恋女の憂鬱」「女でいたい」は川島だりあが作詞を担当。ZARD史において坂井以外が作詞した楽曲はこの2曲のみと、最初期ならではの試行錯誤を備えた作品である。
もう探さない
1991年12月25日発売、2ndアルバム。前作同様ミニアルバム形態での発売。全7曲収録。
後の爽やかポップ路線を予感させるシングル「不思議ね…」、再びマイナー歌謡路線の「もう探さない」の2曲の先行シングルを収録。本作でようやく坂井以外の4人のメンバーの名前がクレジットされ、ブックレットにも遠目ではあるがメンバーが並んだ写真が掲載された。
楽曲の雰囲気自体は前作に引き続きのダーク路線だが、煌びやかなシンセやリバーブ深めのドラムなどが耳に付き、僅かではあるが明るさを感じさせるようになったのが前作との違いか。なお、シングルのカップリングとして既出だった「素直に言えなくて」、ラストの「いつかは…」の作曲は坂井本人(彼女が生前に発表した作曲作品は全4作)が手掛けている。「素直に〜」は没後の2009年5月に45枚目のシングルとしてリメイクされた。現状ではこれがZARD名義での最後のシングルとなっている。
HOLD ME
1992年9月2日発売、3rdアルバム。フルアルバムとしては初となる。全11曲収録。
前年後半のセールス低迷から一転、8月発売のシングル「眠れない夜を抱いて」がロングセールスを記録。テレビの音楽番組への出演も開始し再注目を浴びる中でのリリースとなり、オリコン初登場2位を記録。翌年のブレイクの影響も手伝ってこちらもロングセラーとなり、発売から約1年経過後にミリオンセールスを達成している。
エレキギターの刻みにブライトなシンセが彩りを添えるポップなサウンドにキャッチーなメロディー、歌詞の世界観も親しみやすくなるなど、明らかな路線変更が窺える1作。一方で「Dangerous Tonight」など、まだ前作の余波が残るような楽曲もあり、ZARD王道サウンドへ向かう過渡期的な印象を受けるアルバム。
現在においては収録シングル曲よりも後にベストに度々収録され知名度を上げた「あの微笑みを忘れないで」が最も有名かも。個人的には「好きなように踊りたいの」が発売当時からのイチ推し。
揺れる想い
1993年7月10日発売、4thアルバム。全10曲収録。同年に新たに設立されたレコード会社・B-Gram Recordsからの発売。本作よりメンバー表記が消滅し、実質坂井泉水のソロプロジェクトであることが顕在化された。
同年1月のシングル「負けないで」がドラマ「白鳥麗子でございます!」の主題歌に、5月のシングル「揺れる想い」がポカリスエットのCMソングに起用され共にミリオンセラーの大ヒットを記録。両曲を収録した満を持してのオリジナルアルバムのリリースということで当然の如くオリコン初登場1位、さらにはダブルミリオンを達成、ZARD史上で最もセールスを上げたオリジナルアルバムとなった。なお前作直後のシングル「In My Arms Tonight」も収録、「君がいない」はシングルバージョンよりもキーをひとつ落としたB-versionでの収録となった。
前作ではやや試行錯誤のあった音楽性がここで完全に確定。坂井の伸びやかなボーカルをゆるぎなき打ち込みポップロックサウンドで包み、聴き心地は最高。インパクトの強いシングル曲と比べてしまうとやや存在感が落ちるものの、アルバム曲も佳曲が揃っており、明るいアップテンポ「Listen To Me」から切ないバラード「You and me(and…)」まで隙のない内容である。
ビーイング系アーティストがヒットを飛ばしまくったこの年の音楽シーンを象徴する1枚で、このアルバムを聴くと1993年の夏(稀に見る冷夏だった)を思い出す。
OH MY LOVE
1994年6月4日発売、5thアルバム。全10曲収録。前年にこれまでプロデューサーだった長戸大幸が(表向き)引退したのに伴い、プロデュースがB.M.F名義に変更となった。
前作以降のシングル「もう少し あと少し…」「きっと忘れない」(表記はないがアルバムバージョン)「この愛に泳ぎ疲れても」の3曲に加え、前年にZYYG,REV,ZARD&WANDS名義でリリースした「雨に濡れて」のZARD単独バージョンも収録されている。
冒頭のタイトル曲「Oh my love」がシングルタイトルに匹敵する爽やかな名曲。基本的な作風は前作を忠実になぞったような安定路線だが、「もう少し〜」「この愛に〜」といった既出シングルが王道を外したナンバーだったのも手伝い、ビーイング王道ポップスを貫いたアルバム曲の存在感が相対的に浮上している印象。「I still remember」「来年の夏も」「あなたに帰りたい」など、ベストに複数回選ばれている曲も多い中、個人的には「Top Secret」がお薦めである。
歴代のZARDのオリジナルアルバムの中で一番「世間一般的にZARDらしい」作品は本作かも。
forever you
1995年3月10日発売、6thアルバム。全10曲収録。本作より販売元がポリグラムからJ-DISC(新たに設立されたビーイング直轄の販売会社)に移行した。
「こんなにそばに居るのに」(表記はないが編曲が大幅に異なるアルバムバージョン)「あなたを感じていたい」「Just believe in love」のシングル3曲、さらに前年にDEENに作詞提供した「瞳そらさないで」のセルフカバーバージョンを収録。提供のみだった楽曲をセルフカバーするのは今回が初となる。
シャッフルビートの「今すぐ会いに来て」で新鮮な雰囲気で幕を開けるが、基本的には前作・前々作から引き続いたZARDらしいポップスをより洗練した形での楽曲が並ぶ。次作からは坂井泉水のセルフプロデュースが始まるということもあり、通史的に見るとビーイングプロデュース時代の集大成・総決算、と呼べそうな高い完成度のアルバム。中でも自身の思いをダイレクトに綴ったと思われるタイトル曲「forever you」は人気曲。
余談だが、「I'm in Love」が当時渋谷に移転オープンしたばかりのタワーレコードのイメージソングに起用され、非売品として8cmシングルが制作された、という珍しいトピックがある。
(以下、後日更新予定の「後編」に続きます)
Good-bye My Loneliness

デビューシングル「Good-bye My Loneliness」がドラマ「結婚の理想と現実」の主題歌に起用されスマッシュヒットを記録していた中での発売。シングルと異なり、当時のセールス的には芳しくなく、現在の売上枚数はほぼ後年のブレイク期にロングヒットを飛ばした際に記録したもの。なお、ブックレット内にメンバー表記は特になく、この時点で既に匿名性を含んだ売り出し方だった模様。
一般的なZARDのイメージとはかなり異なる、暗め、ギター激しめの打ち込みロックという初期のコンセプトを感じさせる。雰囲気は統一されているが、マイナー歌謡っぽさが強調されている上に80年代末を引きずった90年代初頭ならではのサウンドが全開なので、今聴くとかなり違和感を感じる。なお、「恋女の憂鬱」「女でいたい」は川島だりあが作詞を担当。ZARD史において坂井以外が作詞した楽曲はこの2曲のみと、最初期ならではの試行錯誤を備えた作品である。
もう探さない

後の爽やかポップ路線を予感させるシングル「不思議ね…」、再びマイナー歌謡路線の「もう探さない」の2曲の先行シングルを収録。本作でようやく坂井以外の4人のメンバーの名前がクレジットされ、ブックレットにも遠目ではあるがメンバーが並んだ写真が掲載された。
楽曲の雰囲気自体は前作に引き続きのダーク路線だが、煌びやかなシンセやリバーブ深めのドラムなどが耳に付き、僅かではあるが明るさを感じさせるようになったのが前作との違いか。なお、シングルのカップリングとして既出だった「素直に言えなくて」、ラストの「いつかは…」の作曲は坂井本人(彼女が生前に発表した作曲作品は全4作)が手掛けている。「素直に〜」は没後の2009年5月に45枚目のシングルとしてリメイクされた。現状ではこれがZARD名義での最後のシングルとなっている。
HOLD ME

前年後半のセールス低迷から一転、8月発売のシングル「眠れない夜を抱いて」がロングセールスを記録。テレビの音楽番組への出演も開始し再注目を浴びる中でのリリースとなり、オリコン初登場2位を記録。翌年のブレイクの影響も手伝ってこちらもロングセラーとなり、発売から約1年経過後にミリオンセールスを達成している。
エレキギターの刻みにブライトなシンセが彩りを添えるポップなサウンドにキャッチーなメロディー、歌詞の世界観も親しみやすくなるなど、明らかな路線変更が窺える1作。一方で「Dangerous Tonight」など、まだ前作の余波が残るような楽曲もあり、ZARD王道サウンドへ向かう過渡期的な印象を受けるアルバム。
現在においては収録シングル曲よりも後にベストに度々収録され知名度を上げた「あの微笑みを忘れないで」が最も有名かも。個人的には「好きなように踊りたいの」が発売当時からのイチ推し。
揺れる想い

同年1月のシングル「負けないで」がドラマ「白鳥麗子でございます!」の主題歌に、5月のシングル「揺れる想い」がポカリスエットのCMソングに起用され共にミリオンセラーの大ヒットを記録。両曲を収録した満を持してのオリジナルアルバムのリリースということで当然の如くオリコン初登場1位、さらにはダブルミリオンを達成、ZARD史上で最もセールスを上げたオリジナルアルバムとなった。なお前作直後のシングル「In My Arms Tonight」も収録、「君がいない」はシングルバージョンよりもキーをひとつ落としたB-versionでの収録となった。
前作ではやや試行錯誤のあった音楽性がここで完全に確定。坂井の伸びやかなボーカルをゆるぎなき打ち込みポップロックサウンドで包み、聴き心地は最高。インパクトの強いシングル曲と比べてしまうとやや存在感が落ちるものの、アルバム曲も佳曲が揃っており、明るいアップテンポ「Listen To Me」から切ないバラード「You and me(and…)」まで隙のない内容である。
ビーイング系アーティストがヒットを飛ばしまくったこの年の音楽シーンを象徴する1枚で、このアルバムを聴くと1993年の夏(稀に見る冷夏だった)を思い出す。
OH MY LOVE

前作以降のシングル「もう少し あと少し…」「きっと忘れない」(表記はないがアルバムバージョン)「この愛に泳ぎ疲れても」の3曲に加え、前年にZYYG,REV,ZARD&WANDS名義でリリースした「雨に濡れて」のZARD単独バージョンも収録されている。
冒頭のタイトル曲「Oh my love」がシングルタイトルに匹敵する爽やかな名曲。基本的な作風は前作を忠実になぞったような安定路線だが、「もう少し〜」「この愛に〜」といった既出シングルが王道を外したナンバーだったのも手伝い、ビーイング王道ポップスを貫いたアルバム曲の存在感が相対的に浮上している印象。「I still remember」「来年の夏も」「あなたに帰りたい」など、ベストに複数回選ばれている曲も多い中、個人的には「Top Secret」がお薦めである。
歴代のZARDのオリジナルアルバムの中で一番「世間一般的にZARDらしい」作品は本作かも。
forever you

「こんなにそばに居るのに」(表記はないが編曲が大幅に異なるアルバムバージョン)「あなたを感じていたい」「Just believe in love」のシングル3曲、さらに前年にDEENに作詞提供した「瞳そらさないで」のセルフカバーバージョンを収録。提供のみだった楽曲をセルフカバーするのは今回が初となる。
シャッフルビートの「今すぐ会いに来て」で新鮮な雰囲気で幕を開けるが、基本的には前作・前々作から引き続いたZARDらしいポップスをより洗練した形での楽曲が並ぶ。次作からは坂井泉水のセルフプロデュースが始まるということもあり、通史的に見るとビーイングプロデュース時代の集大成・総決算、と呼べそうな高い完成度のアルバム。中でも自身の思いをダイレクトに綴ったと思われるタイトル曲「forever you」は人気曲。
余談だが、「I'm in Love」が当時渋谷に移転オープンしたばかりのタワーレコードのイメージソングに起用され、非売品として8cmシングルが制作された、という珍しいトピックがある。
(以下、後日更新予定の「後編」に続きます)
コメント