magokorocheers 2020年10月14日発売、真心ブラザーズの通算17枚目のオリジナルアルバム。全10曲収録。CDのみの通常盤、加えてMVやスタジオライブ映像を収めたDVD+マグネットフックが付属の初回限定盤の二形態での発売(CDの内容は同一)。本レビューは通常盤となります。

 2017年の前々作、2018年の前作と、基本的にはYO-KING、桜井秀俊+リズム隊(岡部晴彦、伊藤大地)の固定メンバー四人で録音され、全編モノラル録音、アナログ盤も発売するなど、二作続けてのフォーマットが続いていた彼ら。特設サイトのインタビューによると、その後のセルフカバーアルバムを引っ提げて様々な形態・メンバーでのライブツアーを敢行後、「この曲をレコーディングする時はこの人達と」という思いが働き(大意)、本作では固定四人をベーシックに、過去からのレコーディング関係者でもあり前ツアーにも関わったキーボーディスト、サックスプレイヤー、曲によってはリズム隊もスポット起用するなど、様々なゲストプレイヤーが曲単位で参加。その効果で近年の割とストイック(という表現も真心的には何か違和感がありますが・笑)な演奏から一転、曲によってはプログラミングも用いたりして、様々な楽器が各楽曲に彩りを添えた1枚に仕上がっています。

 楽曲自体は「歌もの」であること、ポップ・ソングであることに重点を置いて制作されたということで、確かに冒頭の「パッチワーク」や、リード曲としてMVも作られた「炎」など、特に桜井が手掛けた楽曲はなかなかにキャッチー。加えて先述のピアノなどのいわゆる上モノ的な楽器でポップさを好演出。そんな明るい雰囲気をメッセージ性のある「不良」や、骨太なバンドサウンドが展開する「妄想力」といったYO-KING作の楽曲で引き締めており、全体的には前二作と比べるとかなり聴きやすさが増した印象です。なお余談ですが、今回YO-KINGがピアノを弾いている曲が数曲あるのですが、明らかに本職ではなさそうな拙い弾き方に味わいが(笑)。この緩さこそが真心らしい、と言えるかも(?)。

 アルバムタイトルの「Cheer」は、YO-KINGによると「機嫌がいい」という言葉の英語訳ということ。てっきり最初にタイトルを知った時はジャケットのイラストもあって何かを応援するのがテーマのアルバムなのかな?と思っていたのですが、蓋を開けてみれば上記のような楽曲がひしめくコンパクトな作品集といった感じ。肩肘張らずに機嫌良く、という意味で聴いていて自然に身体が動く楽しいアルバムでした。