evabox 1995年10月より放送を開始したTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」は来たる2020年の10月でちょうど25周年。そのアニバーサリー企画として、2020年10月7日にTVシリーズ(全26話・1995〜1996年)、劇場用映画(2作・1997年)関連の既発サウンドトラックを5枚組のCD-BOX「NEON GENESIS EVANGELION SOUNDTRACK 25th ANNIVERSARY BOX」に収めて発売されます。今回の「CD Review Extra」では、BOX発売を記念して、鷺巣詩郎が手掛けた収録5作のサントラ+劇場版公開前に発売された番外編CD1枚の計6枚を1枚ずつレビューいたします。


「NEON GENESIS EVANGELION SOUNDTRACK 25th ANNIVERSARY BOX」発売記念・収録全CDレビュー+α


NEON GENESIS EVANGELION
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 1995年12月6日発売、サウンドトラック第1弾。全23トラック収録。初回限定盤は設定資料集がメインのブックレットが封入された三方背BOXケース付き。この仕様は「〜III」までの共通フォーマットとなる。
 放送開始2ヶ月経過後の初アルバム作品。「残酷な天使のテーゼ」(高橋洋子)、「FLY ME TO THE MOON」(CLAIRE)のオープニング・エンディングテーマ曲を収録。戦闘開始場面でほぼ毎回流れる「ANGEL ATTACK」、激闘中の「THE BEAST」などの戦闘用BGM、「MISATO」「ASUKA STRIKES!」などのコミカルな日常用BGMなど、本編を通してメインで使用された楽曲が潤沢に収録されており、TVシリーズのサントラの中でも最も取っつき易い内容。「エヴァのサントラをちょっと聴きたい」というライト層には一番お薦めである。
 本サントラのラストでは高橋洋子が歌う「FLY ME〜」のアレンジ違いバージョン(Acid Bossa Version)で締めているが、「25th ANNIVERSARY BOX」(以下「CD-BOX」と表記)ではこの後に声優が歌う「残酷な〜」がボーナストラックで収録。なお、CD-BOXでは「FLY ME〜」のオリジナルバージョンが2020年バージョンに差し替わり、ボーカルも高橋洋子に変更したものが収録されるとのこと。


NEON GENESIS EVANGELION II
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 1996年2月16日発売、サウンドトラック第2弾。全25トラック収録。CD-BOXにはボーナストラックとして「I」収録の2曲のBGMのバージョン違いが収録。また「FLY ME TO THE MOON」のTVサイズバージョンが「〜2020」のショートバージョンに差し替えられるとのこと(これによりCD-BOXでのCLIAREの参加は無い事に…権利の関係?)。
 ロボットアニメとしての魅力を存分に発揮していた中盤で使用されたBGMを多く収録。この時期は各話ごとに戦闘BGMが異なる(「Both of You,Dance Like You Want to Win!」「MAGMADIVER」「She said,"Don't make others suffer for your personal hatred."」等)など贅沢な使われ方をしており、自然と戦闘シーンのBGMメインのサントラ集となった。後にアレンジバージョンが複数登場したり、英詞が付いた「THANATOS」はここで初出。
 歌モノは新曲の「予感」(高橋洋子)、Aki、Ayaがそれぞれ歌う「FLY ME〜」のアレンジ違い2曲が収録。また、第5・6話用に録音された林原めぐみの歌う同曲のTVサイズバージョンも収められるなど、「FLY ME〜」関連が多いのだが、第3弾に比べればまだ可愛いほうである(笑)。


NEON GENESIS EVANGELION III
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 1996年5月22日発売、サウンドトラック第3弾。全34トラック収録。CD-BOXにはボーナストラックとして1曲最新録音のBGMが収録される模様。
 TVシリーズは同年の3月末で終了。最終2話(第25・26話)を前衛的な内容で締めくくったという話題性もあり、本格的に到来したエヴァブームの波に乗ってオリコンアルバムチャート1位を獲得している。
 今回はTVシリーズ中盤〜終盤近くに使用されたBGMを収録。ロボットアクションよりも個々の登場人物の深層心理にスポットを当てた物語の流れなのか、前2作とは異なり重くシリアスなナンバーが続く。中盤過ぎで「FLY ME〜」「残酷な〜」のインストバージョンが出てくるのでようやく明るい雰囲気になるのだが、そこに至るまでの流れが重く、あまり何度も繰り返して聴けるようなキャッチーなサントラではないので要注意。その辺りのフォローなのか、歌モノは高橋洋子による「幸せは罪の匂い」「無限抱擁」の新曲2曲、「FLY ME TO THE MOON」(Aya)の新バージョンを収録。加えてTVシリーズのエンディングで使用された「FLY ME〜」のTVサイズバージョンの残りを全て網羅という大サービスがあるのがコアなファンには嬉しいところ。


NEON GENESIS EVANGELION ADDITION
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 1996年12月21日発売、タイトル通りの「番外編」的な企画CD。全12トラック収録。CDのみの通常盤(1,700円)、クリアケース付きCD+翌年春の劇場版の特別鑑賞券付きの初回限定盤(3,000円)の2パターンで発売。純粋なサウンドトラックではない為か、今回のCD-BOXには未収録。
 エヴァブームの最中、劇場版公開までの繋ぎの役割を含めてのファンへの贈り物的な内容で、「残酷な天使のテーゼ」「FLY ME TO THE MOON」の声優ボーカルバージョン(三石琴乃、林原めぐみ、宮村優子が参加)に、TV版終盤で使用されたクラシック曲、劇場版予告などを収録。一番異色なのはオーディオドラマ「終局の続き(仮題)」で、レギュラーキャストがほぼ勢揃いしての20分にも及ぶメタフィクション的なギャグドラマ(脚本は庵野監督自ら担当)を展開するという笑撃(?)の作品。現在は廃盤となってはいるが中古での廉価入手自体は容易なので、このドラマを聴く目的だけでもファンには一度是非聴いてほしいアイテム。


EVANGELION:DEATH
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 1997年6月11日発売、同年3月公開の映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生」のサウンドトラック。全16トラック収録。初回盤は三方背BOXケース仕様。定価1,500円と安価だったこともあってか、「III」に続いてオリコンアルバムチャート1位を獲得している。
 本映画は、TVシリーズ第24話までの総集編(DEATH編)、TVシリーズ最終盤のリテイク完結編(REBIRTH編)のカップリングとして上映される予定だったのだが、REBIRTH編の制作が間に合わず、物語の途中で上映が終わり、夏の完結編映画へと続く、という異例の形での公開となった。本作はDEATH編で使用されたBGMがメインのサントラなのだが、前半はチェロ、バイオリンの各ソロを含めたクラシック音楽で構成され、後半は鷺巣のオリジナルスコアだが既発の楽曲のリアレンジバージョンが多く、DEATH編のエンディングテーマ「Kanon D-Dur」を筆頭に全体的にクラシカルな印象で統一されている。「エヴァ」と言えばアクションBGM!というリスナーには不向き。
 エヴァのサントラシリーズでは唯一、歌モノが1曲も収録されていなかったが、今回のCD-BOXではボーナストラックとして本映画の主題歌「魂のルフラン」(高橋洋子)が収録。加えて新規録音の合唱曲(?)も収録されるようである。


THE END OF EVANGELION
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 1997年9月27日発売、同年7月公開の完結編映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」のサウンドトラック。全14トラック収録。初回盤は真紅のクリアケースが付属。CD-BOXにはボーナストラックとして2曲のBGMを追加収録とのこと。
 前作映画のREBIRTH編をTVシリーズのリテイク版第25・26話扱いとして完結させた最終作。先行して8月1日に発売されたシングル「THE END OF EVANGELION」初出の主題歌「THANATOS -IF I CAN'T BE YOURS-」(LOREN & MASH)、挿入歌「Komm, susser Tod/甘き死よ、来たれ」(ARIANNE)も収録された。
 前作に引き続きクラシック曲の引用もあるが今回は2曲と少なく、オリジナルサントラの体裁を整えた構成に。完結作、これでラストということだからなのか「真夏の終演」「偽りの、再生」等の戦闘シーンでの凄惨な楽曲、内的宇宙を描いたシーンでの「始まりへの逃避」など不穏な楽曲の類も、仰々しさが劇場用に大幅にスケールアップ。TVシリーズであったキャッチーさはほぼ無くなってしまい全体的に重苦しい雰囲気で進行する中、ラスト近くで流れる「閉塞の拡大」はタイトルとは異なり「救い」を感じさせるカタルシスな名曲でシリーズ最後を締めくくっている。


 「〜Air/まごころを、君に」をもってひとまずTVシリーズから続いた「エヴァ」は完結。サントラ系は後に交響楽CDや歌モノを含めたベストセレクション等、様々なテーマで2005年まで不定期にリリースされ続けた。現在はリメイク作品「新劇場版」シリーズとして映画・サントラ共に展開中(完結映画が2020年6月末公開予定だったのだが新型コロナウイルスの影響で公開日は2021年1月23日に延期され、更に年明けの緊急事態宣言発令により2021年3月8日公開に変更、今度は無事に公開を果たした) ※追記2020.11/1、2021.2/14、2021.4/17)。