
2002年末の解散までに公認ベストを3枚、解散後はビーイング主導の非公認ベストを3枚リリースしている彼ら。今回のベストはデビュー25周年を迎えたタイミングの2020年にボーカルの浅岡雄也がビーイングに掛け合い実現した(要約)そうで、通算4作目の公認ベスト作品になります。基本的にシングル集だったこれまでのベストと異なり、未発表テイクのシングル曲に加え、アルバム初収録となるカップリング曲4曲、さらに未発表の新曲を5曲収録という大盤振る舞い。リマスターは勿論のこと、歌詞ブックレット内には4頁にわたって収録曲ごとの浅岡本人のライナーノーツも掲載され、かつてないほど気合の入った内容になっています。
CD2枚は時系列ではなく、DISC 1は「君がいたから」、DISC 2は「突然」という大ヒットシングルから始まり、シングル曲の合間にカップリングやアルバム曲、そして新曲を適度に配置し、最後はバラードナンバーで締めるという、1枚ずつ完結している流れのある構成。シングルの未発表テイクはデビューシングルの「君がいたから」から「ドキッ」までの5作のシングルになりますが、どの曲も正式採用されたテイクの微妙なミックス違いといった感じで、よほどのコアなファンでなければ違いがすぐには分からないようなバージョンなので、正式テイクとの差異を気にしなくても特に問題ないと思います。むしろテイク違いが公言されなかった「青い傘で」のほうが冒頭から明らかに各楽器のバランスが異なる未発表バージョンだったというのがサプライズではありました(笑)。
新曲5曲は前述のライナーノーツによると制作時期がそれぞれ異なるようで、浅岡が令和の時代になってから歌詞を書きおろしたと公言している曲あり、編曲クレジットに当時ビーイング在籍だった明石昌夫の名前があったり、録音メンバーのクレジットに新旧ミュージシャンの参加表記があったり…と、どこまで作っていてどこからが今回用に再録音したのかは曖昧。曲調は幅があり、彼らのパブリックイメージ的なバンドサウンドから、活動末期の打ち込みを全面的に使用したナンバーまで様々ですが、歌詞は基本的にひとつのテーマを様々な角度から描いているという意味で統一感がありました。ただ、浅岡以外のメンバーで今回の録音に明確に参加していたのはドラムスの小橋琢人が1曲だけ、しかも担当パートはドラムの打ち込みだったというのが少し残念。彼の生ドラムが響く新曲ももう数曲録音して欲しかったな、と思います。
DVDは「FIELD OF VIEW 〜the Extra Reflections〜」。各オリジナルアルバムから1コーラス程度のプロモーション映像39曲、さらに「Still」「青い傘で」のライブ映像(2000年開催のライブツアーの映像のようです)を収録。プロモーション映像はこの時代のビーイングにありがちだった「スタジオで作業中のついでに素材的に撮る」というものではなく、ちゃんとロケ地やステージセットで撮影用の衣装も着て演奏している本格的なもの。当時のビーイング情報番組「NO.」あたりで流れた映像ではないかと推測しますが、アルバムの曲までこんなに沢山撮影してたんだ…というのが驚き。「CAPSULE MONSTER」だけは謎のモノクロアニメで1曲のみというのが残念でしたが、解散時のMV集「VIEW CLIPS」との被りも全くといっていいほど無しでコアなファンも満足できそうな内容。あとはメニュー画面と曲目表記があれば完璧でした。そして今回は2曲だけだったライブ映像もまだまだ眠っていそうで、今後何かの機会にでも放出してくれたらな、とも思いました(笑)。
…ということで結構なボリュームのコアファン向けベストであり、代表曲もほぼ網羅されているとはいえ、いきなり初心者がこれを聴くのはちょっと重ため。これまでのベストを1作聴いて、更に彼らの音楽世界を体験したい、というライトリスナーへ「2作目のベスト」として聴く流れがお薦めです。それにしても解散から約18年、まさかこの時点でここまで凝ったベストが制作されるとは思ってもみなかったし、カップリングの名曲達も長い時を経てようやくアルバムに収録され、さらに新曲多数と、ファンとしては「予想さえしてないギフト」を有難く受け取らせてもらいました。
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