2020年08月15日 21:30

Artist Archive:槇原敬之・ソニー時代全アルバムレビュー+α

makiharafront 1997年よりデビュー以来在籍したワーナーを離れ、Sony Records(→SME Records)に籍を移した槇原敬之。同時にセルフプロデュースを開始し、ワーナー時代とは少し違った角度からの楽曲が増えてきた時期でした。自身の楽曲制作以外にもカバーアルバム、他者のプロデュース、初のアリーナ級のツアー、変わったところでは菓子パンのプロデュースなど、意欲的な活動が目立っていたのですが、思わぬ形でソニー時代は終わりを告げることに。今回の「Artist Archive」では、そんな彼の1997〜1999年に残した全アルバム、その後にリリースされたソニー関連の非公認的なベストも含めて1枚ずつレビュー。「続きを読む」からご閲覧ください。

第1次ワーナー時代(1990〜1996)の全アルバムレビューはこちら
同時期の全ベストアルバムレビューはこちら



槇原敬之・ソニー時代全アルバムレビュー+α


Such a Lovely Place
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 1997年11月27日発売、8thアルバム。全11曲収録。エクストラトラックとして動画等がパソコンで観られるCD-EXTRA仕様になっていた。
 初のセルフプロデュースアルバムということで、シングル「素直」(バンドテイストでのアルバムバージョン)「モンタージュ」、アルバム曲では「Cleaning Man」「手をつないで帰ろ」などのカラフルなアレンジの王道ラブソング路線の中に、R&B調の「僕のものになればいいのに」、カップリング曲をテクノ全開でリビルドした「情熱」など、これまでにない実験的な歌詞・曲調の楽曲が顔を見せ始めている。実験的といえば中盤に登場する「印度式」はその最たるもので、当時は度を過ぎたおフザケ曲、としか認識していなかったのだが、その後の経緯を知ってしまうと聴くたびに複雑な気持ちになる曲である。そんな中で翌年にシングルカットされた「足音」、ラストを飾る「Such a Lovely Place」の2曲は、抽象的な歌詞ながら本人のこれからへの強い決意を感じさせ、本作を締めくくっているのが感動的。筆者としては前年の「UNDERWEAR」に並ぶフェイバリット・アルバム。
 なお、1999年5月にSA-CD仕様で、2007年1月に通常CDで再発されている。ソニー時代のCD作品で再発されたのは本作が唯一。


Listen To The Music
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 1998年10月28日発売、キャリア初のカバーアルバム。全12曲収録。初回限定盤は紙箱の中にCDケースを収納した特別仕様。なお本作よりSony RecordsのレーベルSME Recordsへ内部移籍している。
 ここまでソングライターとして評価をされてきた槇原が、初めてアレンジャー、ボーカリストとしての自身を全面に押し出した記念すべき一作。YMOや大江千里など、彼がリスペクトするアーティストの著名曲から、知る人ぞ知るマイナーなアーティストの隠れた名曲までを幅広く選曲。テクノ、オリエンタル、王道ポップスと、様々な要素でのカバーにチャレンジしている。中でも言われなければ槇原のオリジナル曲?と思うぐらい彼の作風にマッチしている「蒼い月の夜〜Lady In Blue〜」(原曲:LOU)、文部省唱歌の「朧月夜」が白眉。槇原敬之の声とアレンジで聴く名曲集として楽しめる1枚。
 ちなみにカバーアルバムは後年シリーズ化され、2005年に第2弾、2014年に第3弾がそれぞれリリース。2019年には過去3作+αのベストセレクションも発売された。


Cicada
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 1999年7月7日(初回限定盤)、7月10日(通常盤)発売、9thアルバム。全12曲収録。前作以降の「HAPPY DANCE」「STRIPE!」、そして「Hungry Spider」の3シングルを収録。「HAPPY〜」は大幅にサウンド面をリメイクしたアルバムバージョン。前年に寺西一雄(従兄弟のローリー寺西の本名)に提供・プロデュースした「Name Of Love」のセルフカバーも収録されている。
 秋冬発売が恒例だった彼のオリジナルアルバムとしては初の7月発売。季節に因んでかアートワークを含めて夏を意識した内容(「STRIPE!」除く)になっているのだが、陽気な夏や爽やかな夏とは一切無縁な、徹底したシンセプログラミングとアコースティックギターがメインで、特に前半部分は緊張感を漂わせる内容の楽曲が居並ぶ。歌詞もどこか諦観を感じさせる「青春」「The Future Attraction」、そしてタイトル曲の「Cicada」など、これまでの自分の作品を客観的な視線で見据えたような楽曲が登場するなど、前作で垣間見せた新機軸に本格的に取り組んだかのような印象。サウンド的な聴き心地は良いのだが、これまでの温かみのある路線とは異なる槇原のアナザーサイドを見せつけたような全体像になっている。
 初回限定盤には槇原プロデュースによるThunder Babiesの8cmシングル「待ってたぜBABY!」が付属。内輪のスタッフによる素人歌唱のお遊びソングなので、特にこれ目当てで初回盤を探す必要はないと思う(苦笑)。
 本作を引っ提げた日本武道館公演を含むアリーナツアー「Shadow Pictures '99」が同年9月から開催される予定であったのだが、直前の8月26日に覚醒剤取締法違反で槇原が逮捕。これにより全公演が中止になってしまった。


STRANGE ATTRACTIONS?
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 1999年7月7日(VHS)、7月23日(DVD)発売、通算では「幸せの記憶」「SMILING -THE VIDEO COLLECTION-」に続く3作目のMUSIC VIDEO集。全7曲収録。
 VHSは「Cicada」と同時発売、遅れて発売されたDVD(当時黎明期)での作品発売は初。ソニー移籍からこの時点までの全シングル6曲のMVに加え、最新曲「Hungry Spider」の撮影メイキングが同曲のEnglish VersionをBGMにして収録されている。前述の逮捕でソニー在籍時のリリースは最後になってしまったので、結果的にはソニー時代のコンプリートMV集にして唯一の映像作品となった。
 ワーナー時代と比べると明らかに映像方針が異なり、坊主頭で白熊のパペットを手に歌う「素直」、いかにも芸能人っぽい風体で外国人バンドをバックに歌う「モンタージュ」、画面一杯に出現する無数の槇原がピアノを弾きながら歌う「STRIPE!」、極めつけは紙芝居をしながら歌い、最後に女性に銃殺される「Hungry Spider」など、かなり刺激的な要素の多いMVがズラリと並び飽きさせない。ただ、ボーナス的に収録されたメイキングでのテンションの高さは今観ると…な感じがするのが何とも。余談であるが「Hungry〜」のMVには本間昭光、亀田誠治、林部直樹、三沢またろうなどがバックミュージシャンとして登場して何気に豪華である。
 2003年末にはソニーの廉価DVDシリーズにラインナップされトールケースで再発された。なお、「Such a Lovely Place」「Listen To The Music」「Cicada」に本作を加えた「槇原敬之BOX」というボックスセットが同年に発売されているが、特典音源・映像などの類は一切ない模様。


SINGLE COLLECTION 〜Such a Lovely Place 1997-1999〜
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 2000年12月6日発売、数あるベスト盤の中でソニー時代のみを対象にしたという意味では唯一のベストアルバム。全14曲収録。
 一週間前の11月29日に出戻ったワーナーより10thアルバム「太陽」で音楽活動を再開。それに合わせてと思われるソニー在籍期の全シングル集+α。恐らくレコード会社主導の非公認ベストアルバムなのだろうが、リリースにあたってリマスタリングエンジニアの名前がクレジットされているなど、単なる既存音源の寄せ集めCDではない模様。
 収録曲は「素直」から「Hungry Spider」まで、全6タイトルのシングル曲、カップリング曲を時系列で並べ、最後にカバーアルバム「Listen To The Music」から著名曲を3曲選曲。「素直」「情熱」「HAPPY DANCE」のシングルバージョン、「Merry-go-round」がアルバム初収録となる。一番古い曲でも1997年(3年前)なので、発売当時は最近リリースの曲ばかりをここでまとめられても…という感じだったが、中古8cmシングル市場があってなきが如しの現在ではソニー時代のシングルとカップリング曲が一気に集められるお得な立ち位置の1枚(結構中古相場も安いし)。ただ「Hungry Spider」のシングル3曲目に収録されていたEnglish Versionが未収録のままになったのが残念。


Song Book "since 1997〜2001"
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 2002年1月23日発売、2作連続となるソニー主導のベストアルバム。全15曲収録。
 前年11月の11thアルバム「Home Sweet Home」から約二ヶ月後という謎の時期にリリース。今回はソニー時代+ワーナー復帰後の2000年のアルバム「太陽」、2001年春のシングル「桃」までが選曲対象で、この時期の全シングルA面曲+オリジナルアルバム3枚、カバーアルバムからのセレクトに加え、最後にボーナストラックとして「北風〜君にとどきますように〜」が収録されるなど前作よりも幅広くピックアップされている。なお前作と異なりスタッフクレジットにリマスタリングエンジニアの名前は見当たらない。
 各アルバムの表題曲(「Such a Lovely Place」「Cicada」「太陽」)、セルフカバーの「Name Of Love」、何故か選ばれた(?)「印度式」など、アルバムの重要曲も抑えられており何気に選曲は良い。「SMILING -THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA-」の続編として、レコード会社主導ではあるもののソニー時代の総括的内容+ワーナー復帰直後のベストセレクションとして聴ける優秀なアルバム。

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