hzettrioresola 2020年1月1日発売、H ZETTRIO通算5枚目のオリジナルアルバム。本編全12曲に加え、異なるボーナストラックを1曲ずつ収録する「DYNAMIC FLIGHT盤」「EXCITING FLIGHT盤」の2種でのリリース形態。本レビューは「DYNAMIC FLIGHT盤」となります。

 従来の彼らのリリースパターンは「シングル曲を4〜5曲先行配信し、数ヶ月後に未発表の新曲を交えたCDアルバムを発売する」というものでしたが、本作は2019年1月1日の「Journey」を皮切りに、毎月1日に配信シングルをリリース。それが1年分(=12曲)貯まった翌年の1月1日に全曲を網羅し、オリジナルアルバムとして発売、という新しい試みがなされています。「Birds Fly」は再録バージョン、「Z界のテーマ」はハンドクラップを追加したアルバムバージョンというオリジナルとの違いはあるものの、ボーナストラックも含めて全曲が既発曲。

 収録曲は「レソラ」「幻想ノスタルジック」などを筆頭に、基本的にはピアノ+ベース+ドラムスのトリオ編成でのノリの良い曲が多め。曲順は時系列ではなく、アルバムの流れを考えたようで、ほぼベースが主役の「NIRE The Bassman」を序盤に、ミディアムの「Relax Time」を中盤に、途中までは熱量のある演奏なのに最後のほうで緩いラップが入る(苦笑)「Z界のテーマ」を中盤明けに配置。これらはシングル曲ながら「アルバム曲っぽい楽曲」なので、他のキャッチーな曲に挟まれることでアルバムの良い緩衝材になっており、全体のバランスを取るのに一役買っている印象です。元々押しの強い演奏が持ち味(?)の彼らですが、各シングル曲を1枚のアルバムに纏めるにあたって前述の工夫が見られ、緩急の付いた構成で比較的聴きやすいのはポイント高め。
 ちなみに「DYNAMIC FLIGHT盤」のボーナストラックは、1曲目の「レソラ」のライブバージョン。原曲は途中からキーボードが入ってくるのですが、このバージョンは正真正銘のトリオスタイルで演奏の違いを楽しめるトラック。なお「EXCITING FLIGHT盤」には2018年7月の配信シングル「Make My Day」が収録されています。

 …ということでH ZETTRIOの2019年の全音源をCDにまとめて一気に堪能、という点では有意義なアイテム。ただ、せっかくのCDパッケージなのだから新曲を1〜2曲ぐらい入れてくれれば…などと思ってしまうのですが、前述のバージョン違いを考えなければ全曲配信購入済(1曲各200円)の場合の総額とCD1枚の価格はそんなに変わらないし、配信で聴きたい人、CDで欲しい人のどちらかに特別な付加価値を与えるということもなくイーブンで、というのが彼らのスタンスなのかもしれません。
 そんな彼らは2020年に入っても毎月1日の配信シングルリリースを続行。何でも2020年末まで24ヶ月連続配信に挑戦中とのこと。今年は音楽業界でもイレギュラーな出来事が相次ぐ年になってしまっていますが、完遂できることを願っています。