dj 2020年4月8日発売、DJ和の手により編集されたミックスCD。全32曲収録。

 既存音源を基に曲を繋げるミックスCDの著名ミキサーであるDJ和。そんな氏が本作では長戸大幸が創設した音楽制作集団・ビーイングの楽曲群のノンストップミックスに取り組んだ1枚。ブックレット末のDJ和本人のコメントから察するにビーイング発の企画だったようで、発売元もビーイングから、エンジニアや広報までビーイングのスタッフがクレジットされており、全32曲中実に23曲がビーイング関連の楽曲達。残る9曲は、DJ和がソニー所属のミキサーということもあって(?)か、ソニー関連の楽曲が並んでいます。

 楽曲収録年代は80年代後半から00年代初頭ぐらいまで。ビーイング側からはZARD、WANDS、大黒摩季、T-BOLAN、DEEN、FIELD OF VIEW、織田哲郎といった90年代序盤〜中盤のビーイング全盛期のアーティストの楽曲から、少し時代が下って倉木麻衣、小松未歩、GARNET CROWなどの90年代末以降のいわゆるGIZA勢までをフォロー。一方のソニー側からは、80年代中盤以降にブレイクしたTM NETWORK、渡辺美里、REBECCA、UNICORN、米米CLUBなどの錚々たる面々に加え、90年代末にヒットを飛ばしたSIAM SHADE、TRICERATOPS、the brilliant greenも名を連ねる選曲に。

 内容のほうですがミックスCDということで、どの曲も1コーラス程度が基本でマスターをほとんど弄らず似たようなテンポの曲を繋げて…というのが約1時間という、「往年のヒット曲をオリジナル音源のままダイジェストで聴いている」という感覚が最後まで続くのですが、DJ和については以前広瀬香美のベストでも似たような手腕でノンストップ仕様にしていたのを聴いていたこともあり、「この人のミックスCDってこういう感じだよな」というのは前もって知っていたのですんなりと聴けました。音の抜き差し、クロスフェード、再構築的な技術はほとんど使われていないので、こういったテクニック(というか工夫?)を求めるリスナーには明らかに不向きかもしれません。

 ほぼ原型のままのダイジェストCDを約2,000円…というのはちと厳しい価格設定のような気もしますが、前述の通りビーイングが全面的に制作に携わっており、ビーイングと縁のあるBIRDMAN MASTERINGの島田勝弘の手によるリマスターで昔の音源が迫力のある音質で蘇ったのは秘かな(?)セールスポイントでは。まあ当時も今も現役稼ぎ頭のB'zはこういうところでは呼ばれないとか、ソニーと協力しているならTUBEも入れれば…とか若干思うこともあるのですが(TUBEについては同氏によるミックスCDを単独で2枚同時出したばかりだそうで)ここまでビーイング黄金期の楽曲を取り揃えたミックスCDもなかなかないでしょうから、当時のヒットシーンを思い出しながら聴くという意味では面白いアイテムでした。