remio 地元・山梨の幼馴染である藤巻亮太(Vo&G)、前田啓介(Ba)、神宮司治(Dr)の三人によって2000年に結成されたスリーピースバンド・レミオロメン。インディーズでのリリースを経て2003年8月にメジャーデビュー、以降2012年2月の活動休止宣言までに5枚のオリジナルアルバム、2枚のライブアルバム、1枚のベストアルバムをリリース。今回の「Artist Archive」では、彼らが2008年末まで在籍したビクター・SPEEDSTAR RECORDSよりリリースされたアルバム全5枚を1枚ずつレビューいたします。


レミオロメン SPEEDSTAR RECORDS時代(2003〜2008)全アルバムレビュー


朝顔
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 2003年11月19日発売、メジャーデビューアルバム。全11曲収録。初回盤は紙ジャケ仕様。
 同年3月発売のインディーズアルバム「フェスタ」から6曲中5曲の再録、シングル「雨上がり」「電話」とそのカップリングも収録されており、新曲はタイトル曲の「朝顔」とラストの「追いかけっこ」のみという、メジャー1stにしてこの時点までの集大成的な構成になっている。
 オーバーダビングを含むエレキギター、ベース、ドラムスというメンバーのみのスリーピース編成(「追いかけっこ」のみ共同プロデューサーである小林武史のキーボードが入っているがあくまで味付けのみ)でほぼ統一されたアルバムは本作が唯一。エレキを鳴らしながらも湿度高めの演奏、綴られた情景を朗々とした歌声で聴かせる藤巻のボーカルなど、トリオバンドとしての彼らの型は既に完成形。ポップ色は薄く、アレンジ的にも目立つギミックなども特にないので、後の時代にファンになった層には物足りなさを感じるかもしれないが、活動末期までライブで披露された「まめ電球」や、「レミオベスト」にも収録された「ビールとプリン」などの人気曲も収められ、スリーピースバンドとしての彼らのベスト盤と呼んでも過言ではない内容である。
 ちなみに本作は初回盤・通常盤共にレミオロメンとしては唯一コピーコントロールCDが採用された作品である。ビクターがCCCDから撤退した後の2007年12月には通常盤仕様で通常CDとして再発されているが、発売日の表記はオリジナルのままなので中古市場では見分けがつきにくい。VICL-61237がCCCD盤、VICL-62703が通常CD再発盤である(その後2009年に通常CDでOORONG RECORDSからも再発されている)。


ether [エーテル]
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 2005年3月9日発売、2ndアルバム。全12曲収録。初回盤のディスクはピクチャーレーベル仕様。
 前年の「3月9日」「アカシア」、2005年に入ってからの「モラトリアム」「南風」の4枚のシングルを収録。ネクストブレイク候補として順調に活動してきた時期のリリースにあたる。発売日当日には初の日本武道館でのワンマンライブも開催され商品化されている。
 本作より小林武史が本格的に編曲面に参入。「春夏秋冬」「永遠と一瞬」「海のバラッド」など、ピアノやストリングスを効果的に使用した曲が登場し、早くもファンを困惑(?)させていた記憶があるが、楽曲自体に関しては前作で感じられた「土の匂い」を感じさせる路線の延長となっており、前作を洗練させたという印象を受ける。ロックとポップスを上手く折半した内容が心地良く、個人的には彼らの作品の中で最も良く聴いたアルバム。
 なお、作曲のクレジットが全曲バンド名義に統一されているが、この表記は本作のみ。以降のライブアルバムやベスト等に曲単位で収録される際には作曲表記は個人名義に変更された。


HORIZON
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 2006年5月17日発売、3rdアルバム。全12曲収録。初回盤はスリーブケース+デジパック+ピクチャーレーベルのスペシャルパッケージ仕様。
 前年11月のシングル「粉雪」が発売以降ロングセールスを記録し80万枚のセールスを突破。ブレイクの勢いに最も乗っていたタイミングでリリースされた。「粉雪」前後のシングル「蒼の世界」「太陽の下」も収録。
 「壁は何処にもない」と無限の可能性を歌い上げた冒頭のリード曲「スタンドバイミー」、メロウなバラード「傘クラゲ」、ライブ盛り上げソング的な「明日に架かる橋」等、一気にポップに寄せてきた楽曲に加え、全曲キーボード参加の小林武史の手腕が大いに振るわれたストリングスに電子的なシンセ音を散りばめたサウンドが目立つ。本来の持ち味であったスリーピース要素は「シフト」ぐらいに留まり、より多くのリスナーに門戸を開いた内容である反面、スリーピース要素が好きで聴いていたファンからはかなり激しいレベルで賛否両論が渦巻いていた、ある意味問題作。
 確かに一気に音楽性が変わりすぎで筆者も当時面食らった記憶があるのだが、以降の彼らは本作のポップ志向を基調に活動を続けていくわけで、通史的に見るとその後の音楽性が確定したターニングポイントだった一作であると思う。


Flash and Gleam
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 2006年11月1日発売、年内限定出荷作品としてリリースされたCD2枚組。
 Disc 1「Flash side」は同年8月12日に山梨県の日本航空学園の滑走路にて敢行された「SUMMER LIVE "STAND BY ME"」のライブ音源を15曲抜粋収録したライブアルバム。最新アルバム「HORIZON」からは9曲+この時点での代表曲をピックアップした内容。三万人規模のワンマン、開演直前までの雷雨などの特殊な環境も手伝い、歌唱や演奏自体はスタジオ録音と比べて勢い重視でかなり粗削りであるが、2009年の「レミオベスト」の初回限定盤に付属のライブ完全版DVDがリリースされるまでは当日の模様を唯一伝える貴重なライブアクト音源であった。
 Disc 2「Gleam side」は新曲「アイランド」1曲のみを収録。開放的な「HORIZON」から一転、藤巻の内的葛藤を描いたとされる曲であり、重厚なストリングス+バンドサウンドと共にヘビーなテーマの楽曲。こちらも「レミオベスト」本編に収録されたが、その際には1番のサビ前までのエフェクトが外されナチュラルなボーカルに変更されている。


風のクロマ
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 2008年10月29日発売、4thアルバム。全15曲収録。初回盤にはリード曲「翼」のMVとメイキングを収めたDVDが付属。
 「HORIZON」から約2年半振りと、ブームも落ち着いた頃にようやくリリースされたオリジナルアルバム。前作以降に発売されたシングルA面曲「茜空」「蛍」「RUN」「Wonderful & Beautiful」「もっと遠くへ」「オーケストラ」+カップリング2曲の計8曲が既発曲というセミベスト状態となった。
 今回も小林武史がキーボードで全曲参加し、その音色が時には藤巻のエレキギターの音も遠くへ追いやるほど。またギター演奏に関してもアコギをメインにした曲が増え、もはやデビュー当時のスリーピース時代の面影はほぼ皆無に。とはいえ、アルバムの新曲に関しては力強く前向きな「翼」、初期の陰影を感じさせる「透明」、ポップなラブソングの「花火」など、「ether」「HORIZON」の中間のような佳曲が並んでおり悪くはない。
 総演奏時間は2年半分のシングル曲を詰め込んだこともあり75分を超え、特にアルバム用のコンセプトもなく新旧の曲を並べている曲順なので統一感が感じられないという点はマイナスポイント。アルバムの流れを考慮して既発曲を2〜3曲程度カットしても良かったのでは。


 なお、レミオロメンは翌年2009年より所属事務所OORONG-SHA専用のavexレーベル・OORONG RECORDSへ移籍。同年にベスト、2010年にオリジナル、2011年にライブアルバムをリリースし、2012年2月に活動休止を発表。藤巻はソロで、神宮司はドラムサポート等で活動を続けているが、前田は地元山梨のオリーブオイル業の社長となり音楽界からは実質引退。ということもあり三人での活動再開の目途は全く立っていないのが現状のようだが、2017年の藤巻のソロアルバムにて、藤巻+前田、藤巻+神宮司という形でのレコーディングが実現してはいる。