karashimacb 2020年5月6日、辛島美登里の公式サイト内の通販ページ「Karashimaya」にて販売が開始されたベストアルバム。全14曲収録。

 本来は今年の3〜4月に予定されていたコンサートツアーにて、会場限定販売されるはずだった本作(公式によると発売日はコンサート初日の3月20日)。新型コロナウィルスの影響で全公演が中止となり、それに伴って公式サイト限定での注文販売に切り替え。これによりライブ不参加、ファンクラブ未加入の一般層でも購入できるようになりました。なお発送の際にはアルバムジャケットに辛島本人の直筆サインとサインの日付が記されるサービス有り。注文してからは3〜4日程度で到着する(筆者在住の東京都の場合)など、迅速な対応で発送作業も行われているようです。

 曲目は昨年のシングルセレクトベスト「Carnation」同様の本人選曲に加えて各楽曲のライナーノーツが掲載。今回のメインは1995年から2003年までに在籍した東芝EMI時代からの11曲。加えて2004年にインディーズでリリースされた2曲+ボーナストラックとして新録の弾き語りバージョン「Emerald Dream(2020)」という構成。曲順は時系列ではなく全体の流れを考慮して組み上げられているようです。制作やリマスターには東芝EMIの原盤権を持つユニバーサルミュージックのスタッフがクレジットされている一方で、販売・発売元は彼女の事務所名義となっており、シンプルな歌詞カードの文字やさっぱりとしたCD盤面など、ハンドメイド的な印象も受けるデザインになっています。

 アルバムタイトルに倣ってか、収録曲は「春めく隠れ人気曲」(帯より)をセレクトしたとのこと。ただストレートに春!というイメージの曲は「春が来た!」「菜種時雨〜natane*shigure〜」ぐらいで、夏が近づく時期(「ブルーの季節」)が舞台だったり、季節感が限定されない曲が結構あり、「Carnation」で選ばれなかったシングル数曲+EMI時代からの季節を問わないアルバム曲選集、という表現が一番しっくりくるかも。さすがに在籍時の7枚のオリジナルアルバムの中から選抜しただけはあって佳曲揃い。報われない恋愛の歌がやはり(?)多数で、男の筆者の身からすると薄ら寒いようなテーマの歌詞もあったりするわけですが(苦笑)、ミディアム系を中心に曲調もバランス良く配置され、70分を超える収録時間ながら中盤過ぎ辺りで印象強いシングル曲を配置することで中弛みを抑え、最後まで一気に聴き通せるアルバムだと感じました。

 元々会場限定販売だったということもあり、「サイレント・イヴ」も「愛すること」も収録されていないコア寄りのベストですが、一般販売に変更された現時点では、公認・非公認合わせてどうしても似たような選曲になる王道ベストの次に聴く1枚として、ファンハウス時代の「Hello Goodbye」と同列のEMI時代アルバム曲中心ベスト、という立ち位置でしょうか。オリジナルアルバムの数も多いし、王道以外でももう少し辛島美登里の曲を知りたいけどどのアルバムを聴けばいいのか…というライトな層にも楽しんでもらえるベストセレクションだと思います。