tmgfft TM NETWORKデビュー35周年フィナーレ企画として、来週末4月18日(土)の午前10時から12時間に渡り、SONYのオフィシャルYouTubeチャンネルで彼らの歴代のライブ映像が配信されるそうです→延期になりました詳細)。また、「初のBlu-ray化となる映像作品発売を準備中」とのことですが、未発表とは書かれていないので過去に発売されたDVDがBlu-ray化されて再発、ということではないかと推測しています(あまり期待するとね…苦笑)。そんなわけでTM35周年も終わりに近づきましたがまだまだ続く「Gift from Fanks」全曲紹介、今回で「T」盤は完結、DISC 3の全13曲をレビューいたします。

TM NETWORK「Gift from Fanks T」全曲レビュー・後編
 ※編曲は特記のない場合は全曲:小室哲哉。

DISC 3

1.LOVE TRAIN
 作詞・作曲:小室哲哉
 1991年5月22日発売、25thシングル。投票順位17位。
 「WE LOVE THE EARTH」との両A面シングルで、どちらもカメリアダイヤモンドのCMソングに起用された。「WE LOVE〜」よりもエレキギター色が強めで「RHYTHM RED」からの流れを汲む作品、とも言えるかも。同年9月の8thアルバム「EXPO」発売時に購入者抽選でリミックスの「CLUB MIX」が貰えるキャンペーンがあった。このバージョンをさらにリミックスした「extended euro mix」が1993年8月の「CLASSIX 2」に収録。また、2004年3月の10thアルバム「NETWORK TM -Easy Listening-」にてトランス調での新規リメイクの「EXTENDED MIX」が制作された。
 デビュー20周年時のファン投票ベスト「Welcome to the FANKS!」では9位。なおこのアルバムのボーナスディスクに「CLUB MIX」も初商品化されて収録されている。

2.Crazy For You
 作詞:坂元裕二/作曲:小室哲哉
 1991年9月5日発売、8thアルバム「EXPO」収録曲。投票順位49位。
 様々なジャンルの音楽を幅広く取り揃えた「EXPO」の中でも一番の異色作。ハウスミュージックのオケに乗せて、歌詞は全てセリフで語られ、その内容はロックシンガー(声:宇都宮隆)が、ライブの後に夜の女性宅(声:一般人らしいが詳細不明)で密会して…というやり取り。セリフはノイズ混じりに加工され、聴いている側はその模様を盗聴しているかのようなスリリングな感覚を味わえる実験的な楽曲。なお歌詞カードには一切セリフは書かれていない。ちなみに曲中の冒頭や間奏などで笑っている声の主は伊集院光。
 ベストアルバムの類には初収録。この曲がファン投票でTOP50に入るというのが凄いと思った。セリフ部分の入っていないインストバージョンが2009年9月の「THE SINGLES 2」の初回限定盤ボーナスディスクに収められた。また、1992年春のアリーナツアー「EXPO FINAL CRAZY 4 YOU」にてロックアレンジのインストとして生まれ変わったライブバージョンが同年8月の「COLOSSEUM I」に収録されている。

3.大地の物語
 作詞:小室哲哉/作曲:木根尚登
 8thアルバム「EXPO」収録曲。投票順位47位。
 「WE LOVE〜」「LOVE TRAIN」に続いて、アルバム発売前からカメリアダイヤモンドのCMソングとしてテレビでオンエアされていた。アルバム発売直後にはこの曲で「ミュージックステーション」に出演するなど、アルバムの看板曲のひとつ的な扱いであった。
 曲の中盤と終盤に熱いエレキギターのソロがあるなど、木根の作品にしては珍しくスケールの大きなロッカバラード。珍しいといえば木根の曲に小室が歌詞をつけるというのもレア。TMN期の代表的キネバラだと思うのだが、TMN終了直後のバラードセレクションベストでは選出されないなど、扱いには若干不遇の感がある。

4.一途な恋
 作詞・作曲:小室哲哉
 1993年9月29日発売、27thシングル。投票順位21位。
 ライブセレクションやリミックスアルバムを経て、前作「WILD HEAVEN」から約1年10ヶ月ぶりの新曲。TMとしては珍しくサビから曲が始まり、楽曲タイトルをサビ頭に持ってくるなど、90年代のヒットシーンを意識したようなキャッチーなサビメロに対して、Aメロのメロディーは息継ぎが出来ないほどの音符の羅列で占められるなど、結構野心的な作品。ライブで歌うのが困難な曲とされていたが、2013年7月のさいたまスーパーアリーナ2days「FINAL MISSION -START investigation-」にて宇都宮と木根の掛け合いという形で遂に初披露されていた。
 同シングルカップリングには早くもリミックスを試みた「ANOTHER MATERIAL」バージョンが収録。また翌年5月の「終了」記念CDボックス「GROOVE GEAR」には未発表ミックスとして「3rd mix」が収録された。

5.Nights of The Knife
 作詞:小室みつ子/作曲:小室哲哉
 1994年4月21日発売、28thシングル。投票順位9位。
 デビュー10周年当日にリリースされ、同時に「TMN終了宣言」にて活動終了を発表。この時点ではラストシングルとされていた。別れではなく新しい旅立ちへ向かっての前向きなバラードであり、オリコンチャート初登場1位、TM歴代でも「LOVE TRAIN」に次ぐ2番手の売り上げを果たし、有終の美を飾っていた。CDボックス「GROOVE GEAR」ではラフミックスの「ver.0」が収録されている。
 1999年のTM復活後もこの曲の性質上、滅多にライブでは披露されておらず、20周年時の「DOUBLE-DECADE」関連のライブや、30周年時の「QUIT30」ホールツアーで初日のみ演奏されたというレア曲。

6.TIMEMACHINE
 作詞:小室哲哉/作曲:木根尚登
 1994年8月11日発売、ライブアルバム「final live LAST GROOVE 5.19」収録曲。投票順位23位。
 デビュー時のライブでは演奏されていたものの、商品化はされていなかったTM活動最初期の作品。1994年5月の東京ドームでのラストライブ2days「4001 DAYS GROOVE」の2日目のアンコールにて、正真正銘最後の曲としてメンバー三人のみで演奏されたライブバージョンで初音源化、ライブビデオやライブCDに収録された。
 歌詞は初期ということもありSFチック。宇都宮のボーカル、木根のアコギ&コーラス、小室のピアノのみというシンプルで奇を衒わない編成なのだが、TMNが最後の最後で演奏するという意味では最も相応しいアレンジでしんみり聴かせるバラード。「Welcome to the FANKS!」でも20位にランキングされ収録されるなどファン人気も高い。

7.Detour
 作詞:前田たかひろ/作曲:小室哲哉
 1996年12月12日発売、ベストアルバム「TIME CAPSULE all the singles」収録曲。投票順位59位。
 TMN終了から二年半が経過、小室ブームの真っ只中でリリースされた全シングルA面集CD2枚組のDISC:2の最後に収められた新曲。クレジットでは三人の連名名義になっており、厳密にはTMN名義の楽曲ではない。
 TKプロデュースのプレステソフト「Gaball Screen」用に制作された楽曲とのこと。作詞も当時の小室作品の歌詞の一部を手掛けていた前田たかひろが担当するなどTK色が強い。タイトルは「遠回り」という意味で、「君」を待たずに行ってしまう主人公のモノローグ的な内容のバラード。この頃は再び三人が接近し始めた時期であり、いずれTMの復活も…という匂わせ的なものもあったが、実際の再始動は1999年の夏まで待たされた。

8.MESSaGE(Original mix)
 作詞:小室みつ子/作曲:小室哲哉
 2000年7月27日発売、32ndシングル。投票順位30位。シングルバージョンとしてアルバム初収録。
 1999年春にTM再始動宣言、同年7月にSONYの小室専用レーベルTRUE KiSS DiSCよりTM NETWORKとしてシングル「GET WILD DECADE RUN」のリリースで復活を遂げたTMだったが、SONYとの契約は2000年春で終了。新たに小室が立ち上げたインディーズレーベル「Rojam Entertainment」からの第1弾シングル。なおこのシングルの初出は横浜アリーナでのライブ「Log-on to 21st Century」にて会場限定発売、後にRojamのインターネットショップにて通信販売が行われ、この時期のシングルは基本的にCDショップ等での発売はされていない模様。
 当時世の中に徐々に普及し始めていたインターネットを筆頭に、様々な媒体から得られる情報の渦の中から真実の言葉だけを聞き分けたい、というテーマ(大意)のタイトル通りのメッセージソング。ミディアムナンバーだがオケは薄く、サビでもメロディーの割にアレンジが盛り上がらない…という、シングルタイトル的なインパクトには欠けるがなかなかの佳曲。2003年2月の蔵出し音源集「キヲクトキロク」ではテンポを上げ四つ打ちバージョンにリメイクした「KIOKU REMIX」で収録されている。

9.We Are Starting Over(Straight Run)
 作詞:小室みつ子/作曲:木根尚登
 2000年11月27日発売、34thシングル。投票順位43位。シングルバージョンとしてアルバム初収録。
 TM史上初となる木根の単独作曲によるシングル表題曲。街を離れた「僕」と街に残った「君」が二年ぶりに再会を果たすシチュエーションを描いたバラード曲。木根曲ということや歌詞の内容もあり、TMとしては珍しく終始暖かい雰囲気で進行する楽曲である。
 元々は木根ソロ用の楽曲として1999年秋に制作されたらしく、当時の木根のソロツアーのパンフレットにピアノインストバージョン入りのCDが付属していたとのこと。その音源は後に「キヲクトキロク」にて商品化された。

10.IGNITION,SEQUENCE,START -ALBUM VERSION-
 作詞:小室みつ子/作曲:小室哲哉
 2000年12月25日発売、9thアルバム「Major Turn-Round」収録曲。投票順位56位。
 原曲は同年10月25日発売の33rdシングル。アルバム収録にあたって打ち込みだったドラムとベースが生演奏に差し替えられ、楽曲の躍動感が大幅にアップした。今回のファン投票ではシングルバージョンも83位にランクインしている。
 タイトルはロケットの発射の際の号令の一部。再始動からの紆余曲折を経て、新体制で発進して突き進む、という決意を表明した歌詞が力強い。楽曲は7分近い演奏で、目まぐるしく展開が変わるという一般的なポップスの範疇を逸脱する構成になっているが、攻めの姿勢を見せながらも歌モノとして最後まで瓦解せずに完遂。個人的にこの時期の楽曲で飛び抜けて気に入っている曲でもある。

11.君がいる朝
 作詞:小室みつ子/作曲:木根尚登
 2002年10月30日発売、35thシングル「CASTLE IN THE CLOUDS」カップリング曲。投票順位70位。シングルバージョンとしてアルバム初収録。
 2002年よりインディーズを離れ、メジャーレーベル「R&C JAPAN」(吉本興業の音楽レーベル)に移籍。本ベストの表記によると現在は吉本興業が「Rojam」期とこの時期の楽曲ライセンスを保有している模様。
 ある程度年齢を重ねたカップルのありふれた朝を描いたキネバラ。特筆すべきは編曲クレジットが木根と吉田建の連名で、小室がアレンジに関わっていないという点。だからなのかアコースティック調の普遍的なアレンジに仕上がり、TMらしくはないが楽曲とはマッチしていると思う。2004年の10thアルバム「NETWORK TM -Easy Listening-」ではリミックスされて収録されているのだが、トランス基調のアルバムカラーに寄せた結果、歌詞とあまり合っていないアレンジに変更されてしまった。

12.SCREEN OF LIFE -Single Mix-
 作詞・作曲:小室哲哉
 2004年2月5日発売、36thシングル。投票順位64位。シングルバージョンとしてアルバム初収録。
 デビュー20周年を迎える間近にリリースされた「NETWORK TM」という名前のマキシシングルのリード曲の1曲。当時小室が取り組んでいたJ-POP風トランス(?)をTMに導入したクールなオケの上に、小室いわく「団塊の世代への応援歌」と称する「です・ます」調の歌詞が並ぶ。かなりお疲れ気味の歌詞であり、またTMファンのメイン層はこの時期では働き盛りの三十代ぐらいと思われ、それより明らかに上の世代へのメッセージソングだと思うのだが、むしろブームも去り、世間からの存在感も希薄になってきていた小室が自身を奮い立たせるために書いた歌詞なのかも、と今改めて聴くと感じる。10thアルバム「NETWORK TM -Easy Listening-」にはイントロや間奏を引き延ばした8分超えの「EXTENDED MIX」で収録。

13.グリニッジの光を離れて
 作詞:麻生香太郎/作曲:木根尚登
 本作のボーナストラック。初公開の未発表楽曲。
 デビュー直前の時期にレコーディングしていたがお蔵入りになっていた楽曲。文学っぽいタイトルとは裏腹に歌詞はどこか牧歌的で意表を突かれた。全体的に宇都宮のキーよりも高く歌うのに難儀しそうな曲である。
 アレンジは同じく当時は未発表で1994年の終了時に「TMN RED」に収録された「OPEN YOUR HEART」(こちらも作詞は麻生)と似たようなポップな雰囲気で、2曲ともデビューアルバム「RAINBOW RAINBOW」の派手なカラーとは合わずに収録見送りになったのも納得といった感じ。それにしてもまさかSONYがこんな隠し玉を持っていたとは驚きであった。

 2020.6/18追記:当初歌詞ブックレットでの作曲者は小室哲哉と記載されていたが、クレジットに誤りがあり、正しくは木根尚登の作曲だったということがSONYの公式でアナウンスされた。初回プレス盤の歌詞ブックレットは年内まで無償で交換対応とのこと。なお、通常盤以降は正しい表記に修正済。


(以下、後日更新予定の「M」盤に続きます)