kaninthebook 2020年2月29日、シンコーミュージックより刊行、KANの2冊目となるアーティストブック。

 初のアーティストブック「ぼけつバリほり」が1992年の3月に発売されて以来、KANにとっては実に28年振りの書籍媒体となる本作。B5判サイズで約200頁の中身は、彼と長らく関わり続けているライター・森田恭子が聞き手を務める「年代別ロングインタビュー」、KANのファンを公言するaikoとのインタビュー形式での対談、KANがメンバーの一員でもあるホスキモメンバー(根本要、スキマスイッチ、秦基博)によるKAN抜きの座談会、更に90年代からの交流があるMr.Childrenの桜井和寿への単独インタビュー、加えて各アーティストからのKANへのアンケートの回答、最後に1987年のデビューから2020年現在までの33年間の活動年表が掲載、という構成になっています。

 ファンとして一番興味があるのはやはり「年代別ロングインタビュー」。こちらはシングル出してアルバム出してライブやって…といういわゆる一般的なアーティスト活動のルーティーンだった「1987-2001」、パリに移住した時期の「2002-2004」、日本に帰国して以降の「2005-2020」と、年代を3つに区切って章立てしており、その時々にリリースした楽曲やアルバムタイトル、ライブツアーの名前を出しながらさらっと振り返っていく体でインタビューが続きます。フランス移住の経緯など、活字媒体ではあまり喋ってこなかった(と思う)ことも結構語られていて、なんだか読むとフランスに移住する直前辺りは本当にギリギリの精神状況での制作だったみたいなのですが、フランス在住時代を経て、現在はイベントライブや自主企画を軸に、忙しくはあるけれども楽しくやっているようなのでファンとしてはひと安心(?)。

 インタビュー以外で特に面白かったのはやはりaikoとの対談。お互いミュージシャン同士ということもあり、KANの作るラブソングの内容に関してのaikoの鋭い読みとKANのそれに対する返しのやり取りが興味深かったです(笑)。また上述しましたがaikoは古くからのKANの大ファンで、楽曲のみならず、いわゆるアイドル的に好きだったらしく、そう言われると90年代の彼のライブ映像を観てると結構黄色い声も飛んでたし、あの頃のKANの女性ファンの中にはaikoみたいな視点で夢中になっていた方々もいたんだろうなぁ…というのを改めて認識しました。

 全体的にはテキスト多めで写真はそこそこ、各アーティストへのアンケート部分は「〇〇ぴあ」みたいな感じ。アー写で使用されたものやライブ写真などはカラーで掲載されていますが、基本的にフランス帰国後のもので統一されているので、若い頃の秘蔵写真などを期待した人には残念かも。欲を言えば、「ぼけつ〜」ではあった各アルバム毎の全曲セルフライナーノーツがあればとか、それが無理なら簡略化された活動年表をもっと深く掘り下げて…など、色々あるのですが、それらは次の機会(があれば)にでも期待しましょう。まずはインタビューで公言していた「2020年にはアルバムを出す宣言」を是非実行してもらいたいと思います(笑)。