tmgfft TM NETWORKデビュー35周年記念企画として、2019年10月から年末にかけて旧所属レコード会社のSONYの公式サイトにて「新時代・次世代に向けたTM NETWORKソングのファン投票」がレーベルの垣根を越えた(ほぼ)全曲を対象に行われ、投票結果上位70曲をそれぞれ3枚組のCDに振り分けたベストアルバム「Gift from Fanks T」「Gift from Fanks M」が2020年3月18日に同時リリース。2012年の3枚組「ORIGINAL SINGLES 1984-1999」に匹敵する重量級ベスト(×2)となる本作品、今回の「CD Review Extra」では、「T」盤、「M」盤を1曲ずつレビューする本ブログ始まって以来の重量級レビュー(?)に挑戦。第1回目の今回は「T」盤のDISC 1の全11曲をレビュー。


TM NETWORK「Gift from Fanks T」全曲レビュー・前編
 ※編曲は全曲:小室哲哉。

DISC 1

1.1974(16光年の訪問者)
 作詞:西門加里/作曲:小室哲哉
 1984年4月21日発売、デビューアルバム「RAINBOW RAINBOW」収録曲。三ヶ月後の7月21日に2ndシングルとして手直しされシングルカット。投票順位15位。
 1983年の「フレッシュサウンズコンテスト」での優勝曲として、デビューの足掛かりとなったTM NETWORK始まりの一曲。ポップなサウンド、SFチックな邂逅を描いた歌詞などはデビュー曲「金曜日のライオン」よりもキャッチーで分かりやすい。北海道地域でヒットしていたとのこと。1994年5月の東京ドームでのTMN「終了」ライブ2daysでは、二日目の一曲目を務めていた。

2.RAINBOW RAINBOW(陽気なアインシュタインと80年代モナリザの一夜)
 作詞:西門加里/作曲:小室哲哉
 デビューアルバム「RAINBOW RAINBOW」収録曲。投票順位67位。
 作詞の西門加里は後にTMの作詞を数多く手掛ける小室みつ子の変名(小室哲哉とは血縁関係のない赤の他人)。彼女が初めてTMの曲に詞を書いた楽曲とのことだが、この曲に関してはかなりトリップ気味の歌詞で彼女の他の歌詞と比べて解釈が難しい。
 当時の流行と思われる派手派手なシンセと打ち込みドラムの音が印象的で、タイトルチューンということもありアルバムの中での存在感はかなりのもの。「金曜日のライオン」「1974」と並ぶ初期の代表的楽曲。前述2曲を差し置いて、1989年のリプロダクションアルバム「DRESS」ではJellybeanの手によるリアレンジバージョンが制作された。また2014年の「DRESS2」では小室自身のリアレンジ版「〜2014」で収録。

3.8月の長い夜
 作詞:三浦徳子/作曲:小室哲哉
 1985年6月21日発売、2ndアルバム「CHILDHOOD'S END」収録曲。投票順位35位。
 前作と一変して現実的な描写が増えた2ndアルバムの中の1曲。派手さのない切ないミディアムナンバーだが、1987年の初ベスト「Gift for Fanks」にも選曲されたからか知名度は高く、20周年時の投票ベスト「Welcome to the FANKS!」でも16位にランクインし収録されるなどなかなかの人気曲。この時期の楽曲にしては後々までライブでも歌われていた曲のようである。

4.TWINKLE NIGHT(あるひとりのロマンティストの生誕)
 作詞:西門加里/作曲:小室哲哉
 1985年11月28日発売、ミニアルバム「TWINKLE NIGHT」収録曲。投票順位27位。
 再びSF路線に戻してのミニアルバムの表題曲。いかにもな80年代エレクトリック・ポップスなサウンドに乗せてクリスマスの夜に「君を捜さなくちゃ」「この手で君をBorn Again」したい主人公(未来からの能力者?)のモノローグ的内容。クリスマス付近になると聴きたくなるTM楽曲の1曲。ベスト盤を乱発しまくりのTMだが、この曲がベストの類に収録されるのは初。

5.ELECTRIC PROPHET(電気じかけの予言者)
 作詞:小室哲哉/作曲:小室哲哉・木根尚登
 ミニアルバム「TWINKLE NIGHT」収録曲。投票順位7位。
 リリースは1985年末だったが、TMのデビュー当時からライブのラストで演奏されてきた初期の重要曲。未来人の「僕」が、現代の「君」に贈るメッセージソングで、演奏時間は8分を超える長尺バラード。最初は淡々と始まるが徐々に盛り上がり、最後は感動的に盛り上がる、まさにライブのトリを飾る大団円的な楽曲。
 1987年の初武道館公演以降はライブのレギュラーから消えるが、1991〜92年の「EXPOツアー」での披露や、1994年の終了ライブでも演奏され、20周年投票ベストでは並み居るヒット曲を押さえて投票順位1位で収録されるなど、ファンからの人気の高さがうかがえる名曲である。

6.YOUR SONG("D" MIX)
 作詞:小室哲哉/作曲:小室哲哉・木根尚登
 1985年11月1日発売、5thシングル。投票順位34位。
 前シングルの「DRAGON THE FESTIVAL(ZOO Mix)」に続く12インチシングルでのリリースで演奏時間も6分半と長い。「TWINKLE NIGHT」に繋がるSF路線の集大成+間奏でベートーヴェンの「第九」をサンプリングするなど、実験的な要素を1曲にぶち込んだマニアックな楽曲。

7.Come on Let's Dance(This is the FANKS DYNA-MIX)
 作詞:神沢礼江/作曲:小室哲哉
 1986年4月21日発売、6thシングル。投票順位57位。
 こちらも12インチシングルだが演奏時間は5分弱と通常の楽曲と同程度。生バンド基調の踊れるサウンド・メッセージ性のある歌詞など、この年からのキーワード「FANKS」を体現する1曲。後発の3rdアルバム「GORILLA」には歌以外の部分を短くエディットした4分弱のバージョンで収録され、こちらは今回の投票では73位にランクイン。1989年のリプロダクションアルバム「DRESS」ではNile Rodgersによるリアレンジ版「〜(DANCE SUPREME)」、2014年の「DRESS2」では小室の手によるリアレンジ版「〜2014」が発表されている。

8.NERVOUS
 作詞:川村真澄/作曲:小室哲哉
 1986年6月4日発売、3rdアルバム「GORILLA」収録曲。投票順位39位。
 前述の「FANKS」サウンドを提唱したファンキーなブラスポップ。それほどテンポは速くないが体感的に高揚感があり無条件にノレる。1987年の初ベスト「Gift for Fanks」にも収録された。また、CD音源ではないが1989年夏のライブ「CAMP FANKS!!'89」では、16ビートに大胆にアレンジされたバージョンで披露されており、関連のライブDVDで確認が可能。

9.GIRL
 作詞:神沢礼江/作曲:小室哲哉
 1986年8月27日発売、7thシングル。投票順位33位。
 「GORILLA」からオリジナルバージョンのままでシングルカットされたミディアムバラード。前後のシングル曲と比べると影の薄さは否めないが、今回の投票順位はなかなか健闘(「KISS YOU」より上だし…)。
 1994年の「終了」時の3枚同時発売ベストの1枚であるバラードベスト「TMN BLUE」にシングル曲で唯一選曲された楽曲でもある。

10.Maria Club(百億の夜とクレオパトラの孤独)
 作詞:小室哲哉/作曲:小室哲哉・木根尚登
 1987年2月26日発売、4thアルバム「Self Control」収録曲。投票順位65位。
 タイトルはオープン時の1986年にTMがライブを行った福岡にあるディスコの名前とのこと。サビで「Go to Maria Club」が連発されるので店のテーマソングのような印象を受ける明るいアップテンポナンバーである。
 1989年の「DRESS」ではChristopher Currellがリアレンジを担当。音の印象は原曲とあまり変わっていないが、原曲ではAメロから始まる歌唱部分をサビからに変更するなど構成に変化が見られる。

11.Spanish Blue(遙か君を離れて)
 作詞:小室みつ子/作曲:小室哲哉・木根尚登
 4thアルバム「Self Control」収録曲。投票順位61位。
 小室みつ子によると「行ったことのないスペインをイメージして詞を書いた」(大意)とのこと。確かに「バルセロナ」「セビリア」などの地名、「カテドラル(聖堂)の鐘」などの風景描写が歌詞に盛り込まれ、それっぽい雰囲気を出している。マイナー調のナンバーだが冒頭やアウトロなどでハンドクラップで盛り上がれるような箇所がある。1989年の「DRESS」ではイントロ・アウトロを長くしたJellybeanのリアレンジが制作された。このバージョンが1994年時のダンスセレクションベスト「TMN RED」にも収録されている。


(以下、後日更新予定の「DISC 2」に続きます)