magokorotorantan 2019年9月4日発売、真心ブラザーズ初のセルフカバーアルバム。全12曲収録。CDのみの通常盤、CD+MV他を収録のDVD付きの初回限定盤、CD+ドキュメントDVD+Tシャツをセットにした特別生産限定盤の3種販売(CDの内容は同一)。本レビューで扱うのは通常盤となります。

 デビュー30周年の企画として、公式サイトでこれまで彼らが発表してきた全268曲を対象とした「真心全曲総選挙」が行われ、投票結果のTOP10楽曲、加えてボーナストラックとして代表曲「どか〜ん」もセルフカバー、さらに新曲「はなうた」を収録。セルフカバーにあたっては近年演奏を共にするLow Down Roulettesを中心に、東京スカパラダイスオーケストラ、奥田民生、サンボマスターなど、彼らと縁のある面々がフィーチャリングアーティストとして招かれ、それぞれの個性で真心30周年を彩っています。

 今回の選曲の中で一番古いのはデビューシングルの「うみ」(とそのc/wの「恋する二人の浮き沈み」)、一番新しいのは活動休止前の2001年のシングル「この愛は始まってもいない」。2005年の活動再開の後の曲は一切選ばれない投票結果に。これは昔の曲ほどセルフカバーで聴いてみたいというファン心理なのかも。更にこれまでに数点リリースされてきたベストアルバムに収録されているような曲は全体の半分程度。シングル曲がチラホラと入りつつも、「拝啓、ジョン・レノン」や「サマーヌード」などの名刺代わりの楽曲は選ばれず、全体的にコアなファン寄りのラインナップ。それだけ熱心なファンが多数投票に参加したのかもしれませんが、ライト層への敷居はかなり高めで、セルフカバー=一般的なベスト選曲的な要素はあまり感じられないのが正直なところ。

 とは言え、過去の彼らの楽曲を現在の彼ら+ゲストの感性によって再構築された演奏は素晴らしいの一言。スカパラ参加の「愛」ではゴージャスに、奥田民生がドラムとアコギのみならずボーカルでも参加した「素晴らしきこの世界」では熱いスリーピースロックを、古くから彼らを支える真心バンド・MB'sを迎えた「JUMP」のバンド感など、原曲よりもパワーアップしたナンバーが目白押し。極めつけはデビュー曲の「うみ」。この曲はメンバー二人のみの演奏で、その点では原曲と一緒なのですが、演奏、ボーカル共に「30年経過した良い意味での枯れ方」が良く分かるセルフカバーになっていました。ちなみに個人的なベストトラックはより一層の暖かみ(寂しい曲なんですが・笑)が増した「この愛は始まってもいない」

 歌詞ブックレットの中には、1曲1頁構成でYO-KING、桜井秀俊が座談会的に楽曲の当時の制作裏話、セルフカバーにあたってのコラボ相手の選出経緯などを語っている読み応えのあるライナーノーツが掲載。これも含めて「これまで真心を応援してくれたファンへの贈り物」的な要素が濃い目の作品。彼らの昔の楽曲にあまり詳しくないリスナーへは、既発のベスト盤を聴いて気に入った曲がこちらにも収録されていたら是非どうぞ、という感じでしょうか。