deenballadsinlove 2019年11月6日発売、全曲新録音によるDEENのラブソングベストアルバム。全11曲収録。初回生産限定盤はゲスト奏者を招いたインストゥルメンタルディスク付きのCD2枚組。通常盤、ファンクラブ限定盤には本編CDに今年夏のビルボードライブでのライブ音源をそれぞれ1曲ずつ収録したボーナストラック入り。本レビューは初回生産限定盤となります。

 本作発売発表時に特設サイトが設けられ、これまでのDEENの全レパートリーを対象にファンからのリクエストを募集。そのリクエスト上位10曲が本作の収録曲(+イントロダクションとして「MY LOVE」のインスト)。順位は明言はされませんでしたが、先日まで行われていたライブツアーでのMCの際に曲によっては順位が明かされた曲もあったと記憶しています。てっきりもっとライブ定番の代表曲が入ってくると思いきや、デビュー曲「このまま君だけを奪い去りたい」をはじめ90年代の曲が5曲、それ以降の曲は5曲(最新は2013年の「もう泣かないで」)と各時代からバランス良く票が入り、もはやDEENの十八番とも思えるセルフカバー企画ですが、半数以上の曲が初セルフカバーという結果になりました。

 今回の編成はギタリストが脱退したことで浮かび上がったアイデアなのか、Vocal+Piano+Stringsというコンセプト。本作の編曲をほぼ全て担当しているのは現サポートギター(といってもギターの音はコンセプト上一切不使用)の侑音。これまでギターが担っていた演奏の土台部分を山根公路のピアノで支え、その上に原曲のリフや新たなフレーズをストリングスで華やかに奏でるという編成で、これまでのギターありきでの編成でのセルフカバーに比べるとここに来て新鮮。どの曲も原曲から大幅にかけ離れたことはしておらず安心して聴ける王道仕様。そして池森秀一はオリジナルキーのままで全曲を歌唱。去年から何度も書いているような気がしますが(苦笑)長期に渡るキー下げ時代を聴き続けてきただけに、原キー+現在の歌声とテクニックで、過去の名曲を新たに歌い直す日が来るとは…!と、長年ファンを続けている身からは大変感慨深いものがある、と書くのは大げさでしょうか。ライトなファンにも違和感なく聴ける仕上がりになっていると思います。欲を言えば新曲が1曲ぐらい聴きたかったところぐらいですかね。

 特典ディスクはこれまでライブやレコーディングなどでDEENと縁のあるミュージシャンを演奏に招いた「Premium Instrumental Album」。本編CDの冒頭インストを除く全楽曲を収録順に並べた全10曲。ビーイング時代からレコーディングに参加していた勝田一樹(Sax)や、ストリングスチームで本編にも参加している下川美帆(Violin)、最近の関係者の中ではダイスケ(AG)、意外なところでは東京パフォーマンスドールの浜崎香帆(Pf)などの7名が参加。基本的には本編ディスクのアレンジそのまま、池森ボーカル部分、即ちメロディーをそれぞれの担当楽器で奏でており、特に気を衒ったところもないので、例えるなら「メーカーが出しそうな内容のインストアルバムをメンバー監修でリリース」といったところで、通常盤+1,500円の内容に値するかどうかは…というのが正直な感想。どうせなら通常/ファンクラブ限定盤収録のビルボードライブをもったいぶらずに完全収録したディスクを付けてくれた方が…とか思ったりして。

 2001年のバラードベスト「Ballads in Blue」とタイトル、初回・通常盤のパッケージや文字レイアウトなどを踏襲した姉妹作的な本作、色々書きましたが本編ディスクは予想よりも好印象。DEENの数々のセルフカバーの中でも上位に食い込むクオリティの良盤でした。