fumido1 渡和久(Vo&Pf)、鳥口マサヤ(Ba)、中富雄也(Dr)のスリーピースで2000年に結成、2003年から2004年にかけてインディーズでミニアルバムを2枚、シングル1枚をリリースした後、2004年11月10日にシングル「眠れぬ夜のひとりごと」でメジャーデビューした風味堂。今回の「Artist Archive」では、メジャーデビュー後、一度目の活動休止までにあたる2009年までの全オリジナルアルバムを1枚ずつレビュー。「続きを読む」からご閲覧ください。
風味堂 2005〜2009年全オリジナルアルバムレビュー


風味堂
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 2005年6月22日発売、メジャーデビューアルバム。全11曲(+初回限定盤にはボーナストラック1曲)収録。
 メジャーデビュー後のシングル「眠れぬ夜のひとりごと」「ナキムシのうた」「楽園をめざして」に加え、インディーズでのシングル「真夏のエクスタシー」も収録。デビューシングルのカップリングだった「散歩道」はホーン隊による演奏を加えた「〜(Walkin' Horns)」バージョン。
 インディーズでの制作を経たからか、この時点で既にピアノトリオ+ブラスアレンジが基本の型となるスタイルを確立しており、先行の「真夏〜」「楽園〜」、アルバム曲では「FUNNY JOURNEY 〜渚の吐息〜」などが顕著。トリオのみの演奏でも「もどかしさが奏でるブルース」「笑ってサヨナラ」「ゆらゆら」等のリード級の楽曲が収められ、曲調も幅があるので最後までダレることなく風味堂ワールドを堪能できる、個人的にはデビューアルバムにして最もお薦めのアルバム。
 初回限定盤にはボーナストラックでインディーズアルバム「花とりどり」収録の「Swinging Road」のライブバージョンを追加収録。スタジオ録音の原曲よりもテンポが速く、良い意味で彼らのライブならではの荒っぽい雰囲気が出ているテイクである。


風味堂2
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 2006年10月25日発売、2ndアルバム。全13曲収録。
 同年8月のシングル「愛してる」がスマッシュヒット、ネクストブレイク候補として話題になっていた時期のリリースということもあり、オリコン初登場10位を記録。「花とりどり」からのリメイク「ママのピアノ 〜Strings Version〜」、5月の「クラクション・ラヴ 〜ONIISAN MOTTO GANBATTE〜」の2作のシングルも収録された。
 基本的には前作路線の延長。これぞピアノロックの「Stay with Me」、軽やかな「恋の天気予報」、ホーン隊が引っ張る「家出少女A」などが並び、新しいアプローチとしては儚げな「線香花火」、カントリー調の「“おかえりなさい”が待っている」が並ぶが、風味堂のパブリックイメージから逸脱しない楽曲が多いので風味堂入門には最適か。
 初回限定盤はDVD付き。「愛してる」のMV(2種類)と、ライブ映像としては公式には初となる2006年8月31日のB.Y.G.でのライブから3曲+ライブ前後のドキュメント等を収録。


風味堂3
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 2007年9月19日発売、3rdアルバム。全12曲収録。
 同年6月から「恋空三部作」として三ヶ月連続で発売されたシングル「手をつないだら」「カラダとカラダ」「サヨナラの向こう側」をすべて収録。それぞれに異なるプロデューサーを立て、ピアノロック、ラテン、ストリングスバラードと、風味堂王道の曲調のシングル曲に対し、アルバム曲はピアノを使わない「半年ぶりのCome back」、DEPAPEPEをゲストギタリストに招いた「My Way」、メンバーのラップが大半を占める「イイコトしようよ」など、これまでの枠を積極的に破るアプローチの曲が増え、王道なのはタイアップのついた「そっとLove Song...」ぐらいという異色のアルバム。曲調のマンネリ化を防ぐための攻めの姿勢は意欲的だと思う一方、シングルを聴いて興味を持ち、アルバムを手にとったリスナーにとっては連発される馴染みがたい曲をどう思ったのか気になるところ。
 初回限定盤には「BONUS LIVE CD」が付属。同年6月のZepp Tokyoでのライブから4曲を収録。代表曲のライブバージョンが聴ける。中でもインディーズアルバム「sketchbook」に収録されていた「夜空を見上げて」は秀逸。


風味堂4
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 2009年3月18日発売、4thアルバム。全12曲収録。
 前年の配信シングル「ファイト!」、明けた2009年の「大切にするからね」の2曲のシングルを収録。2008年5月のライブアルバムを挟み、約1年半ぶりのオリジナルアルバム。「風味堂3」直後のシングル「メリークリスマス、、、。」は未収録(2011年のベストアルバムには収録)。前作までと異なり、通常盤のみの発売。
 これまでとはうって変わった派手なジャケットがまず目を引く。楽曲は「3」で見せた実験的な試みは影を潜め、基本的にはスリーピース+αでの熱量を持った演奏に戻った。コミカルな「禁煙宣言」、メロウな「Bye Bye Goodbye」、意外と(?)ライブで盛り上がる「未確認飛行物体な少女」などが特に印象に残る一方、前三作にあったアルバムをリードするような突き抜けた曲がなく、全体のインパクトは他のアルバムと比べるとやや弱めか。
 なお、風味堂は本アルバムを引っ提げたツアーの後でしばらく活動休止、渡のソロデビューをはじめ別々の活動が続いたが、2011年秋に活動を再開している(ベスト、オリジナル2枚をリリース後、2019年現在はたまにライブ出演程度で実質活動休止中)。