
オフィスオーガスタの若手アーティスト…と思っていたさかいゆうも気がつけば今年の10月でメジャーデビュー10年目。オリジナルアルバムは2年に1枚ペースと比較的ゆったりとしたリリース活動をしながら、楽曲提供やコラボレーション作品への参加、福耳プロデュースなど、ソロシンガーとして以外の活動も盛んに行われた10年だったような気がします。本作は前作より約3年振りのオリジナル。今までも度々あったタイトルに「feat.〜」を表記し、ゲストアーティストと作り上げるコラボ楽曲が、今回の収録曲では全13曲中何と9曲。コラボ相手もギタリスト、トランぺッター、リズム隊からラッパー、作詞家までと幅広く、これまでに培った彼の人脈がフルに活かされたアルバムになっています。
さてようやく本編に入りますが(笑)、これまでのさかいゆうの、特に初期のポップなイメージを頭に置いて聴き始めると、冒頭「Get it together」のまったり具合から予想外という感じ。特に中盤までの流れは表現するならばミドル&メロウ路線連発、完全英詞の「I'm A Sin Loving Man」や、歌モノの伴奏とは言い難いアプローチの演奏陣が腕を揮っている「桜の闇のシナトラ」など、さかいがこれまで出してきたようなジャパニーズ・ポップスの範疇を超えている曲がたっぷり。これらを経過してやがてラッパーとのコラボ(「SoDaRaw」「Tokyo Loves」)や「Magic Waltz」、先行配信楽曲が出てくる後半はようやく「彼らしい」という雰囲気になってくる感じでしょうか。国内外の名うてのゲストに囲まれていてもさかい自身の個性はボーカルと楽曲プロデュース(編曲)面でしっかり存在感を見せています。
さかいゆうファンとしては今回も楽しめた、と思う一方、メジャーデビュー時が一番キャッチーで、活動を重ねる毎に一般ウケから遠ざかっていく(=ライトなリスナーが入りにくい)ような懸念もあるのですが、このスタンスのままずっと活動を続けていくことが彼の個性になってくるのかも。なお楽曲ごとにコラボ相手に触れているセルフライナーノーツが掲載の公式特設ページはこちら。今回はとにかくコラボ相手が多数なので聴きながらこれを読むと一層アルバムを楽しめると思います。
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