ca 1979年8月25日、シングル「ひとり咲き」でデビューを果たしたCHAGE and ASKA。数々のヒット曲を世に送り出してきた彼らですが、ここ最近の10年は各自のソロ活動のみで無期限の活動休止状態。そして迎えたデビュー40周年の2019年8月25日当日、ASKAがチャゲアス脱退を表明。自らの名前を冠したデュオから脱退するって…?と、発表から一週間を経過した今も筆者の頭の中では疑問が渦巻いていますが、今回の「CD Review Extra」はあくまでチャゲアスデビュー40周年記念として、これまでにリリースされた彼らの国内発売の全ベストアルバムを1枚ずつレビュー。「続きを読む」からご閲覧ください。
デビュー40周年記念・CHAGE and ASKA 全ベストアルバムレビュー


Standing Ovation
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 1985年12月5日発売、LP盤では初となるベストアルバム。全10曲収録。
 デビューから在籍していたワーナーパイオニアからキャニオンレコードに移籍しての初の作品はワーナー時代の代表曲の選りすぐり。「ひとり咲き」「万里の河」「男と女」「終章(エピローグ)」など、その後も彼らの代表曲とされる名曲を前半に集中。後半はこの時期までの代表曲を集めたという感じか。
 中盤に収録された「ボヘミアン」はASKAが作詞を提供した楽曲のセルフカバー。チャゲアスバージョンは本作でしか聴けないという点では貴重な1枚。その理由からかデビュー30周年時の2009年にSHM-CDのリマスター盤で各オリジナルアルバムやライブアルバムを紙ジャケ仕様で再発した際も、ベスト盤の中では唯一ラインナップに並んでいた。現在の立ち位置は「最初期ベスト」といったところ。


スーパーベスト
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 1987年3月5日発売、「みんな未来の野次馬なんだ。」というキャッチコピーを冠され、尾崎亜美や南こうせつ、松山千春などと同シリーズでリリースされたレコード会社企画「スーパーベスト」シリーズの1枚。全16曲収録。
 デビューシングル「ひとり咲き」から、当時の最新シングルの1作前の「Count Down」までの16枚のシングルA面曲を時系列順に収録。デビュー時のどフォーク路線から徐々にロック、デジタルサウンド化されていく変遷がよく分かるコスパに優れた1枚。その利便性ゆえに、チャゲアスブームが巻き起こった90年代初頭にロングセラーを記録して70万枚以上を売り上げている。ただ、「SAY YES」辺りの彼らをイメージしてこのアルバムを聴くと特に序盤はあまりの作風の違いに驚くと思う。かくいう筆者もその一人だった(笑)。
 1992年の続編「SUPER BEST II」の発売数ヶ月後に廃盤。後にリマスター再発もされず、現在では中古市場で手に入れるしかない。安価で入手自体は容易だが、さすがに80年代後半の作品なので音質はかなり貧弱なのが弱点。何かのタイミングでリマスター販売を希望したいところだったが…。


THE STORY of BALLAD
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 1990年2月7日発売、バラッドベスト。全12曲収録。
 ポニーキャニオン移籍以降にリリースしたシングル・アルバムからのセレクション(「オンリーロンリー」のみワーナー時代の音源)。あまりシングル曲は意識されておらず、むしろアルバムからのミディアム〜バラードの佳曲が多め。華やかさはあまりないが、「天気予報の恋人」「迷宮のReplicant」「風のライオン」といった楽曲が強い印象を残す。シングル曲では「WALK」は本作でしか聴けないロングエンディングバージョン。ラストに収録された「心のボール」はASKAが徳永英明に楽曲提供した曲のセルフカバー。後に20周年記念ベストにも収録されたが、その時もDISC 01の最後を飾っている大団円的な名曲。
 ベストとしては曲数も控え目で流れを汲んで選曲されているので、オリジナルアルバム的な感覚で聴ける作品でもある。


SUPER BEST II
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 1992年3月25日発売、「スーパーベスト」の続編。全15曲収録。
 前年のシングル「SAY YES」、アルバム「TREE」がダブルミリオンを突破し、チャゲアスブームが巻き起こっていた最中にリリース。ポニーキャニオン移籍後1発目の「モーニングムーン」から、最新シングル「僕はこの瞳で嘘をつく」まで、1986年から1991年までの全シングルA面曲をリミックスして時系列順に網羅という(当時の)チャゲアス入門にはうってつけのアイテムとして大ヒット。一時期は「アジアで一番売れているアルバム」という盤面紹介もされていたほど。なお、三方背ボックスにCDケースが封入されている販売フォーマットだったが、初回盤では加えて過去のアルバムからの散文詩の抜粋や楽曲索引、ディスコグラフィーなどが掲載されたカラーブックレットが付属していた。
 新曲は特にないが、「恋人はワイン色」「太陽と埃の中で」や、同時に既発シングルのリミックス盤として改めて発売された「LOVE SONG」「WALK」等、大ブレイクに至る前の彼らの名曲を押さえられる優れたベストアルバム。後のオールタイムベストでは未収録の「ロマンシングヤード」「Trip」などの隠れ(?)名曲シングルを聴きたい際にも未だに重宝する1枚。


Yin & Yang
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 1994年8月25日発売、デビュー15周年記念日にリリースされた企画盤。CD2枚組全32曲収録。
 バラードを中心にした"Yin" Disc、アップテンポを中心にした"Yang" Discと好対照の楽曲をポニーキャニオン移籍以降のアルバム曲とカップリング曲の中から選曲。前者には女性DJ、後者には男性DJの英語での楽曲紹介が曲の前後に挿入され、更に各楽曲にリミックスが施されていたり、曲と曲の間をシームレスで繋ぐ演出があったりと、非常に手の込んだ編集がなされている。
 冒頭の「PRIDE」「天気予報の恋人」、最終盤の「tomorrow」「野いちごがゆれるように」「BIG TREE」がとにかく強い"Yin" Discに対し、「GUYS」から始まり「HOTEL」「Love Affair」「Mr.ASIA」などテンションの高い曲が最後まで続く"Yang" Discとこれまた対照的。共通しているのはDJの挿入でラジオ番組のように聴ける点。コアなファンほど面白いと感じるアルバムかもしれない。なお発売当時は特に限定盤等とは言及されていなかったが、再発の類は一切行われていない。


SUPER BEST BOX SINGLE HISTORY 1979-1994 AND Snow Mail
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 1994年12月16日発売、デビュー15周年を記念した予約生産の4枚組CDボックスセット。全42曲収録。
 DISC 1〜DISC 2は「スーパーベスト」「SUPER BEST II」と同内容。DISC 3は1992年以降のシングル「if」から1993年末のシングル「なぜに君は帰らない」までを収録。1994年にリリースされたシングル2作は未収録となっているのでボックスのサブタイトルとは齟齬がある。「YAH YAH YAH」の両A面「夢の番人」が入っているベスト盤は意外にも本作のみ。また、DISC 1(ワーナー在籍期)の楽曲は新たにリミックスされ、原曲とかなり印象が異なる曲もある。
 DISC 4は1986年末にLPのみで発売された4曲入りミニアルバム「Snow Mail」の初CD化+シングルのカップリングで既発のカバー曲などを3曲収録した「Snow Mail Special」。コンセプト的にクリスマス間近に聴きたい作品である。なお、2009年の紙ジャケ仕様SHM-CDリマスター盤シリーズ発売の際に同内容が「Snow Mail add 3 Songs」とタイトル変更の上でラインナップに加わっている。
 予約生産だったがかなり売れた故か、現在中古ショップでは比較的廉価で販売がされている。縦長のボックスの中にチャゲアスヒストリーやアルバムの解説、提供曲楽曲一覧などが掲載された厚めのブックレットが封入されているなど、この時点での資料的価値も高いメモリアルに相応しい作品である。


VERY BEST ROLL OVER 20TH
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 1999年12月16日発売、デビュー20周年を記念した初のオールタイムベストアルバム。CD2枚組全29曲収録。
 ワーナー、ポニーキャニオン、そして当時在籍していた東芝EMIと3社から発売された音源を収録。DISC 01は1979年の「ひとり咲き」から1990年初頭の「心のボール」まで、DISC 02は1990年の「DO YA DO」から1999年の「no doubt」までを時系列順に収録。DISC 01はヒット曲もそこそこに「安息の日々」「PRIDE」などのアルバム曲を入れる余裕(?)があるが、セールス全盛の90年代が対象となるDISC 02は全14曲中13曲がシングル関連の曲、それでもヒットシングルが入りきらず収録漏れになる曲があるなど、結構キツキツな印象。とはいえ、ここまでの大まかなチャゲアスの楽曲史を把握するには理想的なベストアルバム。
 なお、本作発売当時の特典としてCDケースサイズを一回り小さくした52頁のフルカラーブックレット「CHAGE&ASKA 20th HISTORY&WORKS COLLECTION」が配布。デビューから1年ごとの年表、各アルバム解説、チャゲアス作品のみならずASKAソロやMULTI MAX等のジャケット画像付きディスコグラフィーが詳細に記されているコンパクトながら優れものの冊子が入手できた。


THE STORY of BALLAD II
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 2004年11月3日発売、バラッドベスト第2弾。全13曲収録。
 前作「THE STORY of BALLAD」以降に発表された楽曲の中からのセレクション。デジパック仕様のCDケース、紙のボックスケースのデザインなどは前作を完全に踏襲。収録曲も前作同様アルバム曲が中心のラインナップ。「好きになる」はオリジナルと異なるバージョン、「クルミを割れた日」は2002年にリリースされたセルフカバーアルバム「STAMP」からのバージョンでの収録。全体的にはテンポのある曲がほぼ皆無でまったりしたまま収録時間の約70分バラード連発、前作のような新曲もなし、ということでアルバム自体の印象はかなり薄くあまりお薦めできないのが正直なところ。
 本作はデビュー25周年記念時のアイテムとして企画され、発売元は当時所属のユニバーサルではなくそれ以前の楽曲を管理しているYAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS表記になっている。また前作をリマスター、CD盤面をリデザインした仕様のものが同時発売されている。


VERY BEST NOTHING BUT C&A
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 2009年2月4日発売、デビュー30周年記念のベストアルバムと銘打たれた全15曲を収録。
 CDジャケットや歌詞カードのデザインも含めて実質は「ROLL OVER 20TH」の続編的内容。同作とは「SAY YES」「YAH YAH YAH」のみが重複で、「ROLL OVER〜」で収録漏れした「if」「なぜに君は帰らない」などの90年代のシングル、ユニバーサルに移籍後初のシングル「ロケットの樹の下で」から最新シングル「Man and Woman」までの全シングル1曲目をほぼ時系列順に収録している。
 00年代に入り、代表曲と呼べる曲はないものの、楽曲的にはセールス全盛期と何ら遜色のない彼らの軌跡を辿れる1枚。「Something There」「この愛のために」「36度線 -1995夏-」などはアルバム収録に際しバージョンやミックスがかなり変わっているので、ここでオリジナルバージョンで聴けるのは有難かった。「ROLL OVER〜」と揃えれば1990年以降のシングル曲が両A面を除き全曲聴けるのも好ポイント。
 なお、本作発売直前にチャゲアスは無期限の活動休止を宣言。その後10年間チャゲアスとしての活動は一切なく、今回のような結末を迎えたので、本作がチャゲアスの実質ラストリリースCD作品となってしまった。もう二度と二人が並んで歌う姿が見られなくなってしまったのは非常に残念である。