kh 現在も在籍するソニーレコードのオーディション入選をきっかけに1995年5月13日にシングル「Precious Junk」でデビューした平井堅。不遇の90年代を経て2000年初頭にシングル「楽園」がヒット、以降男性R&Bシンガーとしてヒットを重ね、日本の音楽シーンに存在感を示すまでになった彼が2001年末までにリリースされた全アルバムを、今回の「Artist Archive」でレビュー。「続きを読む」よりご閲覧ください。
平井堅・1995〜2001年全アルバムレビュー


un-balanced
kh1
 1995年7月7日発売、デビューアルバム。全11曲収録。
 ドラマタイアップのあった「Precious Junk」、続く「片方ずつのイヤフォン」の2作のシングルを収録。全作詞は平井本人だが、作曲はほぼ山下俊との共作。意外にもデビューまで楽曲制作経験がなかったそうだが、共作者の存在もあってかデビューアルバムにしては習作以上の出来で、ポップな「青空」、バラード「笑顔」を筆頭になかなかの佳曲が並ぶ…のだが、当時はこの手の男性ポップスシンガーは飽和状態であり、平井独自の個性といったものは感じられないのが正直なところ。ただ、持ち前の歌唱力はこの頃の他の同業者(?)と比べても抜きん出ていたことは確か。生バンド演奏に合わせて若干初々しくも爽やかな歌声を堪能できるアルバムである。


Stare At
kh2
 1996年12月1日発売、2ndアルバム。全12曲収録。
 熱唱バラード「横顔」、ポップな「ドシャブリ」、ダンスチューン「Stay With Me」と幅を広げたシングル3作品を収録。基本的には前作の延長であり、受ける印象もほぼ変わらないが、本作に関しては「会いたいよ」「ゆびきり」、そして以降もライブで演奏される「キャッチボール」といったバラード路線の曲が印象に残る。また、全曲作詞、単独作曲も12曲中10曲(1曲は外部提供のシングル「Stay With Me」)と、ソングライターとしての成長もうかがえる。以降は自作曲に拘らなくなるということもあるが、ここまで自作で埋まったオリジナルアルバムは2019年時点でもこのアルバムぐらいでは。


THE CHANGING SAME
kh3
 2000年6月21日発売、3rdアルバム。全14曲(SE、インスト含む)収録。
 前作以降は97年、98年にシングルを1枚ずつリリースという寡作ぶりだったが、2000年1月に発売した当時日本でも市民権を得つつあったR&B路線に傾いたシングル「楽園」がロングセラーを記録。続く5月のシングル「why」もスマッシュヒットとなり満を持して約3年半振りのアルバムをリリース。オリコンチャート1位獲得並びにミリオンセラーを達成する大ヒットアルバムになった。
 98年のゴスペル調のシングル「Love Love Love」を実質1曲目に配置。その後は松尾潔プロデュースによる完全にR&B路線の楽曲が最後まで並ぶ。楽曲提供陣は本作でしか見かけないような名前の作家も多く、平井自身が楽曲制作に関わった曲は半分程度と激減。クールなトラックに乗せて囁く系のメロディーの曲が多めで既発シングル曲ほどのキャッチーさは皆無であり、本作での平井はシンガー(表現者)に徹している感がある。ポップなアプローチを続けてきた前作までとは180度受ける印象が異なり、初期からのファンはかなり戸惑ったものと思う。彼のキャリアの中でも徹底的にR&Bに寄せたアルバムは本作ぐらいで、かなり取っつきにくいアルバムではあるが、「平井堅が歌うR&Bアルバム」としてはこれ以上ない完成度を誇っていると思う。


gaining through losing
kh4
 2001年7月4日発売、4thアルバム。全12曲収録。前作に続きミリオンセールスを達成。
 ダンスナンバー「LOVE OR LUST」「KISS OF LIFE」、バラード「even if」「Miracles」と、前作以降にリリースしてきたシングル4枚を収録。本作でも松尾潔がプロデューサーを務め、下地がR&Bなのは前作同様なのだが、アッパーな「she is!」、シュールな早口ナンバー「メリー・ゴー・ラウンド・ハイウェイ」、生演奏のメロウ路線「Sweet Pillow」など、アルバム曲がバラエティ豊か。この時点では分からなかったことだがこの後の彼のアルバムはもっとフリーダムになっていくので、1枚のアルバムとしてのバリエーションとしてはクール過ぎずポップ過ぎずで全オリジナル中で本作が一番均整が取れているのではないかと思う。平井堅のオリジナルアルバムでは本作が一番入門に適しているかも。
 ラストのタイトル曲「Gaining Through Losing」はオーケストラアレンジによる平井本人の自作曲。紆余曲折を経て辿り着いた現時点の心境を描いたと思われる渾身の名曲バラードである。


Kh re-mixed up 1
kh5
 2001年11月28日発売、2001年内期間限定生産としてリリースされたリミックスアルバム。CD2枚組全12曲収録。
 1枚目が「move」、2枚目が「still」と名付けられ、それぞれ盤面は金と銀。「楽園」以降のシングルにカップリングとして収録された、国内外のDJやリミキサーが参加したリミックス楽曲をセレクトして収録。加えて各ディスクには新規リミックス曲を2曲ずつ、さらに「move」には全編英詞の新曲「One Love Wonderful World」を収録するというリミックスベスト+αの企画作品。
 カップリングに点在していたリミックス楽曲を一気にまとめて聴けるのは便利な作品。ただ本作は平井堅のボーカルを素材として楽曲を分解したようなリミックスが多く、メロディーを尊重したリミックスを期待して聴くとかなり不満の残る作品だと思う。ドラスティックに生まれ変わった各楽曲をBGM的に楽しむのが正しい聴き方かも。新曲はなかなかの良曲ダンスナンバーで、2010年のカップリングベスト「裏 歌バカ」にも収録された。なお、「裏〜」の初回生産限定盤には本作の続編「Kh re-mixed up 2」が同梱されている。