mrchildrenjyuuryoku 2018年10月3日発売、Mr.Children通算17枚目のオリジナルアルバム(ライブアルバム、カップリング集を含めると通算19枚目)。前年リリースのシングル「himawari」、2018年年明けリリースの配信シングル「here comes my love」を含む全10曲収録。販売形態はCD1種のみ、初回生産分の封入特典として収録曲のMVが視聴できるプレイパスが封入(視聴期限は2019年4月末まで)。

 3年半前の前作ではデビュー以来常にプロデューサーとして楽曲制作に携わってきた小林武史から離れた曲を既にリリースしていた彼ら。迎えた本作のクレジットはProduced by Mr.Childrenと冠され、初の完全セルフプロデュースアルバムということに。演奏クレジットにも小林の名前はなく、鍵盤演奏やストリングスといったメンバー以外のバンド演奏の担当楽器の顔触れは新旧入り混じっている状態に。本作でも多数のミュージシャンが参加していますが、特に00年代後半から10年代初頭にかけての「バンドを覆ってしまう過剰なまでのキーボードやストリングスの多用」は前作同様抑えられ、ピアノがメインで始まる曲でもバンド演奏を食わない程度、ストリングスも時折奏でられる印象的なフレーズが耳に残る程度、と長年懸念(?)されていた不満要素もセルフプロデュースになったことで分かりやすく解消された印象。

 ということで新たな一歩を進む彼らですが、今回の楽曲群はというと、これまでに比べるとかなり普通…と言いますか、リード曲としてMVも制作された「Your Song」を筆頭に、一般認識的なミスチルらしさの枠からはみ出さない優等生っぽい曲が続くなぁ、という感想。これまでの彼らと言えばブレイク以降、陰鬱で内省的な雰囲気だったり、ダーツでコード進行を決めるなど混沌とした要素を注入したり、かと思えば消費音楽と呼ばれることを逆手にとったようなカラフルなアルバムをリリースしたりと、膨大なセールスをあげるが故に大勢のファンの間で色々と賛否両論を巻き起こしてきたと思うのですが、そこからは一歩退いて、「まずは完全新体制のミスチルで10曲作ってアルバムにしてみました」といったところでしょうか。もちろん楽曲制作のレベルが前作より劣っているということはないのですが、アルバム紹介文などでの熱い煽り文と比べるとアレ?思ってたより地味…という点は否めませんでした。

 なお、本作は50分足らずという、ミスチル史上稀な総演奏時間の短さですが、今回の作風で従来通りにもう3〜4曲いかれると正直しんどかったかもしれないのでこの路線だとこれぐらいの案配がちょうどいいのかも。日本の音楽界的にも大御所的ポジションを得て落ち着いた…という表現は相応しくないかもしれませんが、そんな感じのアルバムではありました。次回作(何年後になるか分かりませんが)はもう少しリスナーをハッとさせるような要素を期待したいところです。