先日レビューした小林陽一のアート・ブレイキー生誕100周年記念アルバム「NIAGARA SHUFFLE」を引っ提げて、アメリカで活動しているジャズミュージシャン達が来日し、7月いっぱい日本中を駆け回るジャパンツアーが去る7月4日、埼玉県入間市からスタート。今回のライブレポートはそのツアーの3本目、昨日7月6日に開催された三鷹市・武蔵野市民文化会館小ホールでのライブをレポート。「続きを読む」よりご閲覧ください。
J.Messengers featuring Philip Harper and Vincent Herring Japan Tour 2019
2019年7月6日 東京・武蔵野市民文化会館 小ホール



 昨年夏の森下文化センター以来、ちょうど一年ぶりとなったジャズライブ鑑賞。
 かねてから筆者が愛好するヴィンセント・ハーリング(as)が今年も来日。しかも今年はかつて彼が所属していたジャズ・メッセンジャーズを率いていた故・アートブレイキーの生誕100周年ということで、彼と懇意の小林陽一(ds)によりトリビュートアルバムが制作されての来日。ジャズ・メッセンジャーズも好きな筆者としては、これは今年も是非行かねば、ということでスケジュールを確認。スタンスは昨年と一緒(飲食費負担なしのホール公演)で探したところ、土曜の夕方という絶好の時間帯の公演を発見。ジャズライブとしては定価3,000円という破格の安さでチケットを入手したのでした。

 会場の武蔵野市民文化会館の最寄り駅はJR三鷹駅。
 来日ミュージシャンのライブをお手頃価格で観られる!というのが売りの会館のようですが、その代わり駅から歩いて15分程度(約1km)というなかなかの立地(苦笑)。まあ道は真っ直ぐなので迷うことはありませんでしたが、チケットが安い分、歩くのは我慢してねといったところでしょうか。

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 昨年の森下文化センターは多目的ホール(フロアはフラット面にパイプ椅子)でしたが、こちらは音楽公演に特化した演奏ホール。席は400席ぐらいで公演日前に完売。後ろの席になればなるほどステージを見下ろす形になっており、なかなか快適なホールでした。
 16時半開場、17時開演。ほぼ定刻ぴったりにスタートし、1stステージ→15分の休憩→2ndステージ→アンコールという流れでした。休憩時間も含めると約2時間の公演。

各演奏者の印象

ヴィンセント・ハーリング(as)
 今年もメンバー1の体格の良さは相変わらず(笑)。抜群の肺活量を活かしたロングトーンのソロにますます磨きがかかった感じ。見た目的には去年していなかった眼鏡を着用(付けたり外したり…老眼鏡か?)。今回は昨年ほどMCに割かれた時間はありませんでしたが、最初のメンバー紹介は氏が担当。途中のソロコーナーでは「Polka Dots & Moonbeams」を演奏。冒頭の長〜いサックス独奏から始まるバラードなのですが絶品。先ほど、会場によっては違う曲も演奏しているらしいという情報と楽曲名を知ってしまい、そちらのほうも無性に聴きたくなってしまいました(笑)。

フィリップ・ハーパー(tp)
 会場で配られたパンフレットによると1986〜88年にジャズ・メッセンジャーズに在籍していたトランぺッター。俳優のジェイミー・フォックスっぽい…と言えなくもない風貌。演奏面ではかなり攻撃的にガンガン攻めるタイプで、バンドアンサンブルに熱量を与えていた印象。ソロコーナーの「Everything Happens To Me」ではトランペットに加え歌声も披露。なかなかの美声でした。

エシェット・エシェット(b)
 こちらも元ジャズ・メッセンジャーズで「メッセンジャーズ最後のベーシスト」と形容されている人物。上背はあまりないのですが手が大きく、曲によってはアンサンブル部分でリードベースっぽい演奏もしたりと(ベーシストとしては)比較的目立つ場面がありました。そういえば2ndステージ目の1曲目「Minor's Holiday」の冒頭では譜面台から譜面がバラけてしまう場面があり、それを拾っている間のテーマ部分はまるまるベース抜き、という珍しい光景が。

北島佳乃子(p)
 今回のクインテットの中でアルバム「NIAGARA SHUFFLE」に唯一参加していない人物。プロフィールによると2010年に短大の音楽科を卒業したということで、若手の部類に入るピアニストだと思います。テクニカルなソロを弾き倒す!という演奏ではなく、終始破綻のないきっちりとした安定感ある伴奏を見せてくれました。つい最近リーダーアルバムをリリースしたらしいです。

小林陽一(ds)
 昨年同様、バンドリーダー的な視点でステージをコントロールする現場監督的な印象。日本のアート・ブレイキーの異名に相応しく、「Bu's Delight」ではブレイキーを彷彿とさせる熱いドラムソロが炸裂。また2ndステージラストの自作曲「Niagara Shuffle」の冒頭のドラム(通称:ナイアガラロール)がCDの数倍長く演奏され、これ聴いた後でCD買った人はCDバージョンは物足りないだろうなぁ…と思ったり(苦笑)。あれだけ熱い演奏をした直後、終演後の物販コーナーにどのメンバーより早く来ていたのには驚きました。

全体の印象

 各ステージ約45分、4曲ずつを演奏。うち3曲目は1stステージではヴィンセント氏が、2ndステージではフィリップ氏がソロを取るカルテット編成。小林氏いわく「シャッフルの曲を多く演奏した」とのこと。「NIAGARA SHUFFLE」からは9曲中4曲(「Bu's Delight」「Along Came Betty」「Niagara Shuffle」+アンコールで「Moanin'」)を演奏とぼちぼち。ジャズ・メッセンジャーズの持ち曲中心のセットリストのようでしたが、「A Night in Tunisia」や「Blues March」辺りもやるのでは…と予想していましたが見事に外れました(苦笑)。

 鑑賞してみて思ったのですが、やはりジャズの演奏はCDを「聴く」よりも、ライブを「観る」ほうが楽曲の魅力度が倍増しますね。特に長いアドリブパートなどは視覚から入ってくる情報(メンバー同士が目を合わせたり、示し合わせて即興でブレイクの箇所を作ったり)も含めて楽しめるのだな、と改めて実感しました。

 予算の都合上なかなか気軽にジャズライブには通えないのですが、また機会を見て足を運んでみようと思っております。
 なお、このツアーは7月31日の赤坂まで全24公演という超過密スケジュール。バンドの皆様、くれぐれもお身体にはお気をつけて、無事完走できることを祈っております。