
今年はかつてジャズ・メッセンジャーズ(活動時期ごとにメンバーの入れ替わりがある可変バンド)を率いたアメリカのジャズドラマー、故アート・ブレイキーの生誕100周年。本作品はそれを記念し、「日本のアートブレイキー」という異名を持つ彼の手によるトリビュート作。小林が自身のバンド、ジャパニーズ・ジャズ・メッセンジャーズとして活動している時は基本的にメンバーは日本人メインなのですが、本作では日本人は小林一人。毎年来日しているヴィンセント・ハーリング(Alto Sax)を筆頭に、かつて在籍経験のある本家ジャズ・メッセンジャーズのメンバーを中心にニューヨークで録音が行われた一作となっています。
トリビュート作ということで選曲はジャズ・メッセンジャーズ関連の楽曲がメイン。アート・ブレイキーの一般的な代表曲といえる「Moanin'」、「Along Came Betty」「Dat Dere」など歴代メッセンジャーズのメンバーによる著名作をピックアップ。小林も1曲目のタイトル曲を自作。この曲はいかにもブレイキー!みたいなドラムロールで始まるあたりコンセプトを踏まえたナイスな導入。他の曲は各演奏陣が原曲(といっても年代ごとに何パターンも録音されている楽曲が多いのでベーシックな部分、と言うべきでしょうか)を極端に弄ったりはせずに、往年のメッセンジャーズを忠実に再現している感じ。ブレイキーのドラムはとにかく目立つ!というイメージがあるのですが、インタビューの通り本作での小林のドラムプレイは全体のリードをしながらソロもぼちぼちという感じで、CDブックレットでも解説していた彼の描くブレイキー像を形にしたとも思える聴きやすい演奏に終始しています。
個人的にはラストに収められたバラード「For Heaven's Sake」での各プレイヤーの情感溢れるソロ回しには感動を覚えました。スタジオ録音ということもあり各曲の演奏時間も比較的コンパクト。ライブ的な熱いノリとは無縁の、リラックスしたジャズ作品として聴ける1枚です。
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