beginpotluck 2018年12月12日発売、約3年振りとなるBEGINの通算17枚目(「オモトタケオ」シリーズを含めると通算20枚目。公式はこれを含めてカウントしているようです)のオリジナルアルバム。沖縄限定発売シングル「苗」「ソウセイ」、京都市交響楽団とのコラボバージョンでの「網にも掛からん別れ話」、配信シングル「笑顔のまんま(マルシャ ショーラ・フル・バージョン)」「バンドを組もうよ」「飛んで火に入る腹の虫」を含む全11曲収録。

 「BEGIN史上最多の全曲タイアップ楽曲収録のアルバムが完成!」というキャッチコピーが冠された本作。と言ってもインタビューを参照すると、コンセプトありきのタイアップアルバムではなく、沖縄限定や配信限定という形で制作され、貯まりに貯まった前作以降に発売されたシングル曲をここで1枚のCDの形にということのようです。前述の通りシングル表題曲だけで6曲+カップリングの「歌に満ち足りた世界」の計7曲が既発。新曲はショートMVが制作された「君の名はワルツ」をリード曲に4曲。うち2曲は島袋・上地のリードボーカル曲ということで、タイトル通り「PotLuck」(=持ち寄り)の、ある種バンド内コンピ的なアルバムとも呼べるでしょう。

 というわけで当然ながらアルバムを貫くテーマなどはなく、制作時期も異なり、おそらくタイアップ先からの要望も取り入れて…という制約もありの楽曲群。ノンコンセプトという意味では前作も恐らくそうではないかと思うのですが、サーフロックからハワイアン、バラードまで幅広かった前作と比べて、本作はかなり大人しい作風。ドラマ主題歌に採用されたどぎつめなブルース(こういうの待ってました!笑)の「網にも掛からん別れ話」、ラストに配置のオリオンビール創立60周年記念CMソング「ソウセイ」が二強、他の曲はBEGINのポップスミュージシャンとしての手腕を感じさせる穏やかな曲が多いのが特徴でしょうか。「君の名はワルツ」「私の好きな星」は90年代の頃の彼らを彷彿とさせますし、既発曲ながらブラジルのミュージックシーンでの第一人者と呼ばれる、Osvaldinho Da Cuica作曲による、実質本編を締める(この後の「笑顔の〜」と「ソウセイ」はアンコールっぽい)「歌に満ち足りた世界」のダイナミックさも感動的でした。

 オリジナル島唄路線を求めている層には「今回は地味なアルバムだな…」で終わってしまいそうな気もしますが、彼らがデビュー初期からこれまで培ってきたポップな側面を持った曲達が一堂に会した、派手さはありませんが味わい深い良盤だと思います。