karashimacarnation 2019年2月27日発売、デビュー30周年を記念してリリースされた辛島美登里のベストアルバム。全17曲。CD1枚ながら収録時間は83分に及ぶ大容量仕様。ラストに表題曲の「カーネーション」が新曲として収録。

 辛島美登里のベストアルバムの多さに関しましては以前こちらで特集しましたが、公認ベストとしてはデビュー10周年目の「EVER GREEN」、デビュー20周年目の「Alltime Best」と、きっちりと節目でリリースしてきている彼女。今回はデビューからこれまでリリースしてきた全シングル曲(カップリング曲も含む)の中から本人が選曲するというコンセプトで編まれたシングルズベスト。「明日へのターン」(「愛すること」c/w)が24年の時を経てアルバム初収録。歌詞ブックレットの巻末には1頁4曲ずつのセルフライナーノーツが掲載され、これまで語られなかったエピソードなども綴られています。

 曲順は公式デビュー前に作家として永井真理子に提供し注目されるきっかけとなった「瞳・元気」(の1993年時のセルフカバーバージョン)から始まり、以降はデビュー曲「時間旅行」からリリース順に収録。ただし、ヒット曲「あなたは知らない」は2014年のオリジナルアルバムの中のリメイクバージョンで15曲目に収録、お馴染み「サイレント・イヴ」は今回改めてピアノ弾き語りの一発録音にて16曲目に収録と、従来のベストとは趣を異にしています。
 選曲に関しては「笑顔を探して」「愛すること」「あなたの愛になりたい」などは当然の如く収録されており特にコメントすることもないのですが(笑)、興味深いのは本人選曲ならではの側面が出たその他のシングル曲のセレクト。特に松井五郎に作詞を依頼した「くちづけは永遠に終わらない」、エスニックな雰囲気の「交差点」「湖」など、彼女のキャリアの中では異色作と思える楽曲が選ばれたのは意外だったのですが、それも前述のセルフライナーノーツを読めば納得。どうやら辛島自身が「現時点での本人の心境からセレクトしたシングル曲」のようで、同じく本人選曲の「Alltime〜」から10年経った、彼女のリアルタイムな気分をパッケージしたベストと呼べるのかも。

 欲を言えば、せっかくのアニバーサリーなのだからいっそ30枚以上ある全シングルを2枚組にして出すとか、未だにアルバム未収録のファンハウス最終作「流されながら」を救済してほしいとか、2000年以降のシングル曲はインディー時代も含めて相変わらず選ばれないとか、まあ色々思うことはあるのですが(笑)、ラストに収録の新曲も彼女らしい良バラードですし、とりあえず新たな辛島入門編ベストが誕生したということで、彼女の曲に興味のある方は本作からまずどうぞ。