
元々は杏子・山崎まさよし・スガシカオの三人編成から始まった福耳。基本的に2〜4年程度の周期でシングルリリースが行われ、元ちとせやスキマスイッチ、秦基博、さかいゆうなどの所属後輩ミュージシャンも徐々に加入していったり、近年では事務所を退所したスガを除いたメンバーでも活動を継続していたりと、もはや総勢何名いるかさえ把握しづらいのが特徴でしょうか(苦笑)。不定期活動ユニット故にアルバムリリースもある程度シングルが溜まった2006年にシングル+コラボ集で初のアルバム、その後も2010年に企画アコースティックアルバムをリリースしていますが、どちらも既発曲のセッション的要素が強く、あまり手に取りやすい作品ではなかったと思うのですが、本作は福耳名義でのこの時点のオリジナル全12曲を完全収録。まさに決定盤ベストとなっています。
収録曲順はリリース通り。1999年の1stシングル「星のかけらを探しに行こう Again」から始まり、今年リリースの最新配信楽曲「イッツ・オールライト・ママ」までの11曲に加えて新曲「八月の夢」をラストに配置。こうして順番に聴いていくと、初期作品はメインボーカルは杏子で、サイドで山崎・スガがちょっと目立つ程度のコーラス扱いという、杏子のサブワーク的な様相だったのですが、プロデュースを後輩ミュージシャン(追加メンバー)のスキマスイッチに委ねた2006年の「惑星タイマー」あたりから他のメンバーの出番も格段に増え、2008年に両A面シングルとしてリリースされた「DANCE BABY DANCE」(杏子・山崎・スガがメイン)、「夏はこれからだ!」(スキマ大橋、秦、元がメイン)では初期メンバー/追加メンバーがそれぞれリードを分担するという経緯を経て、以降の楽曲は基本的には所属シンガー達の歌いまわしで構成されるなど、スペシャルユニット感が出てきて現在に至る、という変遷がよく分かります。
近年の作品ではボーカルのみならず演奏陣もオーガスタ所属者がほぼ固める徹底ぶりを見せており、ファミリーっぽさがより前面に。こういう楽器演奏陣まで含めたオールスターメンバーで断続的に20年続く、というのはなかなかないと思うので、今後も加入や脱退などでメンバーの変動はあるかもしれませんが、長続きしてほしいユニットではあります。
新曲の「八月の夢」は、てっきりウキウキ感のある曲かと思っていたのですが、楽曲自体は暖かなミディアムナンバーなのですが妙に寂寥感が漂う(まさに夏の終わり、的な?)ナンバー。歌詞に引っ張られて切ない気分になってしまいそうですが、これもある種の大団円ソングで、20周年記念の活動を締めくくるには相応しい楽曲でした。
結成20年目にして登場した、ようやくライト層にも気軽に手に取れそうなベスト盤ということで、福耳に少しでも興味のある方は是非どうぞ。
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