
昨年3月にリリースされた第1弾(この時は第2弾があるとは思わなかったのですが・笑)に引き続き、ストリングスカルテットのメンバーは完全固定し、KANのピアノ+ボーカルが加わる編成。冒頭にカルテットによるインスト新曲「l’Addestramento dell’Arrangiamento」を配置し、自身のオリジナル曲に加え、ビートルズ、ビリー・ジョエルの各曲のカバーを収録する構成は前作とほぼ同じ。インストの長ったらしいイタリア語タイトルや、何て読むのか分かりくいアルバムタイトルまでも前作を踏襲しております(苦笑)。
色々な要素が絡んでまさに兄弟盤といった趣なのですが、前作では代表曲的ポジションの楽曲のセルフカバーが多かったのに対し、本作で選曲された曲は自選ベストには収録されたものの正直代表曲とは言い難い「サンクト・ペテルブルグ」「Happy Time Happy Song」といったシングル曲(ポリドール時代のシングル曲は1曲もなし)、アルバム作品からも彼のパーソナルな要素の濃い「50年後も」「永遠」などが選曲されるなど、結構コア向けに攻めてきたな、という印象を受けます。
とはいえ、流麗なストリングスをバックにピアノで弾き語るKANの姿が浮かぶようなアレンジなのは前作と変わらず。アレンジの方向性は、原曲のフレーズや曲のサイズを尊重しつつ、この編成で再構築を試みており、まったくの完全新規アレンジで驚き!ということはありませんでしたが、歌詞やメロディーに寄り添った、仰々しくならず良い案配でのストリングスアレンジはバンドがいない分目立ちますし耳を惹きます。コミカルな内容の「君はうるさい」が美しい旋律と共に聴ける、というのは何だかおかしかったですが(笑)。
注文を付けるとすれば、ビリー・ジョエルの「Lullabye」のカバーがほぼ原曲通り(原曲もほとんど同様の編成)だったのでもう一ひねり欲しかったところと、今回はセルフカバー曲が前作より2曲減ったので、もう1曲ぐらいあっても良かったかな、と思った点ぐらい。改めて彼のメロディーメーカーとしての良さを再認識させてくれるアルバムでもありました。
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