tokunagaself1 2018年7月4日発売、徳永英明のセルフカバー・ベストアルバム。全10曲収録の通常盤、収録曲のMVを2曲収録したDVD同梱の初回限定盤A、ボーナストラックを1曲収録した初回限定盤Bの三種形態での発売。本エントリーは初回限定盤Bのレビューとなります。

 「VOCALIST」シリーズで既に潤沢なカバー経験を持つ徳永ですが、自身の曲をカバーするアルバムを制作するのは2003年の「セルフカヴァー・ベスト〜カガヤキナガラ〜」以来で、本作とは6曲が重複。選ばれた曲はデビューから1994年までの楽曲、つまり彼のセールス全盛期の楽曲に絞られており、これについては公式サイトの特設ページ内のコラムによると、明確なコンセプトの下で選曲されたようです。なお、収録曲中「MYSELF〜風になりたい〜」「僕のそばに」の2曲は既発表のセルフカバーにリミックスを施しての収録となった、とのこと。

 楽曲アレンジの方向性としては基本的にはアコースティック。節目ごとにセルフカバーされてきた「レイニー ブルー」が今回はアコギの弾き語り風でのフォーク調アレンジなのが異色で、他の楽曲はアコバンドスタイル+エレキギターやホーン、ストリングスを曲によって導入するという趣。原曲は当時の流行も取り入れていた結果、今聴くとボーカルのリバーブ深めとか、打ち込みシンセの音が時代を感じる…という時代性が反映されていたのですが、今回は普遍性に重きを置いたアレンジで、50代も後半を迎えた徳永の良い感じで枯れた歌声にマッチしていると思います。また、シングル曲ですがそれほど知名度の高くない(と思う)「恋人」、アルバム曲「どうしょうもないくらい」などの普段あまりスポットの当たらない曲をチラホラと選曲してあるのはポイント高め。個人的にはライブのクライマックスで演奏されるような壮大なバンド演奏バージョンとして蘇った本編ラストの「JUSTICE」には感動を覚えました。

 ボーナストラックとして収録された「愛という名の真実」は初音源化のオリジナル楽曲とのこと。哲学的な歌詞をシンプルな演奏に乗せて切々と歌う6分越えの長尺バラードで、まさにアンコール曲といった雰囲気で良い締め方でした。
 このセルフカバー企画、アルバムタイトルに「I」とあるように、近いうちに「II」の発表もあるのではないでしょうか。今回選ばれなかった代表曲もありますし、昔の徳永を今の徳永がどうカバーするのか、引き続き楽しみです。