utsumilestones 2018年2月28日発売、宇都宮隆の通算11枚目となるオリジナルアルバム。昨年秋に先行配信された「GET WILD PANDEMIC」のアルバムバージョンを含む全6曲のDISC1、過去の作品からのセルフセレクションを10曲収めたDISC2のCD2枚組。販売はDISC1+DISC2+Blu-ray+フォトブックレットのmu-moショップ/ライブ会場数量限定盤、DISC1+DVD、そして今回レビューのDISC1+DISC2の3形態での販売となっています。

 TMN活動休止直後の1992年にソロデビューを果たしたウツこと宇都宮隆。現在はソロデビュー25周年メモリアルイヤーの真っ最中。前作は2012年にリリース、その間にTM本体の30周年、ユニットU_WAVEのツアー、T.UTU with The BANDを率いてのバンドツアー、歌謡曲カバーライブなどを経て、本作はオリジナルアルバムとしては約6年ぶりとなる作品。なお今回の発売元はTMが現在所属のavexから。これによりSONY系列→Rojam→R&C→KING RECORDSと変遷してきた彼の移籍ヒストリーにまた新たな1ページが加わりました(笑)。

 DISC1の内容は新曲とカバー曲が3曲ずつ。前者はポップロックテイストの「未来へ」をつんく♂が、ミディアムバラードの「境界線を引いたのは僕だ」を尾崎亜美がそれぞれ初提供。録音メンバーも提供者お抱え(?)のミュージシャンが起用されているようで、1曲ずつの完全プロデュース作品の集合体といったところ。後者は「思秋期」「どうにもとまらない」という70年代の歌謡曲をかねてから親交のあるnishi-kenがプロデュース。そして先行配信の「GET WILD PANDEMIC」はTMの代表曲「Get Wild」をT.UTU with The BANDのメンバーの手によるロックアレンジで収録。
 対してDISC2はデビューからこれまでにリリースした宇都宮隆関連(T.UTU、U_WAVE名義含む)の楽曲の中から本人が10曲を選曲したベスト的な内容。とはいってもシングルタイトル曲は「Dance Dance Dance」「FLUSH」「道 〜walk with you〜」「Love chase 〜夢を越えて〜」の4曲と少な目な上に、ソロの代表曲ポジションの「少年」や「discovery」などは選曲されないなど、自選らしいプライベート色の濃い内容のようです。こちらは時系列ではなく緩急をつけた曲順で約50分と、オリジナルアルバム寄りなベスト、という印象。

 さて、本作で改めて感じたことではありますが、曲によってロック調であったり、EDMであったり、アコースティックであったり、ストリングスバラードだったりとバラエティ豊かなサウンドに乗って歌うウツですが、彼の歌声は「そのボーカル力で楽曲を支配する」という声ではなく、「サウンドに合わせて最適なボーカルディレクションを行い、自らの声をサウンドに融合させていく」という声なのではないかと思います。図抜けて高い歌唱力や圧倒的な表現力で勝負するわけではないので、名だたる著名ボーカリスト達と比較すると目立った特徴のない歌声でありますが、故にTMでも様々なタイプの曲を歌い続けてこられたのではないかと。何と昨年で還暦(!)を迎えたウツですが、これからもどうか身体には気をつけて(これは結構ファンにとって切実なので…)独自のスタンスでの活動を続けていってほしいな、と。