deenforever 「CD Review Extra」史上最長のエントリーになりました「DEEN The Best FOREVER 〜Complete Singles+〜」全曲レビュー、最終回となる今回は、初回限定盤に付属のPREMIUM DISCに収録された、楽曲提供元の各アーティストによるセルフカバー全11曲をレビュー。「続きを読む」からご閲覧ください。
「DEEN The Best FOREVER 〜Complete Singles+〜」
全曲レビュー・PREMIUM DISC編



1.瞳そらさないで/ZARD
 作詞:坂井泉水/作曲:織田哲郎/編曲:明石昌夫
 1995年3月10日発売、6thアルバム「forever you」収録曲。
 原曲はDEEN5thシングル。数々の歌詞提供を行ってきたZARD(坂井)にとっての初の提供楽曲セルフカバー曲(以前にユニット参加の「雨に濡れて」のセルフカバー経験はあり)。
 緩やかなボサノヴァ調のアレンジが施され、原曲と受ける印象がガラリと変わったが、破局の予感を感じさせながらも彼女を引き留めていたい、という歌詞にはこちらの方が合っている気が。2コーラス目のサビ以降の構成が原曲と異なり、最後のサビの歌詞部分がカットされている。

2.翼を広げて/ZARD
 作詞:坂井泉水/作曲:織田哲郎/編曲:明石昌夫
 2008年4月9日発売、44thシングル表題曲。
 原曲はDEEN2ndシングル。坂井の急逝の翌年に「愛は暗闇の中で」のリメイク版と共に両A面でリリース。といっても逝去後に新規にリアレンジされ録音された訳ではなく、明石昌夫がビーイング在籍時(明石は1998年にビーイング離脱)に制作されたお蔵入り音源とのこと。劇場版「名探偵コナン 戦慄の楽譜」主題歌。
 後半に向けて盛り上がっていくアレンジは原曲同様ながら、ラストのギターソロや大団円的なコーラスがないせいか、全体的に淡々と楽曲が進む印象である。

3.このまま君だけを奪い去りたい/WANDS
 作詞:上杉昇/作曲:織田哲郎/編曲:葉山たけし
 1993年4月17日発売、2ndアルバム「時の扉」収録曲。
 原曲はDEENデビューシングル。上杉はWANDSのブレイク期である1993年上半期に集中してビーイングの他アーティストに詞を提供しており、本作はその曲のひとつ。原曲のリリースから約一ヶ月後という速いペースでのカバーで、「世界中の誰よりきっと」のカバーと並んで本アルバムの目玉曲でもあった。
 アレンジャーは原曲と同じく葉山が担当。基本的には原曲に類似したアレンジのマイナーチェンジ版といったところ。サビの歌いまわしと一部の歌詞が原曲とは微妙に異なっている。

4.翼を広げて/織田哲郎
 作詞:坂井泉水/作曲:織田哲郎/編曲:JIMMIE HASKELL
 1993年12月23日発売、セルフカバーアルバム「SONGS」収録曲。
 原曲はDEEN2ndシングル。ヒット曲作家としての面が強調される一方で、並行して地道に続けている織田自身のソロ活動の際はあまりキャッチーな方向にアレンジを持っていかない傾向があり、この曲はソロの雰囲気に近い。エレキギターを使用せず、生音重視のバンド演奏になっており、本ディスクの他のカバー曲と比べて時代性を感じさせないアレンジ。なお、池森秀一がコーラスで参加。Bメロのハモり部分でその存在を分かりやすく確認可能。
 
5.君がいない夏/小松未歩
 作詞・作曲:小松未歩/編曲:明石昌夫
 1997年12月3日発売、デビューアルバム「謎」収録曲。
 原曲はDEEN12thシングル。デビュー前後に提供した楽曲を早速4曲セルフカバー、そのうちの1曲。割と原曲に忠実な楽曲展開をなぞりつつ、2コーラス目の直前で転調するなどの仕掛けがあるが、一番のギミックはサビの最後の1行のメロディーが大きく異なっている点。初めて聴いた時は衝撃的であり、筆者は未だに慣れない(笑)。

6.永遠をあずけてくれ/栗林誠一郎
 作詞:川島だりあ/作曲・編曲:栗林誠一郎(ストリングスアレンジ:池田大介)
 1994年10月21日発売、6thアルバム「遠く離れても」収録曲。
 原曲はDEEN4thシングル。ビーイング所属のボーカリストとしては珍しく甘い歌声を持つ栗林のDEEN提供曲唯一のセルフカバー。豊潤なストリングスアレンジと相俟って歌詞の世界にマッチしていると思う。レコーディングには田川伸治がギターで参加している。
 余談だがビーイング離脱後の1998年以降、栗林の消息が一切途絶えて今日に至っている。一度DEENの武道館ライブ(2009年)で彼の提供した「いつかきっと…」が演奏される際に山根公路の口から久し振りに彼の名前が出たものの、映像作品ではその部分はカットされてしまった。

7.君さえいれば/小松未歩
 作詞・作曲:小松未歩/編曲:大賀好修
 2003年9月25日発売、6thアルバム「小松未歩 6th 〜花野〜」収録曲。
 原曲はDEEN15thシングル。2ndアルバム以降は提供曲をアルバムに収録してこなかった小松だったが、本アルバムでFIELD OF VIEW(発売前年に解散)に提供した2曲と共にセルフカバー。
 本作以降はアルバムに様々なアレンジャーを起用するようになるが、この曲は4th、5thでメインだった大賀が担当。彼はやたらに軽いリズム、薄い楽器編成でアレンジを手掛ける傾向にあり、この曲もまた然り。ただ、この曲に関しては力強いメロディーがアレンジの軽さを補っているように思える。

8.このまま君だけを奪い去りたい/織田哲郎
 作詞:上杉昇/作曲:織田哲郎/編曲:JIMMIE HASKELL
 1993年12月23日発売、セルフカバーアルバム「SONGS」収録曲。
 原曲はDEENデビューシングル。織田は90年代中盤までDEENのシングルに楽曲提供を数多く行ってきたものの、DEEN関連のセルフカバーは前述の「翼を広げて」とこの曲のみ。アレンジの印象も「翼を〜」と同様。この曲でも池森がコーラスで参加しているが、こちらはどこを歌っているのかが微妙に分かりにくい。ちなみに織田はビーイング離脱後の2006年にも「MELODIES」というセルフカバーアルバムを制作しており、この曲はその際に2度目のセルフカバー化を果たしている(本ディスクには未収録)。

9.手ごたえのない愛/小松未歩
 作詞・作曲:小松未歩/編曲:古井弘人
 1998年12月19日発売、2ndアルバム「小松未歩 2nd 〜未来〜」収録曲。
 原曲はDEEN16thシングル。DEEN史上最もハードなシングル曲が、小松バージョンではミディアム調のややまったりとしたアレンジに変貌。基本ダブルボーカルで淡々と歌うなど、声の表情が分かりにくい小松の声に合わせたセルフカバーといったところ。翌年にプレステのノベルゲーム「Lの季節」の主題歌タイアップが付き、2003年のバラードベスト「lyrics」にも収録されるなど、一連のセルフカバーの中では待遇が良い。

10.遠い空で/小松未歩
 作詞:吉江一男・小松未歩/作曲:小松未歩/編曲:池田大介
 2003年11月26日発売、20thシングル「翼はなくても」カップリング曲。
 原曲はDEEN14thシングル。当時と同じアレンジャー(池田)を起用。5年越しのセルフカバーということもあってか、原曲とは全く異なり、ハネたリズムのGIZA的なオケに仕上がっている。
 小松のアルバムには未収録のカップリング曲ということで、今回のPREMIUM DISCの中では最も原盤の音源が入手しづらい曲か。といっても以前のDEENのセルフカバーベスト「DEEN The Best キセキ」の初回盤の特典ディスクにも収録されているが。

11.Teenage dream/ZARD
 作詞:坂井泉水/作曲:栗林誠一郎/編曲:明石昌夫
 1995年6月5日発売、15thシングル「愛が見えない」カップリング曲。
 原曲はDEEN6thシングル。積極的に提供楽曲のセルフカバーを行ってきたZARDの作品中、カップリング曲にセルフカバーを収録したのは本作が唯一。疑似バンドサウンドでのアレンジになっているが、当時のZARDの作品よりも機械的な印象を受けるのはパーカッシブな音が要所要所で入っているからだろうか。この曲も小松の「遠い空で」同様、「DEEN The Best キセキ」の初回盤ディスクでアルバム初収録。


 以上、今回のPREMIUM DISCのレビューを持ちまして全67曲の全曲レビュー、ここに完結です。5年前のB'zの25周年ベスト2作の全曲レビューを超える曲数、更新エントリーも最多の5回と、挑み甲斐のある約二ヶ月でしたが、無事に完走することができてまずはホッとしています(笑)。
 なお、ファンクラブ限定販売の完全限定プレミアム盤に付属のオリジナルアルバム「DEEN The LAST」のレビューは通常エントリーで後日行う予定です。そういった意味では一連のベストレビュー、実質はもう一回の更新があるということになりますか(笑)。ひとまず、長大なエントリーにお付き合いいただき、ありがとうございました。