kyuusonewwave 2017年12月6日発売、キュウソネコカミのメジャー2作目となるオリジナルアルバム(インディーズからカウントすると通算4作目)。シングル「サギグラファー」「わかってんだよ」「NO MORE 劣化実写化」、配信シングル「邪邪邪VSジャスティス」を含む全14曲+シークレットトラック1曲収録。初回限定盤は副音声コメンタリー付きのライブDVDが同梱。

 ライブアルバムを挟んで前作から約2年2ヶ月ぶりのニューアルバム。発売時のメンバーインタビューによると、完成までに2年かかったとの事。今回も前作同様、日常生活の中で生まれる事象へのやり切れない思いや不満などをぶちまけた歌詞をキャッチーなメロディーに乗せ、ガレージロック調+融合し切れないリードシンセという独特のバンドサウンドでハイテンションに駆け抜ける作風は変わらず。丁寧にも各楽曲の歌詞スペースの下段には「ライナ〜ノ〜ツ」(原文ママ)が記載され、制作のきっかけなどが綴られており、曲の理解を深める一助(?)になっています。

 彼らの作品は何と言ってもその歌詞が特徴。独特の節回しで社会をシニカルに眺めている一方で時にコミカル、時にちょっと怖いオチも付いていたりして、初聴きの時は歌詞カードを追いながら聴いてしまうインパクトがあります。シングルで既出の自らの写真映りの悪さをテーマにした「サギグラファー」、漫画を原作にした実写映画でクオリティの厳しい作品に物申した「NO MORE 劣化実写化」などはその典型例。「メンヘラちゃん」「自由恋愛の果てに」のような薄ら寒い(苦笑)曲、前日のニュースで散々煽って結局大したことのない「TaiFu is coming to town」、世界平和を描こうとした結果、主人公が地球という「俺は地球」など、まあよくもこうテーマを拾えるな…と感心してしまいます(皮肉じゃないですよ・笑)。

 サウンド面でも前作を踏襲しつつ、今回は曲の途中でいきなり拍子が変わったり、テンポが落ちたり、寸劇風(?)になったり…と、ギミックに凝っている印象。各曲の基本フォーマットがこんな感じなので、14曲(+1曲)、時間にして約1時間かけて聴き続けると結構クドかった、というのが正直なところ。そういう意味では異色の歌謡曲テイストの「ギラギラおじさん」が中盤で登場するのはかろうじて良いアクセントでしたが。本編終了後に始まるシークレットトラックの「オーガニック狂いVS添加物オバケ」もタイトルから推して知るべしな楽曲で、今回は前作と比べるとちょっと緩急がついてなかったかな、と思います。欲を言えば「5RATS」「わかってんだよ」のような(彼らにしては)直球シリアス路線の曲がもう少しあればバランスが良かったかな、と。