deenforever DEENデビュー25周年記念公演、そして田川伸治のメンバーとしての最終公演でもあった3月10日の日本武道館ライブが早くも6月に映像作品化されるということで、行けなかった筆者にとっては待ち遠しい日々です。さて、長期企画CD Review Extra「DEEN The Best FOREVER 〜Complete Singles+〜」の全曲レビュー、今回はdisc 03、2003年8月から2009年末までの全14曲です。「続きを読む」からご閲覧ください。
「DEEN The Best FOREVER 〜Complete Singles+〜」
全曲レビュー・disc 03編



1.太陽と花びら
 作詞:池森秀一/作曲:池森秀一・時乗浩一郎/編曲:DEEN・大平勉
 2003年8月13日発売、26thシングル。
 BMGファンハウス移籍後より所属していたビーイングレーベル「BERG」のロゴ表記が本作のCDジャケットより消滅。正式に発表された記憶はないが、ビーイングを離脱していたことが明らかになった。以降の数年間はライブでのビーイング時代の演奏曲が映像化されない時期があったが、非公認ベストなどは特に発売されず、基本的には円満な離脱だった模様。
 ビーイング離脱初といっても前年よりの「DEEN's AOR」路線は引き続き継続。湿り気を伴った沼澤尚のドラムに導かれ、爽やかな夏ではなく亜熱帯な暑苦しさ(?)を演出する情熱的なラブソング。ビジュアル面でも池森が再び髪の毛を伸ばし始めるなど年相応のアダルト路線に。AOR期の象徴的楽曲扱いなのか、2011年から始まったビルボードライブでは皆勤賞。後にアコースティックバージョン、リミックスバージョンなども制作され、この時期の作品の中では極めて待遇が良い。

2.ユートピアは見えてるのに
 作詞:池森秀一/作曲:土田則行/編曲:DEEN・大平勉
 2003年10月1日発売、27thシングル。
 哀愁漂う重厚なAORナンバー。別れを描いたようにも世相を嘆いたようにも取れる歌詞はDEENの中では珍しい。淡々と歌い上げるメロディーパートに対して間奏のギターソロ部分がやたらドラマチックな展開を見せるのは狙ってのことだろうか。売上の低い週にリリースされたこともあり、オリコンTOP10の10位にランクイン。
 同年11月に発売の6thアルバム「UTOPIA」には、この年リリースされたシングル3曲がロサンゼルスのエンジニア、アル・シュミットによるリミックスバージョンで収められているが、この曲は「〜Twilight style〜」とサブタイトルが付きソプラノサックスのリフが多く追加されるなど、3曲の中では最も明確に手が加えられているバージョンとなっている。また、渡米の際にスチール撮影などと共に現地で撮影されたMVも制作された。

3.レールのない空へ
 作詞:池森秀一/作曲:鈴木寛之/編曲:DEEN・鈴木寛之
 2004年4月28日発売、28thシングル。
 この年もAOR路線は継続されるが、本作は前年までの濃厚な雰囲気とは異なり、彼らの一般的イメージである爽やかさを融合させたポップでノリが良く、聴きやすいナンバー。「DEEN's AOR」の入門にはピッタリの1曲だと思う。
 年初めに韓国でBreak8の特別公演を行っており、この曲は公式には「日本語CD解禁後初の韓国単独アーティスト公演時記念ソング」とのことだが、発売当時にそのようなアナウンスはなかったような気が…(苦笑)。なおMVはタイトルに因んでか、韓国の新設の空港で撮影されている。
 2008年の初日本武道館公演では当時の全シングルをメドレーを中心に全て演奏するコンセプトの中、ヒット曲に混じってフルで演奏された珍しい曲でもある。DIMENTIONを演奏陣に迎えた2013年のビルボードライブではトップを飾っていた。余談であるが本作よりシングル初回限定盤に撮影ドキュメントやMV等を収録したDVDが付属する形が基本フォーマットになる。

4.STRONG SOUL
 作詞:池森秀一/作曲:山根公路/編曲:DEEN・時乗浩一郎
 2004年6月30日発売、29thシングル。
 Jリーグ・東京ヴェルディ1969創立35周年時のテーマソング。タイトルは同年のチームスローガンでもあった。コーラスにはヴェルディの所属選手なども参加、この年の春の開幕戦で味の素スタジアム(確か)のピッチの上でこの曲が演奏され、深夜ではあったが地上波でオンエアもされていた。
 「緑の光 踊り出す」などのフレーズや、緑色の背景をバックにしたMVなど、ヴェルディのチームカラーを明確に意識した応援歌。一連のAORシングルとは趣が異なり、PICK2HANDのリズム隊を招くなど、ロック色の強い作品で、同年の7thアルバム「ROAD CRUISIN'」では若干浮いている感も。サビよりもイントロや間奏で両手を高く掲げて「オーオオオーオオー」と合唱するパートが一番印象に残る。DEENのシングルでは珍しいシンガロングタイプの曲でライブでも後半のメドレー枠に結構な頻度で登場し続けている。

5.愛の鐘が世界に響きますように… with 亀渕友香 & The Voices of Japan
 作詞:池森秀一/作曲:山根公路/編曲:DEEN・大平勉
 2004年12月22日発売、30thシングル。
 シンガー亀渕友香(2017年逝去)率いるThe Voice of Japanとのコラボレートシングル。アカペラコーラスで開幕するイントロ、キャッチーなサビの最中にカウンター的に入る英詞コーラス、間奏でのゴスペル調の歌い上げなど、歌詞も含めてピースフル。クリスマスから年末の雰囲気を醸し出している楽曲で、年の瀬が押し迫った直前での発売は少しタイミングが遅かった気がしないでもない。
 バラードナイトと銘打たれた2016年の武道館公演では大勢のコーラス隊と共にフル演奏。発売直後の2004年末のカウントダウンライブではバンドのみで披露されるなど、コーラス隊がいないとライブで演奏しない曲…というわけではないようだ。

6.このまま君だけを奪い去りたい <キセキVersion>
 作詞:上杉昇/作曲:織田哲郎/編曲:岩田雅之
 2005年10月26日発売、31stシングル。デビューシングルのセルフカバー。
 「デビューから干支が一周」というタイミングで発表されたセルフカバーアルバム「DEEN The Best キセキ」からの先行シングル。セルフプロデュース以降は基本的にはバンド名義(+外部アレンジャー)だった編曲・プロデュースを日本の著名アレンジャー達に委託し、新たに生まれ変わらせたうちの1曲。
 00年代中盤という時代に沿った音作りで、デビュー時と声質の異なる当時の池森の歌声にマッチした良アレンジだと思うのだが、発売翌年のライブツアー・Break10で披露されて以降はこのアレンジでは全くといっていいほど演奏されなくなってしまったのが残念。なお、デビュー時には存在しなかったフルMVもここでようやく制作された。
 本作より所属のBMGファンハウスがBMG JAPANに社名変更。

7.翼を広げて <キセキVersion>
 作詞:坂井泉水/作曲:織田哲郎/編曲:島健
 31stシングル両A面曲。2ndシングルのセルフカバー。
 サザンオールスターズなどでのアレンジャーとして知られる島健がプロデュース・編曲を担当。イントロから派手に盛り上がる原曲と異なり、ストリングスで静かに始まり、アコースティックバンドスタイルで段々とボルテージを上げていき、最後は原曲と同様の合唱で締める構成。すぐに原曲バージョンに戻ってしまった「このまま〜」とは異なり、ライブでは結構な期間このアレンジを基にしたバージョンや新旧アレンジを合体させたバージョンなどで演奏されていた。
 2010年の11thアルバム「クロール」の初回限定盤付属の「ナツベスト」に収録されたことがあるものの、全シングル集、カップリングベストにも収録されたことのない不遇の扱いを受けていたが、本ベストでようやくA面扱いで収録。この際に「このまま〜」と同様に<キセキVersion>というクレジットが付された。

8.Starting Over
 作詞:池森秀一/作曲:織田哲郎/編曲:葉山たけし
 2006年5月24日発売、32ndシングル。
 「DEEN The Best キセキ」の新曲「TWLEVE」にて、久々に織田哲郎×葉山たけしの旧ビーイング制作陣(両者とも離脱済)との交流が復活。ベスト明けの第1弾シングルとして、シングルでは「素顔で笑っていたい」以来の織田哲郎作曲作品としてリリースされた。
 流れとしては「キセキ」路線の延長。レコーディングミュージシャンもライブメンバーを全面に起用するようになり、AOR路線からのシフトチェンジを感じたが、この年は続く「ダイヤモンド」を経て更に「DEEN's ROCK」を掲げたアルバム制作やツアーがスタートするので、路線的にどこへ向かうのか掴めない時期でもあった。
 収録8thアルバム「Diamonds」を引っ提げたツアーBreak11で披露された以降はほぼ音沙汰なしであったが、タイトル通りの「再生」を掲げた歌詞ということで、2011年の震災を経ての日本武道館公演では久し振りにフルで演奏された。

9.ダイヤモンド
 作詞:池森秀一/作曲:山根公路・池森秀一/編曲:CHOKKAKU
 2006年8月2日発売、33rdシングル。
 かねてからDEENファンを公言し、親交のあったボビー・バレンタイン監督率いる千葉ロッテマリーンズの同年の公式イメージソング。一昨年の「STRONG SOUL」に続くスポーツ関連での起用になったが、今回はバレンタイン(社交ダンスが趣味)の要望でチャチャのリズムを取り入れた楽曲として完成。ラテン色の強い異色の応援歌となった。歌詞にも本拠地・千葉マリンスタジアムへ向かう風景描写が登場している。自作曲では珍しくアレンジャーが外部委託だが、CHOKKAKUは前年の「キセキ」に参加しておりその縁か。
 MVはDEENが千葉ロッテに入団し、会見を行った後でライブを敢行。バレンタインもダンス衣装で出てきて司会の女性とダンスを踊る…というコミカルな内容。また、DVD付き初回盤、通常盤の他に同曲のStadium version(バレンタインの掛け声や歌声が入っている)が追加された千葉ロッテマリーンズSpecial Edition盤という3種での発売となった。ライブでは「STRONG SOUL」同様、後半のメドレーでショートバージョンが演奏される機会が多い。

10.夢の蕾
 作詞:池森秀一/作曲・編曲:山根公路
 2007年4月25日発売、「Classics Three PASTEL」表題曲。
 7年振りにリリースされたコンセプトマキシシングル「Classicsシリーズ」第3弾。今回のテーマは「春」だが、前二作のような音楽面でのアナザーサイドは感じられず、DEEN王道のポップスサウンドが春を彩るという趣。そういう意味ではタイトルの「PASTEL」はなかなか秀逸なネーミング。
 桜の散る季節(4月前後)を舞台に、新しい道へ進み始める主人公達を描いた、まさに「卒業ソング」。発売が一ヶ月近く早ければタイムリーな楽曲になったのだが、なぜか4月末にリリース設定されたのが今でも不思議である。不思議といえばMVもなぜかボーリング場でDEENと他3組がボーリング対決するというDEEN史上最も曲と合っていない映像作品だったのが思い出深い(笑)。筆者の記憶ではフルバンドでライブ演奏されたことはないと思う。

11.Smile Blue feat.押尾コータロー
 作詞:池森秀一/作曲・編曲:山根公路
 2007年8月22日発売、「Classics Four BLUE」表題曲。
 二作連続のClassicsシリーズにしてシリーズ完結作。同時に翌年の日本武道館公演に向けて初の47都道府県ライブツアーのテーマソングでもあり、47都道府県名入りバージョンの着うたも配信リリースされた。
 「夏」をテーマに遠距離恋愛を経てのゴールインを予感させる軽やかなアップテンポナンバー。アコースティックギタリストの押尾コータローを招いているが、同じくギタリストである田川とレコーディングではどこまでパート分けしたのかは不明(押尾がゲストで参加したBreak12のライブ映像を観た感じでは田川バッキング、押尾リフという感じ?)。MVも前作とは異なり(苦笑)沖縄ロケでメンバーがそれぞれ目的地に向かう演出がなされる正調の展開。2016年のサマーアルバム「バタフライ」では「〜SKA Style〜」とサブタイトルが冠された文字通りのスカアレンジでリメイクされている。

12.永遠の明日
 作詞・作曲:池森秀一/編曲:DEEN・時乗浩一郎
 2008年12月10日発売、34thシングル。
 オリジナル音源でのシングルベスト「PERFECT SINGLES+」、日本武道館公演、デビュー15周年記念ツアーと、精力的に活動した2008年末にリリースされた「ダイヤモンド」以来久々の通常シングル。
 DSゲーム「テイルズ オブ ハーツ」テーマソングとして制作され、現在のところ最後のオリコンTOP10入り(6位)を記録。作詞・作曲はシングル曲では「JUST ONE」以来の池森が担当。作曲に関しては変化球気味の作品が比較的多い池森だが、この曲に関しては直球。歌詞もクライアント側の要望か普段よりも踏み込んだ心象描写など、気合が感じられる楽曲に仕上がった。MVはニューヨークロケを敢行。
 タイアップ先の影響もあり、21世紀以降の彼らの曲の中で一般的知名度が高いのはこの曲だと思う。翌年の9thアルバム「DEEN NEXT STAGE」ではバラードバージョンが早くも制作されたり、この曲と同シリーズ主題歌の「夢であるように」を軸にした戦略が目立った時期でもあった。現在でもライブでは準定番曲。
 余談だが15周年時に新たに制作されたDEENロゴがシングル作品では初めてジャケットに登場。このロゴは現在においても継続して使用され続けている。

13.Celebrate
 作詞:池森秀一/作曲:山根公路/編曲:山根公路・時乗浩一郎
 2009年4月29日発売、35thシングル。
 ブライダルをテーマにした、Classicsシリーズ以外では初のコンセプトマキシの表題曲バラード。結婚相手の「君」への愛、お互いをこれまで育ててくれた「貴方」への感謝の思いをストレートに綴った歌詞が特徴で、この曲では池森の作風が良い方向に作用していると思う。二度目の武道館公演の直前に発売され、ダブルアンコールで初披露の運びとなった。
 MVは石原さとみが婚約指輪を渡されて驚き、喜びの涙を流すストーリー仕立て。日常生活シーンでの彼女の仕草や笑顔などが美しく撮れていて彼女のイメージビデオ的な印象も(笑)。

14.Negai feat.ミズノマリ
 作詞:池森秀一/作曲:山根公路/編曲:山根公路・時乗浩一郎
 2009年11月4日発売、36thシングル。
 全曲ラブソングがコンセプトの同年末の10thアルバム「LOVERS CONCERTO」からの先行シングル。paris matchのミズノマリをゲストボーカルとして起用。ただこの曲では単独で歌うパートが短いCメロぐらいで、他はサビをハモるぐらいの出番であまり前面には押し出されていない(アルバムではfeat.paris match名義の「harukaze」で大々的にフィーチャリングされている)。
 久々の失恋バラード…という以上に歌詞にもう二度と会えない(=死別の)雰囲気を感じてしまう。メロディーに歌詞ほどの重さはあまりなくキャッチーだが、MVでは水野美紀が出演し、指輪を握りしめて雨に打たれながら大号泣するというヘビーな結末を迎えるのが、直前の「Celebrate」とは対照的。
 なお、BMGがSONYの傘下に入ったことにより、本作よりレーベルがアリオラジャパンに移動。


 (以下、後日更新予定のdisc 04編へ続きます)